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ハッシュタグ

 SNS戦国時代、あなたは好きだろうか「#」。ハッシュタグ、大量のインターネットユーザーを、また大量の「まとまり」に分別してくれる不思議なマークだ。好きな芸能人の名前や映画の名前、番組の名前につけて検索しやすくすることもできる。
誰かに自分を見つけてもらうためのマークだが、このハッシュタグのおかげで、皆が同じように見える。流行りに向かって猛進する女子高生のファッションみたいに、あるときは人の個性を奪う。自分でハッシュタグに付けるワードを考えて、差別化を図る人たちもいる。
#人間 #女 #日本人 。産まれた時、生を受けたときから、私たちには無数のタグが括りつけられている。さらに、 #高卒 #フリーター #音楽好き といった具合に続く。
自我が芽生えてなんやかんやあって、コンプレックスやらを形成する。埋め込まれた肩書きはダイヤモンドみたい。すれて、すれて、黒く輝く。
しがらみの首を絞めたその手で、女の子はグレて、 #家出少女 になって、 #今夜泊めてくれる人募集 するのかもしれない。 #自分磨き のために、 #資格取得 に励むのかもしれない。殺めたはずのしがらみはきっといつでも取り出せる引き出しのなかで休息しているから、あなたを表す言葉は増え続ける。
 いつか死んだとき、その棺桶のなかはハッシュタグだらけになって、火葬場で焼かれて、骨を片してくれた人たちの体に纏わりついて、他人のハッシュタグになって、なかなか死に切れないのかもしれなかった。

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