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読みやすいねと言われる文章を書くコツ⑤《最終回》|#121

「そういえばよく『文章が読みやすいね』と言ってもらうな」、という気付きから始まったこのシリーズも最終回です。

バックナンバーは記事の最後にまとめました。ぜひどうぞ!

今日は「難しい話をわかりやすくするコツ」について書いてみます。3,000字ほどになりました。


そもそも「難しい話」とは?

そもそも、から考えます。話が難しくなる時というのは、どういうときか?ということです。

そう、共通理解のためには「前提」が大切ですから。

《 いきなり余談 》
「話がかみ合わないな」と感じるときは、この「前提」が共有できていないことが多いです、経験上。使っている言葉の定義だったり、話す対象範囲だったり、結論の落としどころだったり。

「前提」の話だけで1本書けそうですね。まあ、またそのうち。

本題に戻ります。
「話が難しくなる時」というのはどういうときか。

はじめに「難しい」を、内容が専門的であると定義します。

「難しい」にはもう一つあるんですよね。それは「話の論理が通っていない」場合。話が長いばかりで、結局何を言いたいのかよくわからなかった、というやつです。
論理が整っていないと聞き手は話の筋道を追う必要が発生するため思考に負担がかかります。この状態を「難しい」と表現する人もいます。

今回は「内容が専門的で難解だ」を「難しい」として話をすすめることににしましょう。


「話が難しい」が起きる原因と解決3ステップ

さてこの定義でいうところの「話が難しい」がなぜ起きるか。

それは筆者(話者)と読者(聴衆)のあいだに、「知識・情報量の差」もしくは「理解度の差」があることによると思います。

まあ、言われてみれば当たり前なんですけど。

要は『よく知らない事柄についての話って、難しいよね』ということです。逆に言えば、良く知っている事柄についての話であれば、多少専門的な内容になっても理解できますよね。イッツ・シンプル!


となると、「難しい話をわかりやすくする」ために必要なのは、

 「知識・情報の差」の存在を認識する
 差をできるだけ正確に測定する
 選ぶ言葉と論理は相手に合わせる

この3ステップだと考えます。

《 今度は補足 》
分かりやすくしようとするあまり説明が多くなり、結果的に話が長くなることは避けたいもの。話は端的に!それが「わかりやすいね」と言われるポイントです。
そのためには「相手に伝わってほしい範囲」を予め設定することをおすすめします。伝わってほしい範囲とは、言及すればよい範囲。説明の最外殻を決めることで、蛇足を防げます。

⇒ 詳しくは「読みやすいねと言ってもらえる文章を書くコツ②」、見出し1つめ「どれくらい伝わってほしいか想定して書く」へ!


具体例で解説します

まず復習から。

「難しい話」というのは、相手と自分に知識や情報、理解度の差があることによって生まれることが分かりました。

それを分かりやすくするために必要なのは、

1. 伝わってほしい範囲を決める
2.相手との差をできるだけ正確にとらえる
3.相手に合わせて言葉を選択し、筋道立てる

この手順でしたね。


では事例で解説してみますね。事例は2つあります。

◎ 設定:私=予備校の校舎長(前職)
    相手=①大学受験生、②保護者
◎ 内容:東北大学の理系数学対策について伝えたい

一番説得力高く伝えられるのは、やはり自分の専門分野ですよね。私、教育系を専門にしているので大学入試なんていう事例を出しますが、お付き合いください。難しい話は出しませんので。

事例① 相手が受験生本人の場合

1. 伝わってほしい範囲
東北大学合格を目指し、数学において伸ばしたい力と重点分野がわかればOK

2.相手との差をできるだけ正確にとらえる
数学の単元名と単元野内容は知っている。
東北大学数学の傾向は知らない。

3.相手に合わせて言葉を選択し、筋道立てる
「東北大学の数学で合格点を取るために必要なポイントは2つ。

1つ目は、正確な計算力。
しかもボリュームがあるものを速くこなす力だね。
東北大学の理系数学は、基礎的な問題が多いから難しくはないんだけれど、とにかく計算量が多い。
面倒な場合分けや微分・積分の重たい計算もこなせる力が必要なんだ。

2つ目は満遍なく演習をしておくこと。
毎年、全分野から満遍なく出題されるんだ。
特に現役生が後回しにしがちな「確率」「整数」「複素数平面」といった分野も大問として出されるから、手を抜いちゃいけないよ」

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こんな感じですね。内容はなんのこっちゃで大丈夫!とりあえず「単元名が沢山出てきたな」「具体的だな」ということが伝わればOKです!


事例② 相手が保護者の場合

1. 伝わってほしい範囲
こちらが十分な情報力を持っていること、計画して対策していくことが伝わればOK(任せて大丈夫、という安心感を持ってもらえれば良い)

2.相手との差をできるだけ正確にとらえる
大学名は把握しているが、受験科目や科目の内容までは全く分からない。

3.相手に合わせて言葉を選択し、筋道立てる
「お子さんが志望している東北大学の合格をめざして、数学は2つのポイントを押さえて指導していきます。

1つは計算を速く正しくできる力です。
東北大学の数学は計算量が多くて、時間内に終わらない受験生も多いんです。終わらないのは困りますよね。
ですので、しっかり解けるように計算は重点的に力を伸ばしていきます。

2つ目は満遍なく全体に取り組めるように計画するということ。
毎年バランスよく全体から出題されるので、特定の分野に山を張るような勉強はオススメしません
大変ですが、隅から隅までマスターできるようにサポートしますね。」

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こんな感じですね。
(そして予備校の場合は、ここから「よってこの講座と、この講座の受講をオススメします……」と続くわけです。)

受験生本人編とと比べると、単元名は一切出ていない反面、実感を伴いやすい表現が使われていることに気づいていただけたら嬉しいです。


これが3ステップの実践例です。


◆わかりやすい情報伝達3ステップ
1. 伝わってほしい範囲を決める
2.相手との差をできるだけ正確にとらえる
3.相手に合わせて言葉を選択し、筋道立てる


事例は「対話」だった。「文章」の場合はどうする?

文章の場合も、基本的なステップは同じです。

ただ文章は目の前に読者がいるわけでも、読んでいる反応を見ながら適宜修正できるわけではありません。「対話」は相手の反応を見ながら、随時修正できる。そこが違いです。

⇒ 詳しくは「読みやすいねと言ってもらえる文章を書くコツ②」、見出し1つめ「どれくらい伝わってほしいか想定して書く」へ!


よって、文章で難しい話を分かりやすくする場合は、「わかりやすい情報伝達3ステップ」の1と2について、仮説を立ててから書き始めるといいと思います。

◆わかりやすい情報伝達3ステップ
1. 伝わってほしい範囲を決める
2.相手との差をできるだけ正確にとらえる
3.相手に合わせて言葉を選択し、筋道立てる


難しい話をするということは、必ず何か「伝えたいこと」があるはずです。さもなければ、わざわざ難しい話を出さないのでは?
そして伝えたいことの先には「伝えたい人」がいますよね。

この「伝えたい人」を仮設定し、その人が「どれくらいわかってくれれば自分は満足するか」を決めるのです。もちろん、相手がどれくらいの情報や知識を持ち、理解度を持っているかも考えて。

そうすると自然と、相手に合わせて言葉を選び、文章を組み立てていけると思います。


まとめです

「読みやすいね」と言っていただけるのは本当に嬉しいこと!でも実は、自分の文章のどんな点が「読みやすい」と人に感じさせるのか、このシリーズを書き始めるまで考えたことありませんでした。

noteを書くにあたり、文章を書くときに無意識で思考をめぐらせていることを引っ張り出し、ひとさまに伝わるような、客観的でそれこそ「わかりやすく」書くという作業は、自分との対話そのもの。とても興味深い経験になりました。

書きためたバックナンバーを下に添えます。
いつかすべてまとめて一つの大きな作品にしようかな。完成の日がきたら、ぜひまた読んでやって頂けると嬉しいです。


シリーズ一旦完結、では!


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