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【 春ギター 】#毎週ショートショートnote

 「来年も大きな蕾が出来るといいな」
「そうだね。楽しみだね」
そんな話をしながら、娘の桜は眠りについた。
娘は何故か、秋の終わりに眠りにつく。
私はその間、カプセル内の調整パネルを毎日、同じ時間に見に行く。
娘は、スヤスヤと寝ている。声は聞こえているので、毎日の出来事を話している。
 「母、もうすぐ姉が目を覚ます」
「そうなの?! 準備しなくちゃね」
 その日の朝、私は早起きをしてお弁当を作り、家族を起こし、娘が寝ているカプセルの解除ボタンを押す。
 裏山に登ると、頂上の真ん中に不思議な巨木が立っている。
「父、母、今年も大きな蕾だね。この分だと、もうすぐ咲き始めるよ」
息子が言った途端、あちこちの蕾から音が聞こえ始めた。
蕾が開ききると、綺麗な桜色のギター型になった。
「あ、姉だ」
そして、娘は巨木の前に立った。
指揮棒を振り始めると、完璧なヴィヴァルディの”四季”が流れ始めた。
音楽が鳴ると同時に、音符のように桜の花びらが舞い出した。
                        (文字数:405文字)

(使用したイラストは、AIが描きました)



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