太宰治の「富嶽百景」と井伏鱒二放屁事件
僕が太宰治のエピソードの中で好きなものの一つに「井伏鱒二放屁事件」というのがあります。
太宰は1935年に虫垂炎と腹膜炎を併発し、患部の疼痛を鎮静するために用いたパビナールの依存症になってしまい、各方面に借金を重ね、奇行を繰り返し、周囲の信頼を失っていきます。本人はその頃の夫人である初代には「井伏さんに言うのはもう2、3日待ってくれ。自分の体の始末は自分でつける」と言い、親友の山岸外史には「パビナールくらい自分で抜いてみせる」と豪語していたそうですが、状況は改まらず、周