鈍色と純な空。
東京に来て以来、なんども感動するのはその澄んだ空だ。
わたしは、空色というのをあまり知らないで育った。わたしが生まれた日本海側の街は、だいたい曇りか雨か、その中間だ。
晴天を知らないわけではない。でも真夏の空はギラついていて、青も彩度が高くて主張が強すぎる。やわらかな空色とは、まったくの別物だ。
上京して一年半が経ったが、いまだに寒さと晴れが同居する東京の空には慣れない。まるで奇跡みたいに見える。寒いときはかならず、鈍色の世界で生きてきたから。
東京で眺望がいい部屋に住んだことは、人生での中でも上位に入るよい選択だった。
わたしは行き詰まると、空に助けを求めることが多い。濁りのない存在がすぐそこにあるのは、ただそれだけで心がやわらかくなり、救われるものだ。
溶け始めのアイスクリームとソーダが混ざり合うような、そんな空を見ていると、空気まで綺麗な気がしてくる。地元と東京、どっちの空気が綺麗だとか汚いだとかは正直わからない。
でも、わたしはこの街のほうが息をしやすい。
今日も大きく空気を吸い込んで、わたしは遠くを見ている。
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