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「え、これって新型コロナの予言作品では…」映画の感想『コンテイジョン』

言うまでもないことだが、最初に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生が報じられたのは、2019年の年末のこと。
中国武漢で最初の症例が確認されると、瞬く間に世界中に蔓延するパンデミック事態を引き起こした。

日本では現在5類移行したものの、依然として感染リスクは存在しているままだ。収束もしていない。

僕も今年の夏にとうとう罹患したが、想像した以上の地獄が待っていた。
特に発症から数日後に襲ってきた、喉の内側に粉みじんになったガラスが大量に刺さりまくったような激痛にはほとほと参った。
さいわいにも数日で痛みは引いたが、このままあと2日ほど状況が変わらなければ、死んでしまおうとか思ったほどだった。

感染を題材とした映画としては地味。だけど描写が的確

で、先日。
ネトフリで適当に映画ザッピングをしていると、『コンテイジョン』なる作品に遭遇した。
致死率が高いウイルス性の感染症蔓延の様子と、これに対してCDC(疾病予防管理センター)が血道を上げたワクチン開発を行い、事態鎮静化を目指すというあらすじになっている。

登場人物もそう多くないので、気楽に観ることができる作品だけど、これがウイルス感染症を題材にした作品としては相当にリアル。
それと書き加えておくと、そこまで描写は映画的でなく、淡々と話が進む。
淡々と感染者が増え、淡々と症状が顕在化する登場人物が出て、淡々と成すすべなく事態が悪化する。

人によっては退屈に思えるかもしれないが、実際に起きていることを見るとだらだらとコーラを飲みながら観られるような映画じゃない。

劇中のインターネット上には様々な流言が飛び交い、政府やCDCは嘘をついて国民を騙しているというような、いわゆる陰謀論を提唱してフォロワーを扇動するインフルエンサーみたいな記者崩れが登場するなどが、本作を流し見できなくなる理由の一端(この悪質インフルエンサーはジュード・ロウが演じている!)。
実際に新型コロナ蔓延によって、似たような連中が跋扈したのも記憶に新しい。

ワクチンに色んな毒物が混ざっているだの、マイクロチップが混入しているだの、知識のない層を狙い撃ちにしていた連中、多く見かけたよね。
今もTwitterにそういうのが生き残っているけど、本作でも件のインフルエンサーはブログとTwitterで馬鹿を大いに扇動している。

これが2011年の作品なのか…と戦慄する、感染症の発生原因

『コンテイジョン』における感染症の発生原因は、作品の進行と共に特定しようとする動きも見られるが、結局終盤まで人類がそこに到達することはできない。

が、エンドロールが流れる寸前になって、ある示唆が描かれる。
中国に生息するコウモリがバナナのような木の実を咥えて飛び去り、その実のかけらが豚舎に落着。
落ちてきた実を食った豚が出荷され、その豚が高級レストランで提供される。調理を担当した料理長と握手したのが作品の序盤で亡くなる、最初に発症した人たち数名の中にいた女性であり、ここでそもそもの原因がコウモリであったということが観客にだけ分かるという仕組み。

僕はてっきりこの作品、2019年以降に作られたとばかり思っていたが、確認すると2011年に制作されたことが分かって大慌て。

「え、完全に未来予知してるじゃん」と、そもそも新型コロナウイルス感染症が中国で発生し、原因にはコウモリが関与しているという説があることを思い出したためだ。

実際、この映画の存在は新型コロナ蔓延によって再注目されたようで、出演しているローレンツ・フィッシュバーンらはメディアに登場して手洗いの励行などを呼び掛けたという。

こういう、創作の世界の出来事が有名になるというのは『タイタニック』の例に久しいものではあるが、『コンテイジョン』はまさに数年後に世界が直面する危機的なパンデミックを予言してみせた、稀有な作品といえるだろう。

ちなみに作中における感染プロセスや、感染予防のための取り組みの描写は非常に丁寧に表現されており、コロナ禍を経た私たちの目で見ても抜かりがない。
恐らくしっかりとした考証を行った作品だったのだろう。

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