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「可能な限りでいいよ」 そう言って全てを押し付けた。私の不可能を決めるのは申し付けたあな…
やっと見つけた君を離したくないなんてエゴだ。愛に形はないと聞いたがあれだってどうせ嘘だ…
「音は死ぬ直前まで聞こえてるって言うけど、連れて行けないんじゃ意味ないわね」 「あの世に…
友達の目を盗んで、私はいつも手紙を書いていた。でもその手紙は誰に渡すものでもない。た…
私達は心臓の位置を知るために嘘をついた。嘘をつくとドキドキして住処を教えてくれるから、…
意味なんてないのに意味にしようとしていた。あの頃の僕らは必死で、走れば辿り着けると盲目…
「不可能か可能かで言ったら可能だけど、出来なくてもいいことってあると思うの」 「何の話?」 「なんでもないわ、あなたっていつも」「デリカシーがないわよね」 「君がデリケートゾーンなだけだろ」 「ほら、そういうところ」 「これでいい?」 「ほら、そういうところよ」 「でも?」 「でも?」 「嫌いじゃないでしょ?」 「好きでもないけどね」 「嘘」 「本当」 「好き」 「ダイキライ」
「相変わらずだね」 そう言われたけど、変わらないほど僕の相をお前は知っていなかったよな。…
大きな栗を拾った。夕暮れ時に少し遠くのコンビニまで足を延ばしていたその往路に、大きな栗…
秋の日の記憶の中の少女。あの子はどこの誰だったろう。あれは初恋と呼ぶには淡すぎて、ただ…
あなたは果てしない果たしての果てにいつもいる。果たしたことなんてないのに。とっても臆病…
土に埋めたはずの彼の声が耳元で聞こえている気がする。確かにサヨナラしたはずだった。なの…
「目を閉じたときにやけに鮮明に聞こえるこの音が本当に実在して、君にも聴かせられたらよか…
わたしはその変態小説に、顔を掻いたせいで微かに性分泌液のような臭いのする指を擦り付けた。作者に移した私の臭いが次の新刊のサイン会で私に返ってくるまでの間に、一体私に幾つの幸福が訪れるだろう。 もし、あの小説に出てくるような女が私の生活に介入してきたらと、考えただけでも悍ましい。私の今以上の不幸は保証される。そしてそれと同時に、つまらないこの日々に面白みが発生するのだと、妄想に口元が緩む。