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胃腸炎と葛根湯
こんにちは。薬剤師の清水みゆきです。
noteに書こうと思っていたことアレコレあるのですが、
つい先日、うちの高校生男子が胃腸炎になり漢方薬のお世話になりました。
今回は、その時の話をしようと思います。
発熱・悪寒・下痢から始まる症状によい漢方薬
ちょうど高校総体(インターハイ予選)の3日目の明け方のことです。
夜明け前に起きてきて「腹が痛い」とトイレへ。
ひどい下痢だったようです。
さらに、「熱っぽくて悪寒がするし、足が痛い」と。
発熱するとき、関節痛や筋肉痛が出ることがあります。
なぜかというと…
発熱はからだがウィルスなどと戦うための反応。
この発熱時の免疫反応で分泌される物質(プロスタグランジン)は、痛みを起こす物質でもあるため、筋肉痛や関節痛、頭痛を生じてしまうというわけです。
彼が発熱(39℃近い高熱)すると、足に筋肉痛がでることが多いのです。
「気持ち悪くない、吐き気はない」
ということを確認して、漢方薬の葛根湯(かっこんとう)をのませました。
下痢したから葛根湯というわけではなく、
発熱・悪寒・下痢に葛根湯という選択です。
実際に、小太郎漢方(コタロー)の葛根湯の添付文書には以下の記載があります。
効能および効果
頭痛、発熱、悪寒がして、自然発汗がなく、項、肩、背などがこるもの、あるいは下痢するもの。
感冒、鼻かぜ、蓄膿症、扁桃腺炎、結膜炎、乳腺炎、湿疹、蕁麻疹、肩こり、神経痛、偏頭痛。
ちょっと補足説明をしますと…
葛根湯は、名前の通り、生薬の葛根(かっこん)が主薬です。
葛根のはたらきとしては、以下の通りです。
・からだの表面から入ってきた邪を発散(発汗清熱)する
・首や肩などの筋肉のこわばりをゆるめる
・(脾胃の気を上昇させることで)下痢を止める
葛根湯に含まれる他の生薬のうち、大棗と生姜も胃腸を整える役割があり、発熱・悪寒=葛根湯だけでなく、胃腸炎の下痢にも効果が期待できると考えられます。
今回、彼の場合は、
「発熱、悪寒して、自然発汗がなく、
あるいは下痢するもの」
これにピッタリ当てはまった症状だった=葛根湯という選択になったわけです。
![](https://assets.st-note.com/img/1718263786940-kNGKyKskMi.jpg?width=1200)
葛根湯をのんでしばらく寝た後、
またトイレに行ったときに下痢と嘔吐。
気持ち悪いというよりは、
トイレでお腹を圧迫する姿勢で吐いてしまったようです。
「吐いたらすっきりした」
と言って、しばらく寝ていました。
その後、嘔吐や吐き気は全くないけど、発熱(38.5℃前後)と下痢は続く
ということから、葛根湯をもう一服。
その日の夕方には、やっと微熱(37.1℃)になりました。
下痢も少し落ち着いて、野菜スープとか食べれるようになりました。
夜もぐっすりで、
次の日は、もう平熱。
でも、お腹は痛くないけど、便がゆるい状態。
この段階で、漢方薬は半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)に変更しました。
半夏瀉心湯は、胃腸の熱(炎症)を鎮めつつ、胃腸の機能を高める漢方薬です。
半夏瀉心湯について詳しくはこちらのブログも参考にしてくださいね!https://lifekampo.com/diarrhea-hangesyasintou
数日ほど下痢(軟便)が続いたようですが、すっきり元気になりました。
典型的な胃腸炎の症状。
私を含め、他の家族は何の症状もなく、周囲で流行ってもいなかったので、
おそらく大会の会場でうつったのではないかなと思われます。
胃腸炎は、下痢症状の人が排便した後のトイレ、
例えば、流すレバーやドアノブといった手が触れやすいところからも感染するので。
胃腸炎=葛根湯ではない!注意点を解説
胃腸炎は特効薬がなく、処方されるとしたら整腸剤や解熱剤、
あとは脱水を防ぐためにこまめな水分補給して、安静にするしかありません。
こんな風に
「一般的には他に治療法がないけど、積極的に治療したい」
そんな時にも漢方薬は役立ちます。
葛根湯なら、ドラックストアにも売ってます。
(市販の葛根湯を使うときは「満量処方」のものにしましょう。この解説はまた改めて)
こちらの市販のクラシエ葛根湯は医療用と同量含む満量処方です。
ただし、使用には条件があります。
■胃腸炎なら葛根湯というわけではなく、
あくまでも「発熱や悪寒」とともに「下痢が始まった」場合
→葛根湯以外にも、五苓散(ごれいさん)や半夏瀉心湯など胃腸炎に有効な漢方薬はいくつかあり、症状や病気の経過に合ったものを選ぶ必要があります。
■吐き気や嘔吐はない(おさまった)状態
→もともと胃腸が弱いという方は、桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう、市販薬なし)などの方があっていると思います。
■漢方薬の服用が嫌でない
→初めて漢方薬をのむとか、小さなお子さんの時は、胃腸炎でつらい時に慣れていない薬をあえてのむのは避けた方がよいと個人的に考えます。
■悪寒や発熱といった症状が出たら、できるだけ早くのむこと
→半日以内くらいを目安に。
早ければ早いほど、葛根湯に合った状態で即効性が期待できます。
罹った時はもちろん、その後も下痢が続いたり、体力が落ちたりとつらい胃腸炎。
もし葛根湯があてはまる症状だったら、回復の手助けになると思います。
お役立てくださいね。
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