勾玉

「今しか歌えない歌を歌おう。今しか書けない詞を書こう。今だから言えることを言おう。今日のために今日を生きよう」

 そう歌ったのは誰だったかしら。私の目に焼きついて焦げて真っ黒になって、いつからか見えなくなった君。私、君のために昨日を話すわ。

「愛がわからなければ恋を歌おう。恋を知らないなら愛を。どちらもわからなくても哀憂うことなんてない。わからないを声高に歌え」

 愛してたのは君の声。顔も名前も道すがら。恋しかったのは靴のせい。かかとを踏まれてへこたれた、君の汚かったスニーカーのせい。きっとそうよ。

「言えなかったことも今」

そういえば、おめでとう。さようなら。

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