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コロナの影響でバーチャル化が進む、野外フェスの未来

外で行われる音楽フェスティバルは、耳から入るだけのラジオやポッドキャストとは違い、体中で体感するイベントである。目でダンサーの光を追ったり、フードトラックや広がる芝生、土の匂いを嗅いだり、冷たい小雨が肌を打つ中、夢中で好きな楽曲に合わせて踊ったり。五感を最大限に使って楽しむのが、音楽フェスティバルなのだ。

2020年は、コロナウィルスの影響で、あらゆる野外音楽フェスティバルが場所をバーチャルに移し、ストリーミングで決行しようという前代未聞な動きが広まっている。

バーチャル化を決めた「名」フェスティバルのいくつかは、以下の通り。

Ultra Music Festival (USA)
Rainbow Disco Club (Japan)
NDSM DGTL Amsterdam (Netherlands)
Burning Man (USA)

しかし、3月にバーチャルで行われた、Ultra Music Festivalの感想を見てみると、酷評が目立つ。

"「フェス」ではなく「ラジオ」"
"よく聞くと、昨年のセットを流しているだけ"
"いまいち盛り上がらない"
"音楽カルチャーが提供する「新しさ」が感じられない"(セットの装飾や迫力などが、ストリームだと伝わってこない、そこまで頑張らなかったように受け取れる)

もちろん、コロナ騒ぎの前から、家のブラウザで音楽フェスをストリームする文化は徐々にメジャーになりつつあった。
私はニューヨーク在住でカリフォルニアに行けず、ここ最近はCoachellaを家でる、”Couchella”に参戦していた。(Couch=英語でソファという意味)
Couchellaが面白いのは、自分の寝室から、盛り上がっている客で囲まれたステージやアーティストのダイブを眺めたり、装飾された派手なステージを俯瞰して見たり、参戦者の異様に気合が入った服装をチェックしながら、自分はパジャマ姿で同じ空気を味わえるところにある。野外で実施されている本物のフェスがあるからこそ、家から参戦するのが面白いのだ。

Coachellaは10月に延期されたが、延期開催際も危うい状況にあり、2021年開催が現実的なのでは、というも出てきている。

東京オリンピック延期から考える、屋外イベントの新しいカタチ

東京オリンピックも2021年に延期された今、2020年は「屋外イベント」の未来を考える年になるのではないか。オリンピックに関しては、数年前から「時代遅れ化」を叫ぶ人も出てきている。TVが普及し始めた時代は、各国の雰囲気や文化を想像しながら、オリンピックを生中継で見るのは、一大イベントだった。しかし、インターネットが普及した今、オリンピック時期に限らず、いつでも世界の文化や雰囲気は自分で検索できるし、生中継でなくても、録画された映像を好きな時に幾度とも観ることができる。一方で、コロナウィルス感染拡大による活動自粛の影響で、世界が経済的にも危機に陥っている今、人々は自分たちの社会性に改めて気付き、外に出て活動することで世の中が成り立っているということを、身に染みて感じている。

クラブもバーチャル化

イベントがバーチャル世界に移る動きの中でなんとか収益を上げようと、ニューヨークにあるクラブの一部は、ストリーミングサービスを利用し、バーチャルなクラブカルチャーの再現を試みている。カバーチャージとドレスコードもしっかりあり、$80払うとVIPルームと称した個別のチャットルームがもらえるような仕組みもある。しかし、これらの戦略は、今はまだ新しいので話題になるが、五感で楽しむことが大事なフェスやクラブにとって、長期的に取り入れることのできるビジネスモデルだとは思わない。

今週末、Rainbow Disco Clubは有料ストリーミングで開催される。
自分の部屋で五感を最大限に使う努力をしながら、野外音楽フェスの未来について考えたい。


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