半導体と水ビジネス ~半導体産業を支える国内銘柄5選~
生成AI市場や、投資界隈を盛り上げている半導体。
今回は、半導体産業を支える水について解説しながら、関連銘柄をご紹介します。
水ビジネスの面白さや可能性、投資の参考になればと思います。
※本記事は、特定銘柄を推奨するものではありません。
半導体製造に不可欠な”超純水”とは
半導体製造には、大量の”超純水”が不可欠です。
私たちが口にする水道水には、実はたくさんの不純物が含まれています。(50mプール一杯に、ドラム缶2~3本分の不純物が溶けています)
超純水とは、様々な水処理技術を駆使し、極限まで不純物を除去した”最高グレードの水”です。いわば、限界まで”H2O”に近づけた水です。
半導体の製造工程においては、洗浄作業、ウエハの研磨や切断等で大量の”超純水”が使用されます。数nmオーダーの精密さが要求される半導体製造では、製品の不具合を避けるため、水中の不純物を極力取り除く必要があります。
水の純度が、半導体の仕上がりを左右するのです。
また、超純水は”キレイな水”すぎて、水中の不純物を直接的に分析することが困難です。そのため、超純水の主な水質指標には、比抵抗(=電気の流れにくさ)が用いられます。(不純物が少ない水ほど、電気が流れにくい)
一般的な超純水の要求水準は、比抵抗10 MΩ・cm (25 ℃)以上です。
これは、東京ドーム一杯の水に、わずか砂糖1グラムという純度です。
超純水のニーズが増加
AIや電子デバイスの高度化等に伴い、半導体の微細化が進んでいます。
現在の半導体チップのサイズは3ナノ程度ですが、2025年には2ナノ、将来的には1.4ナノにまで微細化すると言われています。
また、パワー半導体(高い電圧、大きな電流の制御や変換ができる半導体)向けの案件でも、超純水のニーズが高まっています。
生成AI向けのデータセンター需要に伴い、半導体製造工場は建設ラッシュです。主要な半導体企業からなる世界半導体市場統計(WSTS)の予測では、24年の市場規模は前年比16%増の6112億ドル(約87兆円)を見込んでいます。
今後も半導体需要に後押しされる形で、超純水市場はさらに拡大していくでしょう。
半導体×水関連の銘柄
高度で複雑な技術を要する超純水を提供できる企業は、世界でもごく僅かです。そんな超純水の国内銘柄を紹介します。(24年10月4日時点)
栗田工業(6370)
半導体向けの超純水世界シェアは約2割。なんと、世界No1です。
技術力と密な営業を強みとし、国内外の半導体大手を顧客に持ちます。売上高は2024年3月期で3848億円と10年前から倍増、営業利益は約2.8倍に成長しています。連続増配当株としても魅力的です。
超純水製造システムの建設・設置、運転管理、メンテナンスまでを一貫して提供しています。同業他社のなかでも、研究開発やIT活用、ベンチャー買収等に積極的で勢いがあります。
オルガノ(6368)
産業向け水処理エンジニアリング企業。熊本のTSMC半導体工場の水処理を手掛けています。半導体関連株として注目を集めており、株価は直近5年で約10倍に成長しています。
24年3月期の営業利益は前期比45%増の約220億円と、急速な成長を続けています。イオン交換樹脂等を用いた技術力に強みがあります。
野村マイクロ・サイエンス(6254)
超純水装置の専業大手。水処理装置の納入から、定期メンテナンスまでを一貫して手掛けています。
栗田工業、オルガノよりも小規模ですが、海外比率が高い点が強みです。海外売上高比率は80%近くにのぼり、アジアが主力です。韓国サムスングループを顧客に持ちます。25年3月期は、売上高が前期比20.5%増の880億円、営業利益は同12.7%増の120億円、純利益は同8.4%増の86.5億円と過去最高を更新する見通です。
日本ガイシ(5333)
半導体の洗浄プロセスにおいて、超純水に炭酸ガスを溶解することで静電気の発生を抑制し、製品不良を低減する特殊な技術を有しています。
25年3月期は、売上高が前期比7.1%増の6,200億円、営業利益は同13.0%増の750億円、純利益は同30.7%増の530億円と大幅増益を見込んでいます。配当利回りは3%を超えており、高配当銘柄としても魅力があります。
日東電工 (6988)
総合材料メーカー。超純水の製造プロセスに使われるMF、RO、UF膜を手がけています。半導体製造で使われるテープやフィルムなど各種材料も製造しています。24年3月期連結売上高は9200億円、純利益は約1000億円規模です。
まとめ
半導体を支える超純水、関連する日本企業についてご紹介しました。
需要が急増する半導体は、高度な水処理技術に支えられています。
そして、世界トップの超純水技術を有する国内企業への投資が増えています。
超純水の原料に適した”キレイな水資源”が豊富な日本は、地の利があります。一方で、半導体製造は大量の水を消費するため、水資源保護の観点から、いき過ぎた半導体製造拠点の建設を懸念する声もあります。
これからの半導体産業をリードする水関連企業は、限られた水資源を有効活用する技術力で付加価値を生み出し、グローバルに活躍していくでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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