【 錦鯉釣る雲 】#毎週ショートショートnote
ある日、空に大きな白い雲が現われた。
その雲から白い糸が垂れてきた。
庭園の池にポチャンと落ちた。
暫くたつと、ゆっくりと糸が上がっていった。
その先には、虹色の錦鯉が何匹も釣られていた。
雲は錦鯉を釣ると、南へ去って行った。
すぐに戻ってきて、その小さな村に小判が降った。
半年もすると、皆、丸々と太ってきた。
しかし長は、一大事だと叫びだした。
「どうしたのですか、長」
「皆、よく集まってくれた」
「長の大声が聞こえたからですよ」
「おお。そうだった。実はとんでもない事が分かった」
「なんですか」
「この文献によると、半年前に起こった雲による錦鯉事件は昔にも起こった事が分かった。その時、この小さき村に食べ物が降り、皆が丸々と太ったと書いてあったが、その後、廃村になったとある」
「長、なぜ文献が残っているのですか」
「これは、隣村にある本家の蔵にあった。その時、分家にいた兄弟もろとも、いなくなったと書いてある」
「え、いきなり消えたって事ですか」
「そうだ」
と、長が答えた途端、頭上に大きな白い雲が現われた。
バサッと大きな音がして、網が降ってきた。
「なんじゃ、これは。投網か」
皆、根こそぎ釣られた。
(文字数:487文字)
(使用したイラストは、イラストボックス様よりお借りいたしました)