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コーチングが、科学的にも効果的な理由。

コーチングを科学的根拠から理解したいという方へ。

本日、DAncingEinsteinのセミナーに参加しました。タイトルは、「Happiness&Wellbeing」。左脳/右脳や身体/感情のつながりを脳神経科学視点からつなげてくれる非常に有意義な内容でした。

以前から青砥さんのインタビュー記事や社内の勉強会に参加させていただいており、今回の内容もざっくりと前知識はあったのですが、改めて「コーチング×脳神経科学」観点でイベントレポートをしたいと思います。4時間という長時間のセミナーなので記載しきれていない部分も多いですが、「コーチングを科学的観点・根拠から理解したい」という方におすすめです。

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講義がスタートする前に、事前にアンケートされていた問い、「あなたにとって幸せと感じる瞬間を直感的に4つ選んでください」の結果共有から始まりました。

言葉では同じ「幸福な瞬間」でも、神経伝達物質から見るといくつか以下のような棲み分けができるようです。


オキシトシン(OXT):家族、恋人、親しい人、ペットといる瞬間
セロトニン(5-HT):ごろんとしているとき、自然の中にいるとき、ゆったりと呼吸しているとき、お気に入りの場所にいるとき
ドーパミン(DA):何かに没頭しているとき、わくわくしているとき、見知らぬものに出会ったとき、好きなもの、こと、人を目の前にしたとき
ベータエンドルフィン(β-E):マッサージされているとき、運動しているとき、おいしい食事をしているとき、セックスしているとき

これらの例から、「私は何タイプなんだろう」と考えました。ちなみに私はオキシトシン/ドーパミンタイプでした。

この結果からの示唆は、「幸せを感じる瞬間は人によって違う」ということ。自分がどんな時に幸せを感じるかを認知していることは大切で、「幸せ」という言葉の解像度を上げることは、自分をその状態に近づけるための最初の一歩だと思います。

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1. 脳的happy


「Affective Neuroscience =感情神経科学」はアメリカでは2009年ごろから発展した研究です。以下から、セミナーのレポートも兼ねて解説していきます。


●happyの定義
「ポジティブ情動を引き起こす体内環境の変化の総称」
ポジティブ情動が生じると、冒頭で紹介された神経伝達物質である「セロトニン」や「ドーパミン」などが分泌されます。つまり、幸せな状態であるときは確かに内側で変化が生じる。脳をはじめとした身体で、細胞レベルで確かな変化が生じている。これは、コーチング文脈でも嬉しい根拠ですよね。「今起きている感情をキャッチしましょう」「内側からエネルギーを感じます。」などの表現は人によっては受け容れがたいかもしれませんが、脳神経科学でその有効性や変化は、証明されています。

この「しあわせな状態(well-being)」は、DNAと経験で異なります。遺伝的な影響もあれば、個々の生い立ちや経験から「感じる瞬間」が違う。だからこそ、幸せは千差万別で、正解/不正解の二元論で語れないのですね。

●happyの知覚
「happyは、現れては消える無形の反応。
happyは身体の内側で生み出され、知覚するもの。」

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これがまさに、コーチングが素晴らしい所以です。「幸せな状態」は、自分が知覚して初めて感じられるものです。

細胞レベルの変化(例えばセロトニンやオキシトシンが体内で分泌されている事実)があったとしても、それを本人が知覚し、味わうことができなければ感じることはできません。だからこそコーチングは、「クライアントのわくわくがどこにあるのか」「クライアントがどんな瞬間に充実感を感じるか」を一緒に言語化し、クライアントに知覚してもらうこともひとつの目的です。

●happyの所在
「happyがどこかに在るのではなく、脳のフィルター反応とメモリーの在りようでhappyは姿を現す。」

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幸福はどこかからやってくるものではなく、内側から生み出すものだ、と青砥さんはおっしゃっていました。相田みつをさんの有名な詩にもあるように「しあわせはいつも、じぶんのこころがきめる」
つまりこれは、脳神経科学観点から見ても理にかなっており、内側に注意を向けて自分の反応をキャッチできれば幸せは内側から(身体感覚としても)創り出せるということです。
「お金」や「モノ」など、外側(物質的なもの)を追い求めるよりも、身近にあるモーメントを味わい内側から見出すことさえできれば、幸せを感じられる瞬間が多くなり、それが「Well-being」につながると言うのは、脳神経科学的にも事実なんですね。

2. フィルター、反応、そして記憶

このチャプターでは、脳の認知のフィルターと反応、記憶のシステムについて解説されました。人は何か出来事が起きたとき、脳には以下のプロセスが生じます。

反応⇒細胞に構造変化⇒記憶


脳神経科学的観点からは、どう反応するかで、どう記憶するかが決まるといいます。そして、このセミナーにおいては、happyとwell-beingについて、以下のように定義されていました。

反応=happy、記憶=well-being(happy状態が記憶として残った状態)

つまり、自分がどんな反応(解釈)をするかで、well-beingが決まる。
トラウマを持つ人は、過去のエピソード記憶+悲しみや恐怖という感情記憶から、世界はダークに見えてしまいそうになります。(脳が傷つくことを恐れるため、その思考をパターン化する。)

だからこそ、過去の経験をどう捉えるかは重要だと改めて感じました。

物事に対する解釈は自分次第だと、私も過去の記事で書いてきました。それが青砥さんの以下の言葉で、科学的根拠として肯定されたような気がしてうれしくなりました。

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ヒトは、前頭前野皮質(Dlpfc)で意識をして、意識の向ける方向を"選択"することができる。だからこそ、その機能を活用して、自分が心地よいと思う方向に意識を向けることができる。

3. happyフィルター


ヒトの脳は、自動的に情報の取捨選択をしていると言います。(”捨てている”がポイント)
脳は言わば省エネルギーで活動するために、本来入りうる情報の約1/1000以下しか情報を拾っていないそうです。
したがって、人間の注意は実に限定的で、意識しないと現実で起きていても、見ないようにする(それも自動的に)ことはいとも容易く、そして自動的に行われているのです。(ex,服を着ているけど、肌触りなどは四六時中意識しない、家の中の香りには変化がない限り気が付かない、など)


だからこそ、限られた注意のベクトルをどんな情報に使いたいのか。それをひとりひとりが深く問い、心がけを変えることが重要であり、コーチングはその問いのアンサーを出すための時間でもあると思います。

そして、普段自分でも気が付いていない自分自身の情報、例えば大切かもしれないのに自動的に捨ててしまっている情報などを呼び起こす時間として効果的だと思います。

さらに脳内には、「ACC:Error Detection 」というエラー検知の働きをしている部位があります。
これは有名な話ですが、不安情動は偏桃体が司っています。この機能は、太古の昔からヒトの脳に存在し、生物が生きていく上で重要な生態機能です。生きていくために発達してきた脳部位でもあり、物理的恐怖(草むらから虎に襲われるなど)がなくなった現代社会においても、ネガティビティバイアス(半自動的に不安や恐怖に注意が向く)だけが生存機能として残っているのです。このネガティビティバイアスによって差分(足りない/欠けている)ことに注意が向きやすく、テストで90点を取れても不足している10点を思わず気にしてしまうのはこのためです。

半ば自動的に働いてしまうネガティビティバイアスを客観的に捉えること=メタ認知であり、自分自身の感情や認知を俯瞰してみることができれば、人間は、自分自身を意識を向けたい方向へ誘導することができます。

ちなみに、ネガティビティバイアスの対となるハッピーバイアスなるものはは解剖学的には存在しないそうです。ただ、ポジティブな方向へ意識を向けることは脳の仕組み的に可能だと、青砥さんは強く主張して下さりました。

例えば、差分なし(できた/満たした部分)にも意識的に注意を向ける/を意識的に創ること、そしてそれを記憶として海馬に保存することで、習慣的(半自動的に)意識を明るいほうへ向けることが可能だと。私も、数年前にネガティブな意識を変えたくて記憶が定着化する就寝前に、今日あったポジティブな出来事を紙に書いて寝るようにしていたら、今ではすっかりポジティブ思考でPQテストも90以上です。

コーチングでは、クライアントが意識を向けたい方向を一緒に探り、習慣的に意識の向ける方向を問い直す時間でもあります。そういった意味で、ネガティビティバイアスを捉えなおすためにも、コーチングは一助になるのかなと思っています。

4. happy反応~4代ポジティブエモーション


happyに対する脳の反応と、そのhappy反応に気づく脳部位は別の部位だそうです。

AI:無意識に内側で反応している神経
dlpfc:意識的に反応している前頭前野皮質

つまり、脳内で生じているhappy反応に気づき、キャッチすることが重要だということです。このDlpfcで意識的にキャッチできなければ、内側(身体で)反応していても、その幸せに気が付けていない(捨ててしまっている)というもったいないことも多い。

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マインドフルネスなどで自分の内側(身体)へ意識を向けることで、キャッチできていなかった反応を味わうことができるようトレーニングもできます。今回のセミナーでは、幸せな記憶を感情と一緒に脳(海馬)に保存することでWell-beingが実現すると主張していました。だからこそ、自分の内側にアンテナを張り、キャッチできる瞬間を自ら増やすことで幸せは実現する。まさに「しあわせはいつもじぶんのこころがきめる」ですね。

また、ここでは幸せな記憶を情動ともに振り返ることが、よりその記憶を強固にすることも述べられていました。CTIコーチングで学ぶ、クライアントが生き生きしていた感情を呼び起こし、味わいいつでも引き出せるように記憶に保存するスキルもまた、脳神経科学的に理に適っているのでしょう。

コーチングでは、クライアントの自発的なWANT/SEEK/TRYを促します。これらはドーパミンを誘導し、高い集中力・学習効果・行動力をもたらすそうです。
コーチングではこの内側の変化に気が付くような関わり合いを創出している、と私は思います。脳神経科学的に言うならば、「ドーパミン(セロトニン/オキシトシン/βエンドルフィン)が出ている自分に出会い、認知するための時間創出」がコーチングであり、自分のWANT/SEEK/TRYを見出しUSEする道を一緒に歩んでいく、そんなことを体現しているなあ、と共感しました。
興味・関心のある周辺から好奇心をはぐくめば、そこに対するアンテナが自動的に立ってくれます。自分の好きなこと、興味のあるものを蔑ろにしてはいけない所以ですね。

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長文でしたが読んでいただきありがとうございました。

コーチングを始めてから、脳科学、心理学、認知科学や応用行動分析科学など幅広い分野を学んでいます。1つの分野の書籍を読み漁れば、次なる分野とつながっていることを発見し、また分野を跨いでしまう…まさに、この名言の通りです。

学べば学ぶほど、自分がどれだけ無知であるか思い知らされる。自分の無知に気づけば気づくほど、より一層学びたくなる ーアルベルト・アインシュタイン

コーチングはクライアント主体であり、クライアントと共に目的(ゴール)を決定し、行動変容を促す営みなので、その時間だけでの効果や目に見える何かがあるわけではありません(物理的な意味で)。

だからこそ、「その時間でどんなものが得られるのか」「何の意味があるのか」と揶揄されやすい時間です。けれど、脳神経科学的根拠からも説明できるように、「自分の内側の変化をキャッチし、それを外側の行動と結び付けていく」という他にはない貴重で、意味のある時間です。

外資系企業のマネジャースキルとして必須スキルであり、イギリスでは78%のビジネスパーソンがマイコーチを有しています。

もっともっと、日本へコーチングを広められたらいいな、との思いで本記事を書きました。

コーチングが必要な人に届きますように。

青砥さん、DancingEinsteinの皆さま、ありがとうございました。最後は、セミナー中に紹介された美智子さまのお言葉で結びます。


幸せな子を育てるより、どんな境遇においても幸せになれる子を育てたい。





あなたが自然体で、心地よく過ごせるのが一番のサポートです💐