綾瀬さんと真谷くん51「歓迎のスピーチ」

始業式から1週間がたった。学年も上がりついに受験生となった。今日は新入生のためのオリエンテーションがある。去年もあったが、今年は最高学年として案内するため身が引き締まる思いだ。
クラスの中で案内を担当するのは僕と響だ。 各クラス2人が学校案内を担当することになっている。
集合場所の体育館の舞台袖で新入生が来るまで待つ。「新入生来るまでまだ時間あるし注意事項だけでも確認しておいてほしい」
注意事項が書かれたプリントを見ながら注意事項を読み上げていく。「くれぐれも絶対にふざけないように。ふざけているようでは先輩は務まらないのでよろしく頼む」
同じく学校案内を担当する2年生が声を揃えて返事をする。
程なくして新入生が体育館へ入ってくる音が聞こえた。
整列が終わり静かになったところで歓迎のスピーチをする。
「新入生諸君この度は入学おめでとう。 私は、ここ清巌高校の真谷と言う者だ。中学からの難関である高校受験を乗り越えて、新しく我が校の生徒になったことを、あらためてお祝い申し上げる。ここで新たな学校生活を送ることになるが、諸君の充実した3年間を過ごせるよう心から祈っている。我が校は戦後まもなくにできた最初の私立高校であり、数多くの大学進学者が居る。 6月には体育祭、7月には修学旅行、9月には文化祭又は音楽祭、10月には職場体験がある。このような清巌高校の特徴のある行事に参加することにより、在校生や新入生の諸君が社会に出たときに、大いに役に立つのではないかと思っている。 諸君も一日でも早く清巌高校に馴染んでいただき、のびのびとした高校生活を送ってもらいたい。これをもって在校生代表の真谷の歓迎の挨拶とさせてもらう」
スピーチを終え、一礼すると大きな拍手が起こった。
「なんだかお姉さんのスピーチの口調と似てますね」
「あぁ姉ちゃんにスピーチの口調を仕込まれたんだ」
在校生代表としてスピーチをすることになったと姉ちゃんに言ったらこのスピーチの口調を徹底的に仕込まれた。
あの時の姉ちゃんの形相は有無を言わせぬ表情をしていて少し恐怖を感じた。

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