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水の空の物語 第6章 第19話

……夢の裏には厳しい現実がある。

 また、飛雨の言葉が頭に浮かんだ。風花は息をつめて体を椅子から起こす。

 春ヶ原は本当に夢の世界だ。だから、みんな幸せでいて欲しかったのに。

 風花は机に顔を伏せる。

「もう、ほんとにどうしたのー、風ちゃん」
 ひろあは半泣きで風花の肩を揺すった。

「夢の世界……」

「え?」

「わたし、みんなに幸せでいて欲しかったんだよ。それなのに……」

 ぐずぐずと風花はつぶやく。
 しっかりしなよと、香夜乃の声が飛んだ。

「そうだよ。現実は厳しいよ。私たちはそれを乗り越えてから、幸せになるんだよ」

 春ヶ原の風景がまぶたの裏に浮かぶ。

 なんてきれいなんだろうと、目に涙が浮かんだ。

 鮮やかな花に青々とした木。

 雨のしずくで輝く青々とした葉。

 あのときのように。ぴちゃんと立貴の雨のしずくが目の中に落ちてきた気がした。

 風花のまぶたの中のしずくは、冷たいような青いような、きらきらした美しさだった。



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