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-映画紹介-『メゾン・ド・ヒミコ』 涙はきっと暖かい。

《乱れ撃ちシネnote vol.28》


『メゾン・ド・ヒミコ』 犬童一心監督 2005年公開 

【Introduction】
昨日はとつぜんオックスフォード英語辞典編纂秘話を描いた『博士と狂人』に寄り道してしまった。

今日は軌道をもどして石井裕也作品か宮崎あおい作品かオダギリ・ジョー作品かに迷ったあげくオダギリ・ジョーに決めました。
「乱れ撃ちシネnote」で紹介した彼が出演している作品は2本です。

・『大空港』(シネnote Vol.2)  三谷幸喜監督作品。

 見るからにいかがわしい詐欺師の役でした。

・『船を編む』 (シネnote vol.26) 石井裕也監督作品

とても辞書編集者とは思えないチャライ男役でした。

『メゾン・ド・ヒミコ』では柴咲コウと田中泯と共演したLGBT作品でゲイの役で登場します。


【Story】
小さな塗装会社の事務員として働くだけでなくコンビニでアルバイトをしても借金を返済しきれないので風俗のバイトを探している女事務員吉田沙織(柴咲コウ)。
ある日、日曜日だけ養老院でアルバイトをしませんか、お金が必要なんでしょとすすめる男(オダギリ・ジョー)が現れました。

その養老院の経営者は子供の時にカミングアウトして突然自分と母親を捨てて銀座でゲイバーを始めた沙織の父親です。
父親は歳をとり認知症を発症したこともあり数年前に大人気だった新橋コリドー街のゲイバーを引退し、海辺の小さなラブホテルを買い上げてゲイ専門の養老院を運営しているのでした。
沙織は高額の謝礼にひかれ心の底から憎んでいた父親のもとで働くことを決めます。

当初沙織は年老いたゲイたちを気味悪がっていましたが時間が経つに従って一人ひとりのゲイたちと親しくはなったものの自分と母親を捨てた父親に対する沙織の憎悪は変わりませんでした。

ある日沙織は壁に飾ってある父親の過去の写真の中におしゃれをして楽しそうにしている母親が写っているのを見つけ・・・。

【Trivia & Topics】
*柴咲コウ。
キリッとした目付きで眉間にシワを寄せて上目遣いに相手をにらみつける表情がいいんです。ノーメイクで出演していることもあって小さな塗装会社で働いている潔癖症の女事務員役がとてもリアルです。

*オダギリ・ジョー
どんな作品に登場してもひょうひょうとしたしぐさが持ち味ですが、本作品では自分の父親のような年齢の男ヒミコの恋人となり優しく見守る姿が素敵です。

*田中泯
世界的な舞踏家です。
2002年『たそがれ清兵衛』、2004年『隠し剣 鬼の爪』と2本の山田洋次監督作品に出演し、映画出演3作目で初の現代劇に挑戦しました。
沙織の前に初めて登場したヒミコの佇まいはさすが舞踏家です。毅然とした姿が印象的です。

コントラストの強いこのキャスティングが見事でした。

*ゲイさまざま。
養老院に暮らす個性あふれたゲイたちが見ものです。
声を出さなければ素敵なロマンスグレーに見える者
ベタベタの厚化粧で見るからに老残オカマ然としている者
ビジネスマン然としている者
肉体を誇示するマッチョな者
ハゲで女装している者
ストレートど真ん中で潔癖症の沙織には当初彼らが汚らわしい存在に見えましたが、全員に共通しているのはとてつもなく優しいことです。
最初はかれらに対する嫌悪感を顔に出していた沙織も朝から晩まで冗談を言いながらじゃれあっているオカマたちの優しさに気づかされます。

*見事な展開。
若い時は派手に楽しく暮らしていたゲイたちの老後。
今後今まで以上にリアリティをもって語られるであろうこのシビアな問題を時にはユーモラスに描いたこの映画の脚本は昨年末話題になったテレビドラマ「エルピス」と同じ渡辺あやです。

このドラマはテンポが早く思わぬ展開の連続で“冤罪”を通して今のマスコミのあり方を切り取ったドラマです。
見逃した方はこちらからぜひ。


*登場人物たちの心情にみごとに共振した音楽。

アニメ映画『源氏物語』以来18年ぶりに映画音楽を手がけた細野晴臣の音楽が物語に深みを与えています。


【5 star rating】
☆☆☆☆
(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:見事な作品
☆☆☆☆ :面白い作品
☆☆☆  :平凡な作品
☆☆   :残念な作品
☆    :退屈な作品


【reputation】
Filmarks:☆☆☆★(3.7)

Amazon:☆☆☆☆

u-next :☆☆☆☆






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