ドライアイス

 梅雨が明けて、嘘みたいな快晴。嘘みたいにさっと洗濯物が乾く。そうだどうせ、嘘なのだろう。さっき干した洗濯物がもう乾くなんてそんな都合のいい話があるのだろうか。
そもそも私が洗濯さえしなければ乾くことのなかった服なのだから、一瞬で乾いたとしても結局無意味だと、意味の分からないままに思った。大体、自分で好き好んで濡らした衣類が乾かないからと腹を立てている生活自体が烏滸がましい。と、原点回帰を履き違えて悲観する虫。生かす価値も殺す理由もないから誰にも相手になんてされない。それを望んだのも自分自身だから。だから最低限の一大欲求だけが満たされればそれもいいとした。飢えることだけなければ、充分なのだと思えた。外部に何かを求めるから失望するに過ぎないのなら、絶望を生きていればいい。そこに少しの光が見えただけで、それは神にも見えるだろう。そんなことを繰り返していれば、いずれ真っ当にいなくなれる。こうして孤を極めるような口を利いていても真っ当なんて言葉を使っているうちは、けったいな渦からは抜け出せないんだけどね。

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