綾瀬さんと真谷くん82「最後のクリスマス」

今日はクリスマスだ。遊園地にはカップルや家族連れがあふれている。響と離れるのは寂しいけど仕方ないよな……。「優?どうかしましたか?」「あ、ごめん。ちょっと上の空になってた」「今はデート中だから大学のこととかは一旦忘れてね」
うっ。お見通しだったか。そうだな。一旦忘れるとするか。「次はどうする?」「メリーゴーランド!」
その不意打ちの笑顔とタメ口は僕に効くから控えて欲しい。 「次どれにする?」「ジェットコースターとかどうですか?」ジェットコースターか。苦手だけど耐えるか。「優ってやはり苦手なんですね」
「耐えられる方がすごいと思うよ」「でもそういう所、好きですよ」 うぉぉ耳元で囁くのは反則だよ響……。しかもなんかゾクッとしたし。
その後は二人で写真を撮ったり、お互いに写真を撮ったり撮ってもらったりして楽しんだ。「最後は観覧車に乗らない?」「良いですよ」列に並び順番を待つ。
20分くらいして順番が回ってきた。
お互いに無言だったけど、頂上付近に近づいてきた。ずっと無言なのも良くないし、僕から切り出した。「響はさ……僕と離れるのは寂しい?」 
「正直いって寂しいです……」そうだよな……長期休みを除けばほとんど会えないし。「でも、優が向こうで頑張れるって思うと少し和らぎます」
「ドイツでも頑張ってくださいね、優」
うん。一生懸命頑張るよ。
そして頂上に差し掛かった。
すると隣に座っていた響が急に抱きついてきた。
「ちょ、響?!どうしたの?」
「……しばらくこのままでいさせてください」
どうしたんだろ。しばらくそのままにしていると響が離れ、ぽつりと話し始めた。
「3月になれば優はドイツへ行ってしまうから……」響のためにもドイツで勉強頑張らねばな……。その前にまずは共通テストを突破せねばな。「ドイツに行っても頑張るからね。安心していいよ」遊園地から出るとあたりはすっかり暗くなっていた。電車を乗り継ぎ、自宅の最寄り駅へと着いた。「今日は楽しかったです」「僕も響と一緒に居れて楽しかったよ」響が自宅に向かうのを見届けて帰路に着いた。




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