四肢をもぎ取られて内臓すべてを引きずり出されて、胃に栄養をたっぷり注がれて少し大人を憎んで、それでやっと僕は満足に人間になれた。雨の音は好きだけど雨の匂いは嫌いだ。だから結果として雨は僕の憂鬱を生成する。憂鬱は全身を呑み込んで得体の知れないなにかになる。それから真っ黒になった内臓に、真っ赤な絵の具を流し込むんだ。そうすると僕の唇はセクシーな紅に染まり、お腹は血潮で満ち満たされる。昼間に遮光のカーテンを引いて部屋の電灯を落とす。真っ暗な部屋に横たわり目を瞑る。そうすると怖いものなんて唯の一つもなくなって、僕は世界の王になるんだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?