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小説

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自筆の小説(散文)
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2019年7月の記事一覧

君漂うことなかれ

陽の光に目をこすると、そこには朝のような空間があった。その空間は私を待っていたのかもし…

相川 実
5年前
3

ドライアイス

 梅雨が明けて、嘘みたいな快晴。嘘みたいにさっと洗濯物が乾く。そうだどうせ、嘘なのだろう…

相川 実
5年前

勿忘草

 曖昧なイエスを都合よく受け入れる人は不確かなノーもイエスに置き換える。そうやって自分に…

相川 実
5年前
3

薄気味

君がページを捲る。その度にきっと誰かが一人この世界から抜け落ちる。君の心や体が少しだけ…

相川 実
5年前
1

summer nude

「そういえば夏、来ないね」 綾子は梅雨空を見上げながら言った。 「そうね。どこを彷徨っ…

相川 実
5年前
4

婿養子

歩いていると不意に後ろから声を掛けられた。 「お嬢さん、ティッシュ落としましたよ。」 …

相川 実
5年前
4

Alone more alone.

 軽率に誰かになりたいと思うくらいなら死んだほうがマシなのに、それでも憧れに焦がれずにいられないのは何故なのだろう。なれないからなりたくて、なりたくてもなれなくて、時間は過ぎていく。背中を見てもその広さは増していくばかりだ。いつまでも届かないから、追いかけることもしたくない。見ているだけでいい。それなのにたまに無性に、触れてみたいと思う。でも、触れると存在が確信になる。認めてしまうと不甲斐なさで押し潰されてしまうから、だから一生わからなくていい。わからなくていい。そう、わから

Q

花の蜜を吸って大きくなる。誰かの吐いた息を吸ってね。そうやって成長するの。気持ち悪いで…

相川 実
5年前
1

トゥービー

歩いていた。ふと見下げると、葉っぱが落ちていた。葉は踏まれて雨を浴びて、泣くことも諦め…

相川 実
5年前

7:11

「おはよう」 「おはよう」 「夢の中でね、夜に会ったわ」 「夜に?」 「そう。夜に。」「…

相川 実
5年前

勾玉

「今しか歌えない歌を歌おう。今しか書けない詞を書こう。今だから言えることを言おう。今日の…

相川 実
5年前
2

後と先

「愛してる、結婚して欲しい」 「うん。ねぇ、その先は?」 「その先?」 「まさかあなた、…

相川 実
5年前

仮死実験

 一体どうすればいいのだろう。どうすればよかったのだろう。あの日彼女をちゃんと駅まで送っ…

相川 実
5年前
1

浅はかな会話をまたひとつ。ぽつり重ねては共に歳を取っていけたらいいね。そう思って笑いかけた宇宙も、夜が明けると消えてしまう。ここも数ある宇宙のうちのひとつ、そのなかの小さな小さなどこか。そう思うと悩むのもアホらしい?自分のためだけの宇宙なのに? でもそうね、私が生きた証なんてなくてもいいと思うわ。私のいない宇宙に価値なんてない。だから朝が来たらまた消えて。