【檀一雄全集を読む】第一巻「漆黒の天国」
昭和十二年に日中戦争の動員令を受けて軍隊に入った檀一雄は昭和十五年に召集解除となるが、再度の召集を逃れるために満州に渡る。昭和十六年にその満州で書かれたのがこの小説だ。
自らを「帝王」と呼ぶ烏の視点でイエス・キリストの登場から磔までを見るという話で、この小説が発表された前年にはユダの視点からイエス・キリストを語る太宰治「駈込み訴え」が発表されている。檀の「小説 太宰治」によると、のちに檀は太宰に「位階という題で実朝を書こうと思っている」と伝えたところ「俺も書くんだ、実