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日本経済の命運は企業の水リスク対策にあり?

新NISAが活況です。改めて日本経済への注目が高まっていますが、「企業の水リスク対策」の観点から日本企業を見てみると、面白いかも知れません。

そもそも「企業の水リスク」って何?

水リスクとは、企業活動にマイナスとなる水に係わる不確実性を指します。

水リスクは、大きく3つに大別されます。

① 物理リスク(洪水、渇水、水質汚染等)
2023年には、渇水によりパナマ運河の航行制限が行われ、物流に大きな影響がありました。また、近年では洪水により工場が操業停止に追い込まれるケースも増えています。

② 規制リスク(条例等による各種規制)
新たな水質規制に伴う排水処理のコスト増などが挙げられます。

③評判リスク(風評被害等)
自社の生産活動だけでなく、例え水資源の大量消費、水質汚染に無関心な企業と取引していること自体が、企業価値を毀損する恐れがあります。エシカル思考が浸透する現代、人材確保でも不利になるでしょう。

こうした背景から、企業の水リスク対策は、事業継続の観点で非常に重要です。

水リスクに関する経済動向

近年、世界的な気候変動への取組みや、ESG投資の文脈において、水リスク対策に関する情報開示の重要性が増しています。

水リスクに関するグローバル指標の一つとして、イギリス国際NGOのCDPが発表している「CDPウォーターのスコア」があります。

これは、CDPが世界の主要企業の水リスク対策について、投資家に代わって分析・評価を行い、その結果を開示するものです。

CDPウォーターのスコアは、主にESG投資を行う機関投資家にデータベースとして参照されており、投資家や金融機関からの資金調達に寄与する可能性があります。

CDPウォーターの詳細は、以下のページに分かりやすくまとまっています。

日本企業は、水リスク対策先進国

2022年、CDPウォーターの調査において、最高ランクのAを獲得した日本企業は35社。これは、ダントツの世界1位です。アメリカ、環境意識の高い欧米諸国にも大幅に差を付けています。

出典:「CDP 水セキュリティレポート2022:日本版」

中でも、水資源が生産活動に直結する素材メーカーや、食品・飲料・農業関連企業の成績が優秀です。

これは、長年における日本企業の環境意識向上、優れた省エネ技術開発などを基盤とした、世界に誇れる日本企業の優位性だと思います。

CDPウォーターでAを獲得している日本企業のリストは、下記をご参照ください。


水リスク対策は、崇高な企業意志、専門性、長期目線での財務体力が要求されます。
CDPウォーターの成績は、「サスティナビリティ意識が高く、財務基盤も安定した企業」の目安として、投資の判断材料にも充分になり得るかと思います。

実際に、CDPウォーターでAリストの日本企業のうち、PBR1倍割れ企業は3割を下回っています。(24年2月7日時点)

ファーストリテイリングの水リスク対策

一見、水リスクとは縁が無さそうなアパレル業界ですが、実はサプライチェーン全体で見ると、大量の水を消費する業界の一つです。

そんなアパレル業界で、水リスク対策を企業価値向上にも活かしているのが、ファーストリテイリングです。

ファーストリテイリングでは、水使用量を大幅に削減するジーンズ製造工程の開発や、洪水や水質汚染リスクの高い工場の特定、対策などに積極的に取り組んでいます。さすが、日本経済を牽引する代表企業です。

具体的な取組みについては以下をご参考ください。

水リスク対策=ビジネスチャンス

CDPウォーター調査対象となった日本企業を業界別に見ると、素材・食品・飲料・農業関連は回答率が高い一方、アパレルや発電関連企業の回答率の低さが目立っています。業界のビジネス構造が、回答率に影響していると思われます。

一方、CDPウォーターの影響力は急速に拡大しています。2023年に調査対象となった日本企業は、なんと1200社以上。2022年の369社から、幅広い業界を対象に急増しています。

世界的に水リスク対策の重要性が増す中、日本企業には、業界を問わず『水リスク対策先進国』として世界をリードできる実力があると思います。

日本企業全体で、戦略的に水リスク対策に取り組むことが、結果として長期的な日本経済の成長に繋がるのではないでしょうか。

水リスク対策は、日本経済の好機。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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