【檀一雄全集を読む】第一巻「母の手」
檀一雄は母親のことを度々書いている。檀は六歳の時に父の転勤のために両親から離れて母方の祖父母が住む野中、現在の福岡県久留米市に預けられた。翌年にはまた父の転勤のために栃木県足利市で両親と暮らすようになるのだが、さらに翌年には母の実父が亡くなり、実家の整理のために今度は母が野中に滞在するようになる。そのまた翌年、檀が九歳の時に母は弟の看病の際に知り合った医大生と出奔する。そのまま檀は二十一歳になるまで(作中では二十三年と書いているが実際は二十一年)再び母と会うことが無かった。