綾瀬さんと真谷くん74「民泊」

目的地の福山に到着したようだ。バスから降り、バス下の収納から荷物を受け取りほかの3人を待つ。民泊は3人から5人のメンバーで構成される。
僕は運良く4人班のひとりに選ばれた。
「民泊楽しみだな真谷」
こいつは宇野 悠人。
1年の時に同じクラスだったやつだ。
サッカー部にいたが、夏に引退した。
「ここが福山か〜空気が綺麗だな」
こいつは天野 浩(ひろし)
いわゆるオタクだ。オタクとは言ってもクラスに打ち解けてるタイプの方だ。
「民泊の班まで一緒とは縁があるな」
こいつは安永 徹
小学校からの腐れ縁だ。
中学も同じで挙句の果てには高校も同じだというまさに偶然が重なり合ったやつだ。
辺りを見回すとこちらに手を振る人がいた。
その方向へと進むと1台の車と歳を召した男性がいた。
軽く自己紹介をして車に乗り込んだ。
今回お世話になる家は山の中にあるようだ。
車内ではどこの高校から来たのかなどを聞かれた。雑談などを交わしているとガレージの前で停車した。そして車庫に車が入り、車から降りた。
「ここは離れでね。母屋はすぐ近くだから」と言われた。
母屋は目と鼻の先だった。
家に上がり、自己紹介をされた。「福山まるごと体験推進協議会の篠原と言います。 よろしくお願いします」
その後改めて自己紹介をして、部屋へ案内された。
細い階段をゆっくりと上がり、2階へと案内された。通路には原爆関連の絵画などが飾られていた。部屋は和室で結構な広さがあった。
昔懐かしのラジカセも置いてあって新鮮味を感じた。一旦荷物を置き、柿渋塗りの体験をやると言われたので作業場へと移動した。 
民泊中は原則として体操服着用が必須なので半袖長袖を状況に応じて着分けることにした。
作業場へと着くと既に協議会の人が何人かいた。
柿渋についての説明を軽く受けて、実践することになった。「柿渋は服についたら匂い取れないから気をつけてね」と言われた。
まじかよ。慎重にやらねばな。
今回塗るのは無花果ジュースの屋台だ。
塗り方をレクチャーしてもらい早速取りかかった。ペンキ塗りなどに使う大きめの刷毛を柿渋塗料が入ったバケツに浸し屋根からしっかり塗っていく。ほかの3人は同じく屋根だったり壁の部分を受け持っていた。
20分くらい過ぎた頃、作業が終わった。
作業を終えて戻ったあとは部屋にあがり、明日の日程を確認しておく。 
入浴を終えて、持ち物確認などを3人で確認していると夕食に呼ばれたので階下へ降りる。
食卓に並んでいたのはまさにご馳走というべきの豪華な料理があった。
40分くらいで食べ終えて、食後にテレビ鑑賞をしていると小さい紙パック入りのりんご酢を頂いた。 味はりんごの甘みと酸味がちょうどよく融合した甘酸っぱい味で飲みやすかった。
空になったパックを篠原さんの奥さんに手渡し、テレビ鑑賞を続ける。
響は上手くやれてるのかな。
ちょっと心配だから連絡しよっと。
しばらくすると繋がった。
「優どうしましたか?」
「響、急に電話してごめんね。 今手空いてるかな?」
「空いてますよ」
「良かった。 響のところはどんな所なの?」
「海が近い所にある家です」
「そうなんだ。 どんなことを体験したの?」
「船に乗って魚釣りをしました」
「えー楽しそう。 僕のところは柿渋塗りをやったよ」
「柿渋塗りですか?」
「うん。 柿渋が原料の塗料を屋根とかに塗って防腐剤がわりにするんだって」
「そうなのですね」
「そうだ、明日はホテルへ移るんだったけ。レクリエーション楽しみだね」
「えぇ私も楽しみです」
「夜も遅いから切るね」
「わかりました。お休みなさい、優」
「うん、お休み」
そう言って電話を終える。
さて、明日も早いし僕も寝るとするか。







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