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naoと私の挑戦

三宅奈生という人と出会ったのは
2020年12月の事。

その時、二階の食堂kanegafuchiは
鐘ヶ淵という場所から曳舟へ
移転するタイミングだった。
鐘ヶ淵の店舗は定期借家だったため
どうしても2020年の12月までに
移転する必要があった。

懐かしい店舗の解体

曳舟の今の場所が見つかるのと同時に
2階建てのお店で働くスタッフを増やす必要があり
2020年夏くらいからスタッフ募集をした。
次々と申し込みがあり
有難いことに数名のスタッフが仲間に加わった。

そんな中、2020年11月
スタッフ募集から少し遅れて
「はじめまして」とメールが彼女から届いた。
後で話を聞くと、少し悩んでからのメールだったらしい。

今、イタリア料理店で働いており
いずれ地元墨田区で独立したい。
地域の貢献した店づくりを学びたく
荘司さんの元で勉強させていただきたい。

こんなプロポーズみたいなメール
会うしかないよねぇ。
と言うか、え?シェフなんだよね?
うちみたいな家庭料理の店、大丈夫か?
もったいなくないか?
というのが正直な感想。
二階の食堂デリカフェがオープンした後の
12月にはお会いすることになった。

面接をしてみると
とても小柄な
ショートカットのよく似合う
清潔感がドーンとくる感じの人。
一気に気に入った私だったが
彼女は今はまだイタリア料理のお店で働く副料理長。
しかも前述の懸念事項があり
う、うちでいいんですか??
と何度も聞いたりして。

ひとまずきちんとお店を辞められるまで
日曜日だけシフトに入ってもらうことになった。

こうして2021年4月から
彼女は二階の食堂デリカフェに
無くてはならない店長になった。


二階の食堂デリカフェのマーク

彼女が住む墨田区で
自分の店を開業したい。
そのための勉強として働いていた彼女だったが
二階の食堂デリカフェでの勤務は
自分の店の計画を立てられる状況ではなく
私自身、その余裕を与えてあげられてない状況に
ちょっとした後ろめたさを感じていた。

その後、会社は2021年12月には
焼き菓子のお店、pipocaを開業。
2店舗の距離はとても近く
互いに納品しあいながら営業。
お互いの良いところをシェアできるというと聞こえはいいが
働くスタッフ、特に店長たちは
その調整が大変だと思う。
が、その一方で、多店舗展開する強みは
実はそこが大きいのだ。


pipocaは青がテーマカラー

なんとか彼女の料理をお客様に食べてほしくて
二階の食堂デリカフェの、まさに2階で
屋根裏のイタリアンとして
彼女のレパートリーのほんの一部を
ご提供することになった。

彼女は都内のイタリア料理店で働いた後
北イタリア・トレンティーノのリストランテで
地方料理を学んだ。
その後、旅先のプーリア州の雰囲気
料理の美味しさに感銘を受け
帰国後都内の南イタリア・プーリア料理店で
副料理長として10年勤務していた。
プーリア地方とは、イタリアのかかとの部分。

東はアドリア海、南はイオニア海

内陸では土地の高低差が比較的少なく
肥沃な大地が広がり
オリーブやトマト、特に小麦の栽培が盛んで
イタリアの穀倉地帯にあたる。
海の物も、山の物も豊富にあり
naoの料理はプーリアの自然を
ギュッと詰め込んだような優しい一皿。

naoが二階の食堂デリカフェに入って丸2年近く経ち
一つの提案がひらめいた。
pipocaは一年経った現在、昼の営業しかしておらず
夜が勿体ないよね、という話があり
どなたかに場所貸ししようか
などと考えてもいたが
そうだ、naoのイタリアンをここで
お客様に食べてもらえるじゃん!
その考えを彼女に伝え
どんな風にうちの会社の中で働いてもらえるか
何日も何日も考えた。

いずれは自分の店のために独立を
と考えているのであれば
その行動(pipocaでイタリアンを始める事)自体が
勇み足にならないか。
やるのであれば最初から
自分の気に入る場所、気に入った内装などが
整った状態で始めたほうがいいんじゃないか。
もし、やってもらえるのであれば
彼女にとってどんな働き方にしたらいいだろう。

私がぐるぐる考えている間
彼女もまた考えていた。
そして出した結論が
「みゆきホールディングスでやらせてほしい。」
という事だった。
こんな嬉しいことはないってばよ。
もちろん、みゆきホールディングスなんて
架空のホールディングスなんだけど。
とにかく一緒に、店を盛り上げてくれるって
再び愛の告白を受けた私は
色んな計算してたけど
もうそんなのどうでもいいかっ!←これダメでしょ
ってくらいの気分になったわけだ。

とは言え、彼女がすぐに食堂を抜けるのは
他の食堂のスタッフも不安でしかないであろう。
ということで、段階的にpipocaでのイタリアンを
スタートさせることにした。
まずはランチから。
2023年1月中はランチのみ。
2月からは夜のディナーも。

「pipoca」は
「pipoca cucina italiana」とのコラボ店となった。
食後のドルチェまで
店内で用意することができる。

何事も
やってみなけりゃわからない。
どんな大きな飲食店だって
必ず成功するとは限らない。
未曽有の今回のパンデミックみたいな外的要因も
今後だって無きにしも非ず。
じゃあ何を信じてやっていけばいいのか。

やっぱり人なんだと思う。
今の日本の飲食店は
美味しいのは当たり前。
早い、うまい、安いの時代は
そろそろ終わりにしましょうや。
美味しいは、味の問題だけにあらず。
その空間や、一緒に食べる人
料理の温度、彩り
そしてやっぱり店の人が作り出す
その場の空間、雰囲気。
いや、もっともっと大事なことがあるかな。
そのすべてを分かっている彼女の作るイタリアンは
食事に来る人を良い気分に
そう、何とも言えない良い気分にさせてくれる力があると
私は思っている。

ラフなnao


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