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小説

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自筆の小説(散文)
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2019年5月の記事一覧

忘れたいあなたを忘れないように誰かが願う夜

あなたに伝えたかったこと、それは、命の大切さでも世界の尊さでもなく、私たちには世界を変…

相川 実
5年前
3

雨に冠

雨音を頼りに、目を瞑って横になると、雨を浴びているような感覚になった。慌てて、風邪を引…

相川 実
5年前
2

誰かになったあなた

ずっと書き溜めていた言葉を全部海に投げ捨てた。あの日から、私はあなただけのために生きて…

相川 実
5年前
1

太郎の母

私は日本一有名な桃です。どんぶらこっこと流れてきた、あの桃。そうです。桃太郎が住んでい…

相川 実
5年前
3

死にたきゃ勝手に死ねばいい

‪ 自死して誰かに自分の悲しみを押し付けるのはあまりにも狡い。その誰かがいないんだよ。っ…

相川 実
5年前
2

ND

ごめん、愛してる。も、ありがとう、好きだよ。も、同じくらい切ないのはどちらにも表裏があ…

相川 実
5年前
1

四肢をもぎ取られて内臓すべてを引きずり出されて、胃に栄養をたっぷり注がれて少し大人を憎んで、それでやっと僕は満足に人間になれた。雨の音は好きだけど雨の匂いは嫌いだ。だから結果として雨は僕の憂鬱を生成する。憂鬱は全身を呑み込んで得体の知れないなにかになる。それから真っ黒になった内臓に、真っ赤な絵の具を流し込むんだ。そうすると僕の唇はセクシーな紅に染まり、お腹は血潮で満ち満たされる。昼間に遮光のカーテンを引いて部屋の電灯を落とす。真っ暗な部屋に横たわり目を瞑る。そうすると怖いも

面倒

抱いた女はその日のうちに振っておいたほうが身のためだし、吐いた言葉はその日のうちに片付…

相川 実
5年前
3

大嘘

どうやったらあなたが私の嘘を信じてくれるのか、そんなことだけを考えています。私は今夜あ…

相川 実
5年前

僕の彼女は大魔王

「ねぇこの漢字、「霙」なんて読むかわかる?」 「ひょう?」 「残念!」 「あられ?」 「違う…

相川 実
5年前
2

弱酸性

君は面倒になると「なるほど」と言うから、その言葉で従順な僕は君にキスをするんだ。いつも…

相川 実
5年前
3

酔い

‪ それっぽい話をするときに必ず「母数」という言葉を使う語彙の母数に乏しい上司に、いやら…

相川 実
5年前
2

接着剤が指に癒着するように

「殺される夢をみたわ。あなたに殺される夢。」 「本当ならどうする?」 「それなら本望、なん…

相川 実
5年前

LINE

「私たちの話はいつも垂直線よね。」 突然、彼女が言う。 「何それ、どういう意味?」 「そのまんまの意味だよ」 彼女の話す言語は難しい。 「平行線ならわかるけど。」 「平行線だとね、つまらなくて、よかったのかもしれない。」 彼女はいつも核心に触れない。 「行き止まりってこと?」 訊ねると、きみは憂いだ顔をする。 「自分で考えなよ。」 きみはそっぽを向く。 「きみが言い出したんじゃないか。」 なんて、言えるはずもない。 「なぁ、地平線って。」 「地平線?」 きみは僕に向き直る。