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【旬杯リレー小説・B結】新たな約束をもう一度【シロクマ文芸部】


今回、旬杯リレー小説シロクマ文芸部を勝手にコラボします💦

起ストーリー【B】/PJ 約100文字

風が吹き抜け、太陽が肌にじりじりと照り付ける。
今年は猛暑になるらしい。
海に行きたいと思った。
輝く海と、その水平線に浮かぶ白く大きな入道雲。
夏がやってくる。
生涯忘れることのない夏が。

私が書いた承の続きをPJさんに書いて頂きました。さらに、その続きを書きます❗️

では、どうぞ💛

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 私の日常は、高校に入学してから色を失くしてしまった。

 しんちゃんと交わした10年後に会う約束の日の前日、私はあの海にいた。海はあの日とちっとも変わっていなかった。ここへ来るのは何年振りだろう。大学から東京に行ったから、7年ぶりだろうか。向こうに見える海の家で、しんちゃんは練乳のたっぷり掛かったいちごのかき氷を買ってくれた。ひとつのかき氷を二人で一緒に食べたのは、ちょっと照れくさくて幸せで甘酸っぱい思い出だ。

 私はテトラポットに向かって歩き出した。そこにはしんちゃんと私の秘密が隠してあるのだ。二人だけの秘密の思い出が。
 「たしか、ここに隠していたはず……、あった」
 そこにあったのは、二人の名前が書かれた石。私の字は今とは違って子供っぽいし、しんちゃんの字は上手くはないけど意思を感じる力強い字だ。二人の名前は10年の歳月でだいぶ薄くはなっていたけど、まだちゃんと読む事ができる。あの頃の私達は、未来を信じていて何でもできるし、何にでもなれると思っていたっけ。

 私はマジックペンをバッグから取り出して、石の裏に「ごめんね」って書いた。そして、石をまた元あった場所に丁寧に戻した。明日しんちゃん、この石に気付くといいなと思いながら私は海を後にした。

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 10年後にまた会おうという約束を私は忘れなかった。息をするように、血液が全身を駆け巡っていくように、あの約束は自然に私の中に息づいていた。だけど、今の私はしんちゃんに会う事ができないし、会う資格はないんだと思う。私はもうあの頃の私じゃないからだ。

 高校に入って少したった頃、街でしんちゃんを見掛けた。しんちゃんは隣に可愛い女の子を連れていて、とても楽しそうだった。同じクラスの彼女なのかな、そう思うと悲しくてたまらなかった。私は、しんちゃんと同じ高校に行きたかったけど、その夢は叶わなかった。だから、そんなしんちゃんと隣の女の子を見つめたまま、自分の不甲斐なさを痛感した。今度の夏休みに連絡しようと思っていたけど、その日の晩、私はケータイから連絡先を削除した。削除のボタンを押す時、指が震えたけどそれでいいんだと奥歯をぎゅうっと噛み締めた。

 それからの私は、いろいろな男の子と付き合った。でも、どの人とも長くは続かなかった。好きなんだけど、好きじゃなくて、いつもいつも頭の片隅で、心のどこかでしんちゃんの事が私の中から離れる事はなかった。私の心に浮かぶしんちゃんは、いつもあの夏の日の笑顔のしんちゃんだった。そんな風だから、いつも相手の男の子の方から別れを切り出され、私の元から去っていった。
 「由真は本当に俺が好きなの?由真の気持ちが分からないよ」
 みんなそう言い残して私の前から消えていった。一人残された私は、泣く事もせずに、ただ澱の様に溜まっていくいろいろな男の子たちの残像を思い浮かべているだけだった。

 そんな私は、いつも今度こそと思って恋をする。だけど、いつもしんちゃんと比べてしまってダメだった。もう私は一生このまま宙ぶらりんな状態なのかもしれないと思った。こんな私は、もうしんちゃんにふさわしい女ではないのだろう。もう、しんちゃんに合わせる顔は無い。あの約束も、もう守れそうにない……。

++++++++++++

 あの約束の日から2年が経った頃、1通のハガキが届いた。中学のクラス会の案内だった。どうしよう。行こうか行くまいか。しんちゃんも来るのだろうか。
 私は、同じ事ばかりをぐるぐると頭の中で繰り返していた。

 そこへLINEの通知音が鳴った。まだ付き合いのある中学のクラスメイトの久美からだった。
 「由真、久しぶり!クラス会行く?」
 「久美じゃん!久しぶりだね。クラス会、迷ってる」
 「せっかくだから行こうよ。久々に会いたいよ。それに、あいつも来るよ」
 「あいつって?」
 「しんちゃん」
 「しんちゃん、来るの?」
 「うん。東京から帰ってくるって聞いたよ」
 「そうなんだ。どうしようかな」
 「いいじゃん、行こうよ。絶対、おいでよ!待ってるからね!!」
 「分かった。行くね」

 久美とのLINEのやり取りで、私はあっけなくクラス会に行く事になった。そこにしんちゃんも来るというのか。私はどんな顔をしてしんちゃんに会えばいいのだろう。

 クラス会の日、私はいつもよりかわいく見える服を着て、かわいく見えるメイクをした。クラス会の会場には30分前に着いた。中に入ろうとすると、見覚えのある人がいた。忘れたくても忘れる事の無かったあの人が。
 「由真、久しぶり。元気だった?」
 「しんちゃん……。ごめんなさい。私もうしんちゃんに合わせる顔なんて無い」
 「由真には何か理由があったんだろう?俺、怒ってなんかいないよ。今日、ここに来れば由真に会えると思ったんだ」
 「私、もうしんちゃんの思う私じゃないの。私、これから先どうしていいか分からない」
 「由真、ちょっとこっち来て」

 しんちゃんは中に入ると、ロビーのソファに座るように言った。そして、ポケットから何かを取り出して、私に差し出した。それは、あの夏の日に二人で隠した石だった。
 「しんちゃん、これは」
 「俺、約束の日に取ってきたんだ。海に投げようと思ったら裏にごめんねって書いてあるからずっと持ってた」
 あの石をしんちゃんはずっと持っていてくれた。二人の秘密の石を。私は、秘密の石を見て初めて泣いた。何人もの男の子が私の前から去っていっても泣かなかったのに。

 「お前、泣くなよ。化粧取れるぞ」
 「もう、そんなの余計なお世話よ」
 私は鼻をすすり、しんちゃんに文句を言いながらあの夏の日みたいに笑った。やっぱりしんちゃんは私よりも大人だ。とうてい敵いっこなんかないんだから。

 「あとで、この石を二人で海まで戻しに行かないか?この石は海に投げちゃって、これから二人で未来を歩いていきたい。俺はやっぱり由真じゃなきゃダメなんだ」
 「しんちゃん。こんな私でいいの?」
 「そうだよ。由真じゃなくちゃダメなんだよ」
 「私もしんちゃんじゃなくちゃダメだった。やっと分かったの」
 「そうか。俺、すごく嬉しいよ。っと、その前に早く化粧直しておいで。みんなが来るぞ!」

 私はよろよろと立ち上がり、メイクを直しに化粧室へ歩き出した。すると、後ろの方でにぎやかな声がする。みんなやって来たみたいだ。早くメイクを直さなければ。

 メイクを直した私は何食わぬ顔でみんなと合流した。久しぶりのクラスメイトと語り合いながら、私はしんちゃんの方をちらりと見てみる。しんちゃんは満面の笑みで私を見て大きく頷いた。あの約束は守れなかったけど、今度はまた新しい約束を交わそう。ずっと好きでいると。ずっと離れないと。いつまでも、いつまでも、この命が続く限りお互いを愛し続けようと。

終 (2600文字くらい)


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小牧幸助さんシロクマ文芸部にも参加しています💛
今週のお題は「私の日」です。

無理やり2つの企画をコラボさせてしまいましたが、いかがでしょうか。
このお話の前の部分は、どうぞリンク先からお読み下さい!
PJさんの起👉私の承👉PJさんの転👉私の結となっています。
思っていたより文字数が多くなってしまいました💧
今回は自分の小説を自分で終わらせました。余裕があれば、他の方の小説を繋いでみたいと思います。

一応、ハッピーエンドにしましたがどうだったかなぁ。
本当は、もうちょっとヘビー目な設定にしようと思ったのですが、旬杯用だったという事を思い出して、マイルドにしました笑


今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪


#シロクマ文芸部
#旬杯
#旬杯ストーリー結

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