綾瀬さんと真谷くん67「流れゆく雲を見つめて」

中学生の頃、僕は人と話すのが嫌いだった。
友達なんていらない。本さえ読んでいればいい。そう思っていた。クラスメイトからも暗いと言われた僕は、より一層本の世界に入るようになった。
本を読んでいる時は嫌なことを全て忘れて、その世界観に没入できた。そんな僕を見かねたのか姉ちゃんが「もっと人間関係を作れ!」と言って姉ちゃんの友人を紹介された。当たり前だけど僕より年上だ。そして何故か気に入られた。
さりげなく聞いてみると「モジモジしてて可愛かったから」と。いや、僕は可愛くないぞ。むしろかっこよくありたい。話してみると意外と話が合い、僕と同じく読書が趣味ということもわかった。しばらくすると部活を選ぶ期間がやってきた。僕は考古学部に入ることにした。
考古学部では地元の歴史や、歴史の教科書に載っている出来事の仮説を立てたり、出来事の背景などを検証するという活動内容だった。部活に入ったおかげで人と話すのが苦手じゃなくなっていった。部活に入ってからも姉ちゃんの友人との交流は欠かさなかった。
月日は流れ、2学期に入った。
2学期最初の学校行事は合唱コンクールだった。
課題曲は「Let's search for Tomorrow」、自由曲は「流れゆく雲を見つめて」になった。
ちなみに自由曲の選曲理由は「去年の先輩方がこの曲で金賞をとったから」だそうだ。
今にしてみれば随分と謎な理由だ。音楽の授業では音程のとり方や、感情の込め方などを叩き込まれた。家でも練習をして、体に覚えさせた。
その甲斐あってか金賞を獲ることが出来た。
力を合わせてひとつの事を成し遂げたのはとても良かったと思っている。
いつまでも忘れない大切な思い出たちを心の支えとして明日を生きていく。


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