自転車を漕いで球場へ

まだ梅雨は明けていないのに、連日太陽はギラギラと照っていて、とにかく暑い。

この暑さがやってくると、高校野球が盛り上がってくる。私の住む所でも、甲子園の出場をかけた県予選が始まり、ケーブルテレビでは連日試合が中継されている（準決勝からはNHKだけど）。野球好きにはたまらない季節の到来だ。

私の住む所では、今は新しく作られた球場で予選があるけれど、25年位前までは古い球場で予選が行われていた。そんな球場に中高生の頃の私は予選を見に行っていた。その頃の話をしてみようと思う。

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実家では、物心ついた時には春と夏には毎日高校野球をTV観戦していた。
まだまだ野球に興味がなかった時から「逆転のPLと人文字」「ドカベン香川」などなど親から解説を聞きながら高校野球を見て、春休みと夏休みを過ごした。

そんな私が自分から熱心に高校野球を見るようになったのは、中2の夏の大会で見たPL学園の影響だった。桑田、清原というすごい1年生の活躍をはじめ、どの部員も素晴らしい能力で気持ち良い位に強かった。

そのPL学園（特にKKコンビ）を熱心に応援しつつ、他の高校の試合も熱心に見て過ごした中2の夏だった。

その熱量のまま選抜も応援を続け、やがて私は中3になった。

もうすぐ夏休みになる頃、同じ部活の友達Eちゃんが私に言う。

「ねえ、今度、球場に高校野球見にいかん？」
「別にいいけど、何で？」
「◯◯先輩の試合があるっちゃん」

Eちゃんが好きな◯◯先輩（野球部）が進学した高校の県予選があるから一緒に見に行こうという誘いだった。まだ球場で野球を見た事がなかった私は興味もあって二つ返事でOKした。

試合の日は第三試合だったと思う。午前中は部活に行き、一旦家に帰った後集合して出かける事にした。

私の地元は平地だ。そのせいか今は分からないけど、当時はどこに行くにも割とみんな自転車だった。私達の住む所から球場までは市街地を通るので車で30分近く掛かる。だけど、土地柄もありバスにも乗らずに、真夏の暑い最中自転車を漕ぎ漕ぎ球場へ向かった。

真夏の昼間に30分以上自転車を漕ぐのはなかなか疲れる。でも、あの頃は体力も気合いもありありなので、そんなに辛いとは思わなかった。今なら絶対無理だし、そもそも自転車で行こうだなんて思わないだろう。

球場に着いて、入場料はどうだったのだろう。
今現在だと、大人は600円、高校生は200円で中学生は無料とある。当時もおそらくそんな感じだったんだろう。

初めて球場のスタンドに足を踏み入れた私は、何だかすごく感動した。あの中で野球の試合があるんだって。

適当な席に座って試合が始まるのを待った。

先輩はベンチの中にいたんじゃなかっただろうか。わざわざEちゃんが私を誘うくらいだから、多分そうなんだと思う。

先輩の高校は強かった。
そういう学校には自然といい選手が集まる。それに強い高校は勝ち方を知っている。
初めて生で野球を見たけど、とても楽しかった。暑いし、喉もカラカラに乾くけど、それでもいいと思った。途中で自販機で買った飲み物が美味しかった。

先輩の高校は勝利し、校歌を歌った所で帰る事にした。
肝心の先輩が試合に出たのかどうかは、残念ながら覚えていない。

初めての野球観戦はとても楽しかった。

やがて春が来て、私とEちゃんは同じ高校に進学した。そう、先輩と同い高校だ。
私はめっちゃ望んで受験した訳ではなかったし、Eちゃんは先輩がいるから受験した訳ではないだろうが、ともかく同じ高校に通う事になった訳だ。

それからもEちゃんとはちょいちょい野球を見に行った。

夏の暑い中、自転車を漕ぎ漕ぎ球場へ行き、野球を見る。
暑いし、汗はかくし、喉は乾くし、日焼けするし、疲れるし。
落ち着いて考えれば良い事なんて何もない。それでも、私は球場へ行った。
そこにある熱い夢を見に行っていたのかもしれないと今は思っている。

今、県大会を戦っている高校球児のみんなには後悔のないよう、力を出し切ってくれたら良いなと思う。
そして、ベンチにも入れない部員のみんなも腐らないで欲しいなと思っている。私自身は、ベンチにも入れない部員の方の人だ。試合には出られなくても、得られるものはあるんだと信じている。

いつまでも野球のできる平和な世の中であればそれでいい。

🥎　高校野球の過去記事の一部

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