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試着室でみじめになるのは何故なのか

私を知らない誰かが作った、一枚の洋服が似合わなかった。
ただそれだけで、とてもみじめで恥ずかしい気持ちになることがあります。
衣服は、女性のこころの柔らかい部分に繋がっていると感じます。


かつて私が病院でリハビリの仕事をしていた頃、「絶対にMサイズのコルセットしか着けたくない」という腰痛の女性にお会いしたことがあるんですね。

試着して合わせたら、明らかにLサイズ。Mだとマジックテープが1センチしか重ならないのです。

「コルセットのサイズは、婦人服とは違います。そして身体に合ったものを着けないと、血流を圧迫して却って身体に悪いですよ」と説いても、全く通じませんでした。

Mサイズの幻想

おそらくその方は普段の婦人服では、Mサイズをお召しなのでしょう。ブランドやデザインによってもまちまちなMサイズ。服を作る上での型紙のサイズで、実は基準があってないようなものです。

それでも、その時の女性の気持ちが、私は分からなくもなかったのです。

「Mサイズ」っていう、あるべき身体のカタチが、その方にはあったのだろうと。
それは、その方にはすごく大切なことで、今痛んでいる生身の身体より、よっぽどリアルなんだろうって。

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Mサイズが正解。私の今の身体は間違い。
理想的で、そして強迫的なボディイメージ。
そんな感覚は、果たしてどこから来たのでしょう?

大量生産された洋服と「ふつうのからだ」


それは、日本人が、着物を脱いで、動きやすい洋服を着るようになってからではないでしょうか。

戦後の大量生産のお洋服は、「ふつうのからだ」の枠をも大量生産してきました。
【Mサイズのような平均的な正解があるのだ】と、私たちに大いなる誤解をさせたところがあります。

マジョリティこそ正義、という刷り込みです。

試着室で、お洋服が映えなかったり、スタイルが悪く見えた時。

「私が太っているからだ」「私のスタイルが悪いせいだ」「私が美人でないからだ」

そう考えてしまう女性は多いはず。
「この服の方がおかしいわ」には、なかなかならないですよね。

「似合わない」という現象には、様々な理由があります。しかしそれはとても複雑で、よほど洋服に興味のある人でなければ、言語化することができません。

すると人はどうするか。
わかりやすい理由、すなわち「私のせい」にしてしまいがちです。

さらにはファッションの最高峰であるパリコレや雑誌モデルなどでも、「モデルが服に合わせて不健康なダイエットをすることが推奨されてきた」とくれば、おしゃれになりたい女性たちが、服至上主義になるのは当然ですよね。

「あの人は出来るんだからお前も頑張れ」という謎ジャッジ

そして日本人特有の同調圧力が、普通をさらに私たちに押しつけていると感じます。

ファッションだけに限らず、比べることの難しいはずの身体について、「ふつうのからだ」という感覚は、日本人に広く浸透しているんです。

日本の学校や会社組織のような、軍隊ベースの規律的な集団では、身体とはタフな部品のような扱いを受けます。
皆と同じをモットーに育てられた均一な部品で、強く、弱音を吐かず、決して壊れない事を良しとされています。

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「大丈夫な人もいるのに、こんな事くらいで疲れるお前はおかしい」
「あの人は平気なんだから、お前も耐えられるはずだ」
「妊娠は病気じゃないんだから休むな」

こういった物言いは、珍しくないですよね。こうした周囲の圧力に追い詰められて身体を壊す女性に、私は沢山出会ってきました。

同調圧力が強い日本人は、極めて【身体と心が人それぞれに違う】という感覚に乏しいと思います。スポットライトが当たっている人を基準に当てはめて、人や自分を貶すことのなんと多いことでしょうか。

特に女性は「美しさ」基準の普通と、「労働者」という男性基準の普通との二重の規範で、引き裂かれていますね。

美とこれまでの女性の伝統を重視したヒール靴で、労働者として男性と同じように活動的に動け、というのは、実は矛盾をはらんでいます。

何か問題が起こった時に、理解と知識ではなく、根性で乗り越えさせようとするのが、日本の良くない所だなと思います。

幻想を解く方法

「ふつうのからだ」という檻のようなイメージから解放されるには、身体とじっくり向かい合い、知る事が何よりも大切です。

私が以前やっていた鍼灸の東洋医学も、西洋医学の「成人女性」という大きなくくりから、「ただひとりのあなた」という視点で身体を診ていくのですが、その視点だけで、救われる人が多くいました。

病気ではなくても、調子を崩しやすいパターンや、体力の度合いなど、その人の身体のバランスはそれぞれです。ある人にとっては身体にいい事が、他の人にはとても悪影響であることはよくあることです。

イメージコンサルティングのパーソナルカラー診断や、各種スタイル診断も同じです。

似合う色、肩幅、腰幅、身体の肉付き、肌の質感、身長、さまざまな違いが、その人らしさを作り出しています。その特徴を生かす服、殺す服がある。既製服が似合うかどうかは、その一着との相性です。

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「えっ、私が悪いんじゃなかったんだ!!!」という、「ふつうのからだの呪い」からの解放です。

自分の身体と、洋服との不調和で、自分を責める視点が見事に消えてなくなり、試着室で、落ち込む事もなくなります。

(型紙が合わない、デザインのディテールが合わない、色が合わないんだな。もっとこういうデザインがいいな。素材がいいな。さあ次探そう!)

と、ケロッとしていられるのです。

そして、そのうち、自分のためだけに作られたような、命の祝福のような洋服に出会えるようになるでしょう。堅苦しい理想ではなく、あるがままの自分の美しさを、最大限に表現できる服です。

綺麗になれるのはもちろん大切な事ですが、身体や美に対する広い視点を得る事こそ、救いになり、生きやすさにつながると私は思います。

是非、皆さんの持つ身体への知性を上げて下さい。
解像度が上がるほどに、視野が広がるほどに、美しさが存分に発揮されていきますよ。


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