【※動画準備中】『100m 9秒台メソッド "ショッピングカートドリル" 基礎編』
※現在、教材動画を撮影・編集中のため、未完成の状態となります。
第1章 はじめに
1-1 皆はまだまだ速くなれる!!
皆さん、こんにちは!!
Non-Flying Track Club 陸上コーチの水谷ゆうきです。
今回は『100m 9秒台メソッド "ショッピングカートドリル"』というタイトルで、Non-Flying TCの走り方指導の内容すべてを解説していきます。
"9秒台メソッド"という攻めたタイトルにしてしまいましたが、これは半分冗談で半分本気です。もしかすると7割くらい本気かもしれません。
というのも、もともと自分は現役時代チームで1番フォームが汚かったんですね。で、"どうやったら良い走りができるんだろう?そもそも良い走りってなんなんだろう?"といった個人的な疑問から、引退後も趣味で走りの探求を続けてきたんです。
そして引退から6年以上経った今、ようやく自分で納得のいく理論にたどり着いたんですね。
で、"もし100m 10秒5レベルの選手とパートナーを組めたら9秒台を目指せるかも!"という確信に近い予感を持っているんです。
それくらい自信や納得感のあるメソッドを今からご説明していきます!
1-2 理想の走りとは?
まず、私の考える理想の走りについてご説明していきますね。
"重心移動"と"体重移動"という言葉は、皆さん聞いたことがありますか?
自分は重心移動という言葉は何となく聞いたことが合った程度で、体重移動という言葉は最近まで聞いたこともありませんでした。
で、調べてみたら以下のような内容でした。
【重心移動】=良い走り
人間の重心はへその少し下にある丹田と、胸の真ん中あたりの2つあり、この重心を動きたい方に素早く傾けることが必要になってくると。そしてこれを重心移動と言います。"腰を運ぶ"という表現をされる陸上コーチの方もいらっしゃいますね。
特にへその下にある重心は脚の間に挟まって乗っかっていて、その丹田を前に進めていければ効率よく走ることができるんですね。
【体重移動】=悪い走り
逆に言えば、腕や脚を一生懸命動かしても重心が進んでいなければ速く走れないし疲れちゃうんですね。脚を前に出して接地してから体全体を前に進めようとすることを、"体重移動"と言うそうです。
で、ほとんどの選手がその走りをしているんです。例えば100m 10"5で走る選手もほとんど体重移動をしていると個人的には感じています。
つまり、腕や脚を動かす体重移動ではなく、おへその下にある丹田を進ませる重心移動で走ろう!ということですね。
個人的には、"丹田さえ進んでいればどんな汚い動きでも理想の走り!逆に、どんなにきれいな走りでも丹田が進んでいなければ悪い走り!"と考えています。
で、いざ"重心を進ませる" "腰を運ぶ"といわれて説明をされても、実際にはその感覚っていまいち掴みづらいんですね。
そこで7年ほど考え抜いて2020年の12月に閃いた理論こそが、"丹田にショッピングカートをつけるイメージで走れば一発で重心移動を掴める!"という『ショッピングカートドリル』になります。
1-3 理想の走りが身につく"ショッピングカートドリル"
今述べたように、ショッピングカート理論を一言でまとめると、"腰にショッピングカートをつけるイメージを持ち、そのカートを進ませるように走れば、かんたんに速く走れるよ"といったものです。
しかもメリットはそれだけじゃなく、
・一次加速/二次加速/等速減速局面の走りの違いが明確に分かる
・自分の課題や伸びしろ、やるべきことが分かるから伸び続ける
・筋力トレーニングを取り入れる意味も明確に分かる
・自分の走りだけに集中できるから緊張で力を発揮できないことが減る
など、いいことづくめだと感じています。
何より、早く走れる確信が持てると、走ることの本来の楽しさを取り戻すことができるので、
・勝ち負けのプレッシャーで競技が苦しい
・最近伸び悩んでいて陸上がつまらない
と思い悩む、中・上級者の選手にも試してもらえたらと思っています。
注意点としては、100mを走る中でも、一次加速局面・二次加速局面・等速減速局面の3つの局面ごとに、ショッピングカートを進ませる動きが変わるということです。
なので第2章からは、それぞれの局面の走りの解説をしていきますね。
-第一章のまとめ-
【理想の走りとは?】
・良い走りは、丹田を進ませて走る重心移動
悪い走りは、腕/脚を動かして走る体重移動
【ショッピングカートドリルとは?】
・ショッピングカートを丹田に付けて走る
イメージをすれば、重心移動が身につく。
ただし、走りの局面ごとに動きが異なる。
第2章 一次加速局面
では早速一次加速局面の走りから解説していきます。
一次加速局面は先ほど少し触れたように、スピードが出てない状態から一気に重心を加速させる技術が必要となる局面です。
一次加速局面は100mでいうところの0~30mあたりをいいます。
速度が0の状態から一気に100に近づけていく局面で、30m地点でおよそトップスピードの90%が出るといわれています。
爆発的な加速が必要になるので、結構ここで無理に力を使ってしまう選手が多いのですが、うちのチームではここで頑張りすぎてガソリンを使い果たしてしまうことを防ぐため"効率の良さ"をテーマにしています。
2-1 一次加速のイメージ
で、実際の走りのイメージとしては、めちゃくちゃ重いショッピングカートを腰に当てるんですね。少し前に体重をかけてもビクともしないような重さです。その止まっていて重いショッピングカートを一気に軽くしていくイメージで走ります。
"軽くしていく"というのは、友人が乗った自転車を後ろから押して走ることで例えると、走り出しは重く感じますがスピードに乗ってから指1本触れるだけでかんたんに押せるようになるあの感覚と同じです。
このように、一次加速は"速度を0から100に上げていく"局面ですが、"重さを100から0に減らしていく"というイメージで走るようにしたら、うちの選手は伸びました。
2-2 一次加速のポイント
で、具体的にどんな動きかというと、スクワットや垂直跳びのように股関節を屈曲&伸展によって力を出していきます。
体の上から下に向けて圧をかけて潰して、その反発で弾むイメージですね。
バスケットボールのドリブルのイメージでも、スプリング(バネ)でも構いません。
そしてそれをスターティングブロックの角度で行うと。
これが"重いものを持ち上げて軽くする"のに最適な動きなんです。
で、よくない走りの1つ目が前屈の走りです。
自ら膝を伸ばして接地してしまって、地面への圧が少なくなってしまう走りですね。さらに接地した後にひっかくような走りになり、"体を縦に潰して伸ばす"という動きができません。
2つ目が中腰の走りです。
スターティングブロックの角度に接地せずに、体より前か真下に接地してしまう走りです。こちらもひっかくような走りになり、"体を縦に潰して伸ばす"という動きができません。
そういったところに注意をしながら、ドリルに入っていきましょう!
2-3 一次加速のドリル
一次加速の走りを身につけるには、"スクワットジャンプ→スクワット姿勢のままケンケン→走る"といった流れでドリルをするだけです。
なぜ最初に、両足が地面に着いている&前ではなく上に跳ぶスクワットジャンプをするかというと・・・・(ページ末尾の補足①へ)
◉スクワットジャンプ
(寝た状態or座った状態でスクワット動作)
→スクワットジャンプ上方向 (静止→連続) (両脚→片脚→2step→左右交互)
→スクワットジャンプ高く前 (静止→連続) (両脚→片脚→2step→左右交互)
→スクワットジャンプ前方向 (静止→連続) (両脚→片脚→2step→左右交互)
どれもチューブを使うとショッピングカートの意識が掴みやすいです。
なぜチューブかというと・・・・(ページ末尾の補足②へ)
最初のドリルのスクワットジャンプがメインになります。
これは洛南高校や東洋大学で桐生選手がやっているもので、膝や股関節を曲げ伸ばしせずに、しゃがんだ姿勢を崩さず、そのままの形で跳ぶことがポイントです。
最初は難しいと思いますが、コツは、お腹が上に伸びたり脚がおへそ周りから離れたりしないよう、親指をお腹の方に、他の指を前ももの方につけ、どちらの指からも体が離れないようにジャンプすると感覚がつかみやすいかもしれません。
これをやるだけで相当腹圧が高まるため、体幹がヘトヘトになるかもしれません。
(先に寝た状態でのスクワット動作で、チューブなどで負荷をかけ、クックックッと丹田周辺を締める動作を入れておくとスムーズですし、脚をケガをしている選手でも安心して行えます。)
また、スクワットジャンプの際も"ショッピングカートを進ませるイメージ"持ちたいので、その場でスクワットジャンプをするときは、壁を垂直に走らせるように。一歩前に進むときは上り坂を走らせるように。連続で前に進むときは平たんな道を走らせるようにやっています。
で、落ちるときのコツは"自ら接地しに行かず、落ちるのを待つ"です。
跳んでいる間に膝が伸びて足が落ちてしまわないように、先ほどの"腹圧"をしっかり高めてあげること。
そして、足裏をずっと地面に向けるように意識するとやりやすいです。
上に跳ぶジャンプができたらミニハードルなどを置いて、前に跳んでみましょう。
上方向・高く前のときは、空中でフワッと浮く感覚があると良いです。チームではそれを"フワッと感"とか"フワッ残し"と言っています。
2stepというのは、左脚→左脚→右脚→右脚と左右の脚を2歩ずつ接地します。それもできたら、ケンケンのように連続でポンッポンッポンッとリズムよく前に跳んでみましょう。
2stepのケンケンあたりから、脚を切り替えるときに"自分から接地しにいかない"という意識が薄れてしまい、自ら膝を伸ばして接地しに行ってしまうので注意です。
自ら接地しに行くと、"タッタッタッタッ”というリズムの空中のためが消え、"タタタタタタ"と"ッ"がなくなっていきますので気づけると思います。
また、高く前・前方向に進むときは、接地時に膝を揃えることを意識しましょう。腰よりも先に脚だけを前に出す動きになりやすいので注意です。
走る際も、"膝を揃える!" "膝を揃える姿勢をつくるだけ!"と心の中で呟きながら走るとスムーズに走れます。
特にスタートの一歩目が脚が前に出やすいです。1歩目の接地が潰れやすいのですが、"ランジジャンプ→片脚ケンケン2回"というドリルを繰り返すと、膝を揃える感覚が掴めるかと思います。
どうしても静止状態からのスタートが苦手な選手は、文章だと分かりづらいかと思いますが、"1歩目を着いてからスタートする"くらいのイメージで出スタートを切るとスムーズかと思います。
私は最初の飛び出しは無意識にトンッと出て、1歩目の接地から"1・2・3"と心の中でカウントするくらい、1歩目の飛び出しには意識を置いていません。
これらを継続していけば、一次加速の走り "重さを100から0に減らしていく技術"が身に付きます。
-第二章のまとめ-
【一次加速のイメージ】
・重いショッピングカートを軽くしていく
【一次加速のポイント】
・良い動きは、しゃがんだまま地面を踏む走り
悪い動きは、前屈や中腰で地面を蹴る走り
【一次加速のドリル】
・スクワットジャンプ→しゃがみケンケン→走る
第3章 二次加速局面
二次加速局面はスピードが出ている状態からさらに重心を加速させる技術が必要となる局面です。
二次加速局面は100mでいうところの30~60mあたりをいいます。
速度が90の状態から100に到達させる局面で、トップスピードを出現させる走りです。
ここのスキルは、"100m 10秒5で走る男子選手でも出来ていないな"と個人的には感じています。
3-1 二次加速のイメージ
実際の走りのイメージとしては、二次加速局面では腰に当てたショッピングカートが高速で前に進んでるんですね。
で、先ほどの自転車の例えをすると、指1本触れるだけで押せるほど軽くなっていると。その重さが0になった軽いカートを1歩ごとにさらに加速させていくんです。
で、その高速で動く軽いショッピングカートを1歩ごとにさらに加速させるので、お尻で地面をキャッチする乗り込みがしっかりできていないと、脚が地面を捉えきれず、抜けるように後ろへ流れてしまい、転びそうになってしまいます。
3-2 二次加速のポイント
そのため、あらかじめ脚を伸ばした状態を作っておき、固定してまま乗り込んでいくことが重要となります。
NGな走りは、空き缶を踏み潰しにいくように能動的に膝を伸ばす動作です。
日本には"空き缶を踏み潰すように"という指導をしているコーチが多くみられますので、注意が必要です。
またその走りが身につきやすい、"ももあげ" "ミニハードル走"などはうちのチームでは、ある時期から一切やらないようにしました。
そういったところに注意をしながら、ドリルに入っていきましょう!
3-3 二次加速のドリル
二次加速の走りを身につけるには、"リバウンドジャンプ→ケンケン等→走る"といった流れでドリルをするだけです。
◉リバウンドジャンプ
(→リズムジャンプ・ケンケン・ストレートレッグに移行)
寝た状態でリバウンドジャンプ動作 (ケンケン)
→リバウンドジャンプその場 (静止→連続) (片脚→2step→左右交互)
→リバウンドジャンプ1歩前 (助走なし→助走あり)
→リバウンドジャンプ連続前 (静止→連続) (片脚→2step→左右交互)
二次加速のドリルでは、リバウンドジャンプがメインになります。
一次加速のスクワット姿勢とは違い、膝が伸びているのが特徴ですね。
そのジャンプを片脚で行い前に進むので、ストレートレッグ・リズムジャンプ・ケンケンのような動作に移行していきます。
片脚立ちの際は、上げた脚の膝をどこまで曲げるかはその人の1番力が出る角度で大丈夫です。私は膝を曲げるほうが合っているので、すべてのドリルがストレートレッグというよりもリズムジャンプのようになります。
指導の経験上、不器用だけどパワーがあるという選手はストレートレッグがハマるようです。"海外の9秒台の選手でスキップもバウンディングもできない選手がいる"と耳にしたことがありますが、"ストレートレッグで腰を前に進ませる能力が高ければ100mは速く走れる"という話だと個人的に考えています。"力で押し切れちゃう"といった感じでしょうか。
逆に器用で走り高跳びの踏切のような動作ができる選手はリズムジャンプが合うと思います。前方向に進んできて、その力を上方向に変換してジャンプする"ストップ&ジャンプ"の能力になるので、バスケットボールのジャンプシュートやレイアップシュート、バレーボールのアタックなどを習得している人におすすめです。
ではドリルに入りましょう。
まずは寝た状態でチューブなどで負荷をかけ、クックックッと丹田周辺を締める動作を入れておくとスムーズです。
脚を伸ばしたまま、壁を思いっきり蹴るような動作です。
そのあと、立ってみましょう。そこで先ほどのスクワットジャンプと同様、丹田を締めながら、お尻で着地の衝撃をキャッチするように跳んでみましょう。"スクワットジャンプと同じところに接地の衝撃が来る"と感じるとOKです。
それができたら1歩だけ大きく前に跳んでみましょう。
ケンケン・ストレートレッグ・リズムジャンプのどの形でも大丈夫です。
コツとなるポイントは、カートを前に進めるために、"地面を後方に移動させるような圧力"を加えることです。
そのためには、"瞬間的にトレッドミル(ルームランナー)の地面を加速させて故障させる"というイメージがうちの選手には伝わりやすかったです。
"1歩でどれだけ腰につけたショッピングカートを進ませるか"が重要になりまう。なので、"思っているより3倍の距離を1歩で進ませる"というイメージで、頭の中でカートが進む音の"シャーーーーッ"という音をどれだけ伸ばせるか意識しながら取り組むと腰を進ませる感覚を掴みやすいと思います。"シャッ"という短い音はNGです。
接地時間は短い方がいいという指導もありますが、"接地時間は短くなっちゃうだけで、可能な限り長い方がいい"と個人的には考えていて、その指導に変えてからの方が選手が伸びています。
また、良い時の接地音は"ドッ"や"ダッ"というような重いアクセントになります。
強制的に"二次加速の丹田を進ませる感覚"を掴むには、腰にチューブを巻いてパートナーに負荷をかけてもらうと良いです。
チューブが当たっている丹田に全神経を集中させ、そこだけを進ませる意識をします。つまり、腕や脚の動きは一切考えないことが重要です。
ただし、ストレートレッグの場合のみ、脚の動きがあまりに小さいと進まないので、正面にいる人に自分の靴底を見せるような動きを動き初めに作っておくといいと思います。月間陸上競技の公式YouTubeで兒玉選手のストレートレッグのドリルを見られるのですが、1歩ごとの進みがとんでもないので参考にしてみてください。
リズムジャンプから走りに繋げる際には、最初は上や斜め上に跳んで、徐々に水平方向に跳ぶようにすると感覚を掴みやすいです。斜め上に跳ぶ際は、ショッピングカートを上り坂を進ませるように跳び、徐々に平たんな道になっていくように移行すると、走りに繋げやすいです。
ケンケンから走りに繋げる場合は、左脚→左脚→右脚→右脚と左右の脚を2歩ずつ接地する2stepから流しに入っていくとスムーズかと思います。
ストレートレッグ・リズムジャンプ・ケンケンのいずれも、走りに繋げる際に、頭の中の"シャーーーッシャーーーッシャーーーッシャーーーッ"というカートが進む音の、長さもリズムも変えずに走り出すことが重要です。
ほとんどの選手が走りになった瞬間に"シャッシャッシャッシャッ"とリズムが変わってしまいますので注意です。
これらを継続していけば、二次加速の走り "重さが0になったカートをさらに加速させる技術"が身に付きます。
-第三章のまとめ-
【二次加速のイメージ】
・軽いショッピングカートを一歩一歩加速させていく
【二次加速のポイント】
・良い動きは、先に膝を伸ばして地面を噛む走り
悪い動きは、膝を伸ばしながら地面を踏む走り
【二次加速のドリル】
・リバウンドジャンプ→ケンケン等→走る
第4章 等速減速局面
等速減速局面は、トップスピードが出ている状態で重心を減速させない技術が必要となる局面です。
100mではあまりここの練習をする必要はないかと思いますが、200m以上の選手はほぼここの走りがメインとなります。
4-1 等速減速のイメージ
走りのイメージは、とにかくショッピングカートについていくことです。
この局面では、自分出せるトップスピードが出た状態ですので、それ以上に加速させようとはしません。
加速させようとしないので、"頑張らない局面"といってもいいでしょう。
この走りが完成した選手は、"頑張っていないのに、ラストで皆が勝手に失速していく"と言っています。
ここでは"頑張らなければ頑張らない方がいい"というのがキーワードかもしれません。
4-2 等速減速のポイント
で、具体的にどんな動きかというと、腰についたショッピングカートをブラさないように走ることが重要です。
丹田を前方向の1°にだけに進めるようにして、前方向以外の359°にぶらさないことです。たったそれだけになります。
4-3 等速減速のドリル
そして、カートを359°にブラさないためには、”腹圧を高める"ということのみが重要となります。
◉腹圧を高める
寝た状態で負荷ももあげ
→(立った状態で負荷もも上げ)
→カートを押すフリをしながら走る
腹圧を強制的に高めるために、まずは仰向けに寝て、両手を前に伸ばしてスティックなどを乗せ、まずはそのまま勢いよくももあげをしてみてください。
そのときにスティックがぶれると思いますが、そのスティックのブレが腹圧が落ちている証拠です。
で、無理やり腹圧を高めるために、パートナーの人にスティックを掴んでもらい、グーッと全力で体重をかけてみてもらってください。体感として40~50kgくらいの負荷がかかる感覚です。
そして負荷がかかったまま、再びもも上げをしてみてください。
すると、さっきよりピッチをコントロールする感覚が自然と掴めると思います。脚の動きの力強さやキレが増していればOKです。
この"腹圧だけでピッチをコントロールする感覚"を等速減速局面で出現させるだけでOKです。
そのためには、立った状態でもスティックを持ってパートナーの人に前から負荷をかけてもらうと良いです。ももあげが難しければ、2stepのももあげから始めるとやりやすいです。
脚を入れ替える際に腹部が上に逃げて反っていかないように、丹田周辺をギューッと絞って下に押さえつけてください。
で、立った状態でも腹圧が高まったら、流しをしてみましょう。
流しをする際は、手を固定して"カートの持ち手に軽く触れるフリ"を実際にするといいと思います。
このとき、両手は丹田の前に固定し、へそより上に逃げて行かないように注意です。また手首を腰骨に当てるように固定し、肘が前に逃げていかないように注意です。
腹圧が落ちると腰が反ったり、上体が左右にブレて、カートに触れたふりをしている両手がブレまくるのが自分で分かると思います。
これらを継続していけば、等速減速局面の走り "トップスピードが出ているカートを減速させない技術"が身に付きます。
-第四章のまとめ-
【等速減速のイメージ】
・ショッピングカートを減速させずついていくだけ
【等速減速のポイント】
・良い動きは、体幹がブレずカートが1°のみに進む
悪い動きは、体幹がブレてカートが359°にブレる
【等速減速のドリル】
・走りながら腹圧を高めるだけ
おわりに
本書はいかがだったでしょうか。
何度もドリルを試して感覚を掴んでくると、"意外と脚や腕を積極的に動かさないなぁ"ということが分かってくると思います。と同時に、"脚を動かさずに待つって、逆に体幹がヘトヘトになってキツイなぁ"と気づいたりします。
最後に本書を書いた理由をお話しさせていただきますね。
冒頭に書いた通り、私は大学時代にチームで1番フォームが汚かったんです。で、そのせいでケガも多かったし、"ある程度以上のレベルには行けないな"という諦めを抱えたまま競技をしていて。
もちろん何度もフォームを直そうとして勉強したのですが、今回扱ったような"重心移動" "腹圧" ”乗り込み"だったり、他には"前さばき” "腰を高く" "弾むように" "脚を流さない"といった感覚的な指導が多かったんですね。
で、それを理解できない自分のことを"センスがないなぁ"と責めていたんですが、よくよく考えてみたら、自分の周りでその言葉を使っている人たちも、あまり理解せずにしゃべっていたんですね。理解しなくてもできちゃう天才たちがコーチをしていたり、もしくは感覚的なキーワードに逃げてしまえば、本質を理解していなくても指導者として立派に見えますので。笑
なので、天才にしか到達できない感覚を分かりやすく説明した指導を自分で作ってしまおうと思い立って完成したのがこのショッピングカートドリルになります。
次回の投稿で"筋力トレーニング編"もまとめるのですが、ショッピングカートのイメージを使うと、この世のすべてトレーニングがなんのためにあるか説明もできるようになるんですよ。
今の世の中はインターネットの発達によって世界中のトレーニングを知ることができるというメリットがある反面、"いろんなものに目移りしてしまってどれをやったらいいか分からなくなってしまう"というデメリットもあります。
そこでショッピングカートドリルの理論を活用してもらえれば、"自分はここの能力を伸ばしたい。で、そのためのトレーニングはこれだなぁ"というのが分かるようになったりして便利なんです。
なのでぜひ次回の投稿も楽しみにしていてください!
ではまた次回☆
補足①
【最初に"走らないドリル"をする理由】
= 走ること自体が複雑すぎるから!
➊重力がある中で前方向へと重心移動する技術
➋左右の脚の片方だけ接地し重心移動する技術
➌左右の脚を交互に接地させ重心移動する技術
➍両脚が浮くジャンプをして重心移動する技術
➎1歩だけでなく50歩連続で重心移動する技術
といったように、二足歩行の人間が地球で走るには、ものすごく複雑な要素が絡み合うんですね。
なので第2章から説明するドリルでは、
1⃣寝た状態や座った状態で正しい動作
2⃣上方向→高く前→前方向の順番で重心移動
3⃣1回ごと止まる→連続の順番で重心移動
4⃣両脚→片脚→左右交互の順番で重心移動
といった風に、まずは安定する止まった状態や両足が接地した状態からドリルをはじめ、徐々に前に進むドリルへと繋げていきます。
補足②
【ドリルにチューブを用いる理由】
=チューブを使うとショッピングカートの意識が掴みやすいから
・理由➊ 丹田にチューブで負荷をかけることで、ショッピングカートを丹田に当てている感覚を掴めるため。
・理由➋ 引っ張ってもらうことで前にコケる心配がいらなくなり、思い切って前傾姿勢を作れるため。
※注意①チューブあり⇒チューブなしを繰り返すといいと思います
※注意②丹田が進む方向と真逆の向きに負荷をかけることが重要です
※注意③手首を腰骨に当てて固定し、上や前に動かないように注意します
※注意④負荷走の際は、チューブを引っ張る側が少しずつ負荷を軽くしていくテクニックが非常に重要になります
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