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水の空の物語 第4章 第13話

 夏澄と逢うのは一週間振りだった。

 久しぶりに見る夏澄はまぶしくて、風花は目を細める。

「結界を張ったから、こっちに来て」
 夏澄は手招きする。

 周りに人がいないのを確認すると、風花は駆け寄った。

「久しぶりだね、風花」

 土手に並んですわる。青い瞳がまぶしい。
 風花は黙ってうなずいた。

「風花、見て」

 少しの間のあと、夏澄は空を指差した。

「今日は巻層雲が出ているよ。風花と見たくて、春ヶ原から帰ってきたんだよ」
 風花は、驚いて夏澄を見た。

 本当にわざわざ?

 ありがとう……っ。いいたいのに、やはり言葉が出ない。

 風花はぎゅっとひざを握り、空を見上げた。

 薄い、ベールのような雲が、空に幾筋もかかっていた。巻層雲だ。

「きれい……」
「風花も雲は好き?」

「うん。雲は水の塊だもんね。清らかで大好き」

「俺も好き。よかった、喜んでくれて。……風花、霊力の訓練がんばってくれてるんだってね。ありがとう」

「夏澄くんほどじゃないよ。春ヶ原はどうだった?」

「あれから、二回、桃色しろつめ草が萎れたことがあったんだって。原因はまだ分からないよ」

「……ねえ、夏澄くん。一緒に春ヶ原の無事をお願いする?」

「誰に?」
「じゃあ、巻層雲に」

 夏澄はなぜか、とてもうれしそうにわらう。 風花と一緒に、空に向かって手を合わせた。



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