薄気味

 君がページを捲る。その度にきっと誰かが一人この世界から抜け落ちる。君の心や体が少しだけ豊かになったバランスをとるために。しかし絶対にバレないように。君はそこそこの読書家だから、だからほら、今日もどこかで誰かがぽつり消えていくのだろう。でもそれが悪いことだとは思わない。僕にとっては、君が豊かになる以上の幸福なんて考えようもないから。でももしこのことがバレたら世界は君の敵になるから、僕も世界の敵になってしまうね。

 君が笑う度に僕の胸は痛む。恋とか愛とかその辺の言葉じゃ足りないくらいに。ドキドキじゃなくて、ヒリヒリと痛む。いつからだろう。もうずっと前から、思い出せないくらい前から、世界は君を中心にまわっている。

 僕が君を愛してしまう前に、どうか僕を消して欲しい。空に願えど土に還れど、君にとらわれて僕は癒えない。

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