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フィンランド留学記#12 寒い国の服は寒い国で買う

物価の高いフィンランドのオウルで、学生のわたしが服を買える店といえば、シティセンターにあるH&Mか、大通りの外れにあるセカンドハンドストアくらいだった。

「寒い国の服は、寒い国で買った方がいいよ!」

との友達の言葉を真に受けて、フィンランド留学にウルトラライトダウンしか持って行かなかったわたし。留学して間もない頃に、このセカンドハンドストアで冬山も耐えられそうなコートとムートンブーツを買った。コートには「男性用」とタグがついていたのだけど、当時はフィンランド語がまったく読めなかったので、知るよしもなかった。

30ユーロのコート、9ユーロのムートンブーツは、フィンランドの厳しい寒さから、ひと冬の間わたしを守り続けてくれた。ノルウェーの山でしりもちをついたときも、分厚いコートがケガを防いでくれた。フィンランドの北端、イナリのバーで、「あなたはいいブーツを履いてる」と褒められ、お酒をおごってもらったこともあったっけ。あまりに愛着がわいて、捨てるか売るつもりで買った古着のコートを、わたしは今遠く離れた日本の冬でも着ている。

それからも、わたしは時々セカンドハンドストアに訪れた。雑多としているけれど、たまに可愛らしいセーターや、マリメッコの古着に出会うことができた。デルフィンとも買い物にきて、彼女が買った水色のセーターを、彼女の帰国後わたしが着続けた。

今回この文章を書くために久しぶりに検索をしてみて分かったこと。どうやら、いつのまにか、このセカンドハンドストアは閉店してしまったみたい。私の留学していた頃から、街はどんどん変わってしまう。それは、オウルを再び訪れる理由にもなるのだけれど、思い出のある場所が地図から消えていってしまうのは、なんともさびしい気持ちになるなと思った夜です。

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