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-映画紹介-『サンクチュアリ 聖域』 異常の上に成り立つ異世界、それが角界なんだ!

《乱れ撃ちシネnote vol.119》

ANetflix シリーズ『サンクチュアリ 聖域』 江口カン監督 2023年公開 日本

鑑賞日 2023年6月 18日 Netflix

【Introduction】
「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」で勢いづいたので面白い韓国ドラマを探し始めた。

23.06.16 (25)☆Netflixオリジナルシリーズ『昼と夜』 監督 2020年 韓国 Netflix
冒頭10分で途中下車。
映像も演出も凡庸で古臭すぎて・・・。

23.06.16 (26)☆Netflixオリジナルシリーズ『愛と、利と』 監督 2020年 韓国 Netflix
30分ほどで途中下車。
映像も物語の展開も役者にもひかれない。
平凡なラブ・ロマンスものの予感もするし。

2本続けて韓国勢が討ち死にしたので以前から気になっている日本のドラマシリーズがある。
そっちはどんなもんだろう。
第一話だけでもと試し観したらこれが拾い物で全8話を2日間で観た。

23.06.18 (27)☆☆☆☆ANetflix シリーズ『サンクチュアリ 聖域』 全10話 2023年 日本 Netflix
スポーツをやることも観戦することにも興味がない。
中学時代にはバレーボール部に入部したが一年ほどで退部した。
なんでバレーボール部に入部したのかそしてなんで退部したのかはこちらでお読みいただけます。

この日記に書いた男子部員憧れの的の女性キャプテンのボーイッシュな美しさと彼女がぼくに無造作に投げかけたカーディガンから漂ったフローラルな香りは忘れられない。
その時男子部員からぼくに向けられた視線はキツかったけど。

閑話休題。

その後バスケットボール部に入部したが関節炎を患い退部した。
その後はスポーツすることもスポーツ観戦からも遠のいているけれど例外的にプロレスだけは何回か観たことがある。
もっともプロレスをスポーツに入れても良いのなら、だけど。

[スポーツ観戦その1] 1985年3月9日 両国国技館。
凶暴なタッグ・チーム“ザ・ロードウォーリアーズ”がジャンボ鶴田&天龍源一郎が保持するインターナショナル・タッグ王座に挑戦した日。

ロードウォーリアーズは迫力があったけれどそれ以上に初めてリングに立ったジャイアント馬場を目にして驚いた。
テレビで見ていると動きの鈍い馬場がなんで人気があるのかと思っていた。
それはとんでもない誤解だった。

後方の席からは国技館のリングに立った選手たちは小さく見えるが身長208センチの馬場選手は会場の広さに負けていない。
馬場選手が放つオーラがなおさら大きく見せている。

馬場選手への声援も半端じゃない。
若手選手が果敢にも馬場選手に大技をかけた時に飛んだヤジが素敵だった。
「何すんだ社長に向かって!」
これには笑った。

[スポーツ観戦その2] 1990年頃の正月。
友人に誘われて新日本プロレスのしごと初めの試合を観に行った。
1月2日だったか4日だったか。
会場は東京ドーム“ビッグエッグ”。
3万人近い観客がお〜〜〜と大きくどよめいて一つになったのが、
アントニオ猪木が入場した時、
会場の温度が何度か上がったんじゃないかというほどの熱気だった。
猪木選手のオーラも半端じゃなかった。

[スポーツ観戦その2]1994年に何回か通ったリングス。
前田日明が立ち上げたリングスのことをプロレスにはくくれないけどね。
1991年に前田日明選手はたった一人で新しい格闘技集団“リングス”を旗揚げした。
WOWOWで何の気なしにリングスの試合を見ているうちに前田日明選手とリングスという格闘技集団に興味を持ち本を企画した。
その本の取材で後楽園ホールとか横浜文化体育館に試合を観に行った。
ぼくが一番好きだった外国人選手はヴォルク・ハン
関節技の達人。
ヴォルク・ハン vs ディック・フライ戦

ハン選手はロシア軍の特殊部隊のコマンドサンボの教官だ。
サンボとはロシアで開発された軍隊格闘技のこと。
平たく言うと人を殺すためもしくは戦闘意欲を失くすための格闘技だ。
後楽園ホールのリング下で試合に出るために歩く物静かなハン選手と
すれ違った時「この人は確実に人を殺したことがある」という殺気を感じた。
ハン選手の他にも2人だけ人殺しの殺気を感じさせる人と会っている。
「塀の中の懲りない面々」で作家デビューした安部譲二さん。
元ヤクザ。
暴行傷害、賭博、麻薬、青少年保護条例違反など日本国内だけで合計14犯、国外での前科は3犯。
国内と国外での刑務所生活は通算8年というツワモノだ。

一度だけ彼を囲んだ食事会の末席に呼ばれた。
腕っぷしの強そうな巨漢だけど終始にこにこおしゃべり好きな人を楽しませる人だった。
でも確実に人を殺しているとぼくは確信した。

そして最後の一人。
安部譲二さんも出入りしていた安藤組の組長安藤昇
仕事場からエレベーターで一階までおりて玄関から出ようと
した時にすれ違った物静かで小柄な中年の顔を見ると
冷血で蛇のような目をした男性だった。
それが安藤昇だった。
すでにその時は役者、作家として活躍していたけれど
戦後の渋谷をしきって一斉を風靡した安藤組の組長だ。
人殺しは当たり前だろう。

これを書いている時に他にもスポーツ観戦していることを思いだした。

・年月不詳 クラッシュ・ギャルズ。
会場は蒲田体育館。
ぼくは当時クラッシュよりも神取忍とジャガー横田が好きだった。
けれど蒲田体育館で一番楽しめたのは小人プロレスだった。

・2002年9月20日 身障者プロレス「ドッグレッグス」。
会場は下北沢のタウンホール。
300人満杯が観戦する中での身障者と健常者とのプロレスに大笑い。
身障者いじめはやめろと見当外れな批判をする人はぜひ見てもらいたい。
身障者の選手たちの真剣さと嬉しそうな顔つきを見ていると「低次元な差別してるんじゃねえよ」と言いたくなる。これは小人プロレスにも言える。
“小人を見世物にするのはよくない”というこれまた低次元で勘違いした人道主義者にも腹が立つ。
プロレスを生きがいにし生活の糧にしていた彼らから仕事を奪ってしまったことこそが問題だ。

閑話休題。

ANetflix シリーズ『サンクチュアリ 聖域』 全8話の話を。

野球もサッカーもテニスにも興味がないし相撲のことも何も知らない。
『サンクチュアリ 聖域』を見ることによって、
伝統にしがみついている角界やら相撲部屋やらの闇が浮き彫りにされ楽しく勉強させてもらった。
な〜るほどね、こ〜いう事がまかり通るのね。

ほんの短期間中学時代に運動部で体験した体育会系の体質が大っ嫌いだ。
先輩を敬うことは必要だ。ただしそれに値する人格の人であればだけどね。
伝統や格式が必要ないとは思わない。
ただしその守り方があまりにも歪にねじ曲がっていたり利権争いがからんだりする。
そこんとこが駄目なんだ。

比類なく美しくきりっと締まった上唇の持ち主アニャ・テイラー=ジョイ

アニャ・テイラー=ジョイ

主演した『クイーンズ・ギャンビット』

を観るのにチェスの心得がなくても楽しめるように相撲音痴も思いっきり楽しめるのが
『サンクチュアリ 聖域』だ。


【Story】
この動画(22分)で物語の詳細が分かります。

元ヤンキーの九州男児小瀬清が主人公。
親父の借金を返済するために金儲けを考えているところに猿将部屋の親方(ピエール滝)から「相撲は儲かるで〜」と相撲部屋に誘われて清は入門する。
清は若手力士“猿桜”(えんおう)となり先輩、後輩、伝統、格式など分厚いベールに包まれて聖域化している角界に対し中指をてて「角界ぶっ壊〜す!」と息巻きます。 

鼻っ柱が強く口下手で誰にでも反抗的な態度をとる猿桜ですが父親の借金を返済するために「目標800万円」と書いた通帳を毎日しんみり見て歯を食いしばる親思いでもあります。

喧嘩っ早いヤンキーでならしただけあり猿桜は初めは勝ち進むのですがすぐに壁にぶち当たり相撲部屋から逃げ出そうとします。
そんな時に仲間の「君は土俵に生きるべき人間だ!」と諭されます。
力士として強くなるためには四股をしっかり踏めることが基本だと教わりますが鼻で笑います。

政治部で問題を起こしたためにスポーツ担当に左遷された國島飛鳥(忽那汐里)は先輩の財津に連れられてひんぱんに猿将部屋に出入りすることになった。
飛鳥は古臭いしきたりと習慣でかんじがらめの角界にも相撲にも興味がない。
四股の稽古を見て「コスパ悪すぎ」と鼻で笑う生意気な飛鳥はいい記事を書いて社会部に戻してもらうことにしか興味がない。

誰に対してもつっけんどんで俺は強いんだと口先ばかりの猿桜もしだいに本格的に四股を踏み始め徐々に力をつけ始めます。
小生意気な記者飛鳥も猿桜が口先だけの生意気さだけではなく力士としての力がついてくるにしたがって相撲じたいに興味を持ち始めます。

この動画が22分で物語を詳細にわかりやすくお伝えします。


【Trivia & Topics】
*本作について。

Netflixの日本製作で2023年5月4日より全世界で配信中のWebドラマ。
配信直後から大反響で日本ランキング1位を獲得。Netflix週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)入りし、世界50か国以上で「今日のシリーズTOP10」入りしています。
マンガ原作のように感じますがオリジナル作品だというのが素晴らしい。
題材が題材なだけに海外でも大化けする可能性もあるのでは?

*一ノ瀬ワタル。
主演の一ノ瀬ワタルは元キックボクサーの役者。初めて見ました。
ウイキを見ると多くのテレビや映画に出演していますが全く覚えがない。
キャリア10年ですが本作で初めての主役ですがハマってます。
世界での反響も大きいのでこのシリーズと一ノ瀬ワタルの今後が楽しみです

*脇役たち。
・清水(染谷将太)
子供の頃から熱狂的な相撲ファンで猿将部屋に入門したが体力も相撲のセンスもないために部屋から脱落するが相撲界が忘れられず呼び出しとして再出発する。

・猿将親方(ピエール滝)
清の実力を見つけて育てる相撲部屋の親方。
名セリフ「土俵にはね、金・地位・名誉、全部埋まってるんだよ」

・國島飛鳥(忽那汐里)
四股の稽古を見て「コスパ悪すぎ」と鼻で笑う生意気な記者飛鳥はいい記事を書いて社会部に戻してもらうことにしか興味がない。

・女将花(小雪)
猿桜が部屋の人間で唯一心を許して素直になれる女将の花。
いつも物静かに猿将親方をサポートしていますが後半になって彼女の真価が発揮します。

・時津敬一郎(田口トモロヲ)
関東新聞社の記者、飛鳥の上司。
名セリフ「異常の上に成り立つ異世界、それが角界なんだ」

・小瀬浩二(きたろう)
借金で首が回らず寿司屋を廃業し夜間交通整理のアルバイトをしている猿桜の父親。

・小瀬早苗(余貴美子)
借金で寿司屋をつぶした浩二に愛想をつかせて家出した猿桜の母親。

・犬嶋親方(松尾スズキ)
現役時代猿将親方に何度も横綱昇進を阻まれ、いまだに猿将親方に恨みを持っており猿将部屋を潰そうと画策している。

このような見事なキャスティングから醸し出されるハーモニーが抜群です。

*リアリティ。
本作はリアリティーのある映像で相撲が満喫できます。
時間を負うに従って力士たちの肉体にパワーが宿ってきます。
力士役の役者たちは撮影1年前から肉体改造の専門家やプロのスポーツ・トレーナーや栄養士から指導を受けて肉体づくりを行っていました。
相撲監修を元大相撲力士・維新力浩司が担当しています。

撮影秘話映像

【5 star rating】
☆☆☆☆
(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:超お勧めです。
☆☆☆☆:お勧めです。
☆☆☆:楽しめます。
☆☆:駄目でした。
☆:途中下車しました。

【reputation】
Filmarks:☆☆☆☆★(4.2)

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