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『花の名前』 中村蓉ダンス公演

2023年1月14日(土)19時開演
@下北沢ハーフムーンホール
¥4000

ダンス公演は普段あまり観つけないし、中村さんの名前も知らなかったけれど、ご贔屓の永島敬三くんがご出演ということで観てまいりましたー。
ハーフムーンホールは風琴工房の『insider-hedge2-』以来かな? けっこう久しぶりなのでスマホの地図を頼りに歩いたが、迷いもせずたどり着けてホッ。ちなみに前回来たのは2016年の夏、6年半も前のことだった。マジか・・・

ダンスについては門外漢で、むっかあーーーし知人が出演するというので観に行って(某大御所さんの公演)、その時は半分以上寝ちゃったのよね。キャラメルボックス大内くんのBLUEシリーズは2、3回観たけど割と楽しんだ記憶。他にも何か観たはずだけど何だっけかな。
そんな人間が見ても大丈夫かな~~と思いつつ。

最初に中村さんが暗転板付きで現れたんだけど、とても不思議な形だった。人間ではなかった。
カラダがねじれてひとつのカタマリみたいに見えた。そのうち不思議な動きをし出して、どうやら電話らしいとわかった。ジーッ、ジーッっとダイヤルを回す音がSEでかかったから多分そうなんだろう。
なんじゃこりゃ??とメゲそうになったけど、少しして永島くんが登場し、朗読を始めたのでホッとした。

この公演は『花の名前』という向田邦子の掌編を元にしてあるという。
主人公の常子は見合いの相手が花の名を知らぬ無粋な男で失望するが、母親は(自分の夫の様に)器用で物知りな男に見下されるより良いと言う。常子は「花を習ってくれ、そして自分に花の名を教えてくれ」と相手に乞われ結婚し、その通りに花の名を、野菜や魚、犬の名まで教えた。
25年後、夫の愛人から電話があり呼び出される。女はただ自分の存在を知らしめたかったと言う。帰宅した夫を詰問すると「終わったことだ」と言い捨て部屋へ。その背中は「それがどうした」と語っていた。
「女の物差しは25年変わらないが、男の目盛りは大きくなった」
花の名を教えていた常子は変わらないのに、立場は逆転して夫は遠いところへ行ってしまった。

具体的なマイムはあまりなく、踊りの振り付け?と朗読で話が進んでいく。朗読も部分的なので、ざっくりとした話の筋がなんとなく掴めてるかな、という感じ。言葉では説明しにくいが、何と言うか抽象画を見ているみたいな感覚だった。
そして意外にもコミカルで笑えるようなシーンもけっこうあった。

けど。夫と出会う場面、これは見合いなのか判らないが、夫役のダンサーさんとの掛け合い(と言うのは変か?)がすごく不快というか、気持ち悪くて。見知らぬ男が擦り寄ってくるのを、痴漢なのか気のせいなのか判断つかなくて、電車の中で静かに繰り広げられる攻防みたいだった。絶対痴漢だと思って見てたのに、夫だったので「マジか?!」とココロの中で戦慄した。

男の目盛りが大きくなるってどういうことだろう。人間的に大きくなるということ? ではないよね。不倫をしているなら人道的に問題がある。夫は常子のことを「うちの先生」と揶揄していたという件(くだり)も噴飯ものだ。「終わったことだ」じゃねーよ!!(私が女で夫もいるから常子寄りに感じるのか??)
小説を読んでいないので判らないけど、そもそも常子は夫のことをあまり好きではなかったのかもしれないな。好きではなくとも結婚生活は送れる。セックスもできる。
馬鹿な男に教養を垂れていたつもりが、知識を得て出世もした男に逆に見下されていたという、薄ら寒いオチなのか・・・?

たぶんよく判ってないまま見てたけど、人間のカラダと動きを見てるだけでもなかなか面白かった。中村さんのカラダが鞭の様にしなやかで強靭で美しかったなあ。首筋とふくらはぎから足首までが惚れ惚れするほどいいカタチ。デッサンしたい。
そのうち向田邦子の原作も読んでみたい。(電話に座布団敷くのが懐かしい世代)

※『花の名前』は『思い出トランプ』という文庫の中に収録されているようです。



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