-映画紹介-『ジュリエットからの手紙』　 “もしも”“あの時”と振り返るだけでは愛はつかめない。

2023年3月26日 20:15

《乱れ撃ちシネnote vol.77》

**『ジュリエットからの手紙』　ゲイリー・ウイニック監督　２０１０年公開アメリカ**

鑑賞日：２０２３年３月２６日　u-next

【Introduction】
前回の『あなたの旅立ち、綴ります』は、

久しぶりに観たシャーリー・マクレーンの映画でした。

マクレーンはこの作品以降『リトル・マーメイド人魚姫と魔法の秘密』（２０１８）と『ノエル』（２０１９）がアメリカでは公開され、最新作『American Dreamer(原題)』は２０２１年に撮影が終わり今後公開予定となっています。
今年８４歳のマクレーンはまだまだお元気なようです。

今回は『あなたの旅立ち、綴ります』でマクレーンと共演したアマンダ・セイフライドの主演作『ジュリエットからの手紙』（２０１０）。
アマンド・セイフライドがいつも以上に輝いている作品です。

【Story】
ソフィ（アマンダ・セイフライド）は事実調査員としてニューヨーカー誌で働いている。例えば歴史的な写真の中に写っている人物を探し出して本人にその時のことを聞き出すのが事実調査員の仕事です。
探偵のようなこの仕事を続けているソフィの夢はライターになることでした。

ソフィの婚約者ヴィクター（ガエル・ガルシア・ベルナル）はイタリアン・レストランのオーナーとして出店の準備に追われていた。
店がオープンすればハネムーンの時間がとれなくなるので２人はイタリアのヴェローナにプレハネムーンに行くことにしました。

ヴィクターの頭の中はレストランのことでいっぱい。
ヴェローナに着いても観光もせず、店に置くワインや食べ物の仕入れ関係者との打ち合わせばかりなのでソフィーは１人で観光することにしました。

ある時ソフィーは中庭のある建物の壁に手紙を貼っている女性たちを見かけました。しばらくすると一人の女性が無数の手紙を壁から剥がして回収しています。
あの手紙をどうするのだろう？
ソフィーは彼女の後について建物の中に入ると建物の一室で４人の女性が次々と手紙に返事を書いていました。

その建物はシェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」の舞台となったジュリエットの家で人気の観光スポット。
女性観光客たちが恋の悩みを綴った手紙をジュリエットの家の壁に貼ると返事がくるわけです。
返事を書いている彼女たちはジュリエットの秘書と呼ばれています。

翌日ソフィーは英語で返事を書く手伝いをしてみないかと薦められ喜んで加わります。
ソフィーが壁から手紙を剥がしているとレンガの一部が剥がれ落ちて穴があき一通の手紙が見つかりました。
５０年前に英国人のクレアという女性が書いた手紙です。

私は行かなかった
ロレンツォの元へは
彼は私を信じていた
駆け落ちして愛を貫くのだ
でも、彼が待つ場所へ私は行かなかった
彼は約束の木の下で待ち続けたはず
今、ヴェローナに・・・明日ロンドンへ帰る
とても不安よ
ジュリエット　私はどうすればいいの？
心の痛みを誰にも打ち明けられないの
-クレアより-

ソフィーはその手紙に丁寧に時間をかけて返事を書きました。
それから数日後一人の若者が彼女たちの前に現れました。
「君たちはジュリエットの秘書？」
「祖母のクレア・スミスに返事を書いた人は？」
彼はクレアの孫チャーリー（クリストファー・イーガン）だった。

祖母の付添でイタリアまでやって来たチャーリーは、
「祖母は歳だし相手が重病だったり死んでいるかどうかも分からないし、５０年も前のことを彼が覚えているかどうかも分からない。祖母を悲しませたくないんだ」と言ってソフィーを祖母に会わせません。

ソフィーはチャーリーの後をつけてクレアを見つけました。
ソフィーはクレアに自分が返事を書きましたと白状するとクレア（ヴァネッサ・レッドグレイブ）は大喜び。
「孫が反対するから面白いのよ、ねえ、ワインでも飲まない？」とソフィーはクレアに誘われます。

その夜クレアとチャーリーとソフィー、そしてジュリエットの秘書たちで食卓を囲んでクレアの話を聞きます。
「絵の勉強のためにシェナ近くの家に滞在したの。その家の息子がロレンツォよ。彼とはひと目ぼれだったの。優しい青い目をした人で、私を“きれいだ”って“世界一きれいだ”って言ってくれた。そしてこの指輪をくれたの。結婚したかったけれど英国で試験があるし両親が許さない。だから怖気づいて逃げてしまったの。そして今、心から望むことは“臆病な私を許して”と彼に謝ること。居場所は分かっているの、シェナ近郊の農家よ。明日チャーリーと一緒に行ってみるわ」
祖母を一人では行かせられないので渋々イタリアまでついてきたチャーリーは現実主義者で否定的だ。

夕食を終えて帰る２人を追いかけてソフィはぜひ一緒に行かせてもらいたいと言う。
「君はそれを記事にするんだろう、ゴメンだよ」とチャーリーは断るがクレアは「ぜひ一緒に来てもらいたいわ」と快諾する。
興味津々のソフィーと明るく積極的なクレアと常に慎重で悲観主義者のチャーリーはチャーリーの運転する車でどこにいるのか生きているのかも分からないロレンツォ探しの旅が始まった。

電話帳でロレンツォの名前を流すと７４名見つかりこの段階でチャーリは探すのは不可能だと言う。
ソフィは調査員としての経験を活かしてヴェローナの地図からコンパスで捜査地域を割り出してその範囲内にいるはずのロレンツォ探しが始まった。
道々クレアとソフィは身の上話をしながらお互いの人生のことを知ることになる。ソフィは旅で体験したことやクレアから聞いた身の上ばなしなどを克明にノートに書き記します。
そして３人は何人ものロレンツォと会い何回も失望します。

クレアはロレンツォと会うことが出来るのか？
ソフィーは物語を書き上げることが出来たのか？
この旅で３人の運命にどんな変化が起きたのか？

イタリアの田舎の美しい風景をバックに５０年前に恋心をいだいた相手を探すロマンチックなロード・ムービーは続きます。

【Trivia & Topics】
＊実話に基づいた作品です。
『ロミオとジュリエット』の舞台で世界遺産にも選ばれる愛の都・ヴェローナの街に残されているジュリエットの生家。
中庭の壁には年間５０００通もの恋の悩みを打ち明けた手紙が貼られ“ジュリエットの秘書“たちがその手紙に返事を書いています。
本作品はジュリエットからの手紙が導いた感動の実話を基にした作品です。

＊ソフィーがクレアに書いた手紙。

親愛なるクレア
「もし」と「あの」は
それぞれごく普通の言葉にすぎません。
でもその２つを合わせると
あなたを一生くるしめる力を持つのです。
「もしあの時」
物語の結末はわからない
でもかつて真実と感じた愛なら
遅すぎることはありません
かつて真実なら今も真実のはず
少しの勇気を持ち
あなたの心に従って
ジュリエットの愛をどうたとえれば
親しい者を捨てる愛
荒海をも越える愛
私もいつかそのような愛を感じたら
つかみ取る勇気を持ちたい
クレア　あの時は無理でも
いつか勇気を持てることを信じます
-愛をこめてジュリエット-

＊実際のカップル。
クレアを演じたヴァネッサ・レッドグレーブとロレンツォ・バルトリーニを演じたフランコ・ネロは実生活でもパートナーです。

＊ロレンツォじいさんたち。
何人ものロレンツォじいさんに会うことになる３人ですが、人違いだったことが分かった時の彼らの受け答えがとてもチャーミング。
さすがネアカで優しくユーモアがあっていくつになっても色気を失わないイタリアのおじいちゃんたちに関心します。

＊アマンダ・セイフライド
２０１３年アメリカのピープル誌で「世界で最も美しい女性」の３位に選ばれています。身長１６１センチ。男優より女優の方がギャラが少ないというハリウッドの賃金格差について改善を求める声をあげているフェミニストでもあります。
『レ・ミゼラブル』（２０１２）のコゼット役や『Ｍａｎｋ／マンク』（２０２０）のマリオン・デイビス役で脚光を浴びています。