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緊急事態宣言が終わった今、思うこと。

2020.5.26. seek / Psycho le Cemu, MIMIZUQ

深刻さに気づき、現実を受け入れてきた

前回の取材(この企画の初日)が4月13日でしたよね。緊急事態宣言が出ている間を振り返ると、なんだかんだで、あっという間やった印象はあるんですけど、そのときそのときでやってることが結構変わってはきてますね。

宣言が出たときは、ツアーの真っただ中だったから、その対応に追われていたり、漠然とヤバいことになっていってるぞ、ぐらいの感覚しかなかったんですよね。ただ、札幌COLOYが閉店するニュースが出たぐらいから、どこかで希望的観測も持っていたのが、そういう場合じゃないかもなっていう気持ちが強くなってきましたね。振替の日程を探したりしてツアーを回るとかいってるけど、そもそもライヴハウスのほうがもたへんのちゃうかなと。

そういう状況で、lynch.さんとかDさんとかが、ライヴハウス救済のプロジェクトで動き出されてたのも見てました。お付き合いは長いですけど、セルフマネージメントでバンドを動かしてこられたバンドさんやと思うので、こういうときのチームとしてのスピード感がすごいと思いましたね。僕も自分で動けるところは動かないといけないと思って、やっぱり姫路Betaという場所はどうにかしたいという気持ちがあったんで、いろいろデザインしたり、発注したりとかして、バタバタしてました。

その頃から、Psycho le Cemuの結成記念日の5月3日のライヴをやるのが厳しいというのがわかってきたんですね。人が集まることはできないから、オンライン上で発信するものとかいろいろ考えて、4月26日からTwitterで、Psycho le Cemuの皆さんの思い出をハッシュタグをつけてつぶやいてもらう企画をやったんです。ライヴがなくなって、ファンのみんなも気持ち的に沈むだろうし、それを何とかしたかったし。それで、みんなにアップロードしてもらった写真を、1枚のモザイクアートにしたんです。

これからの新しい可能性にチャレンジしていく

そんなことをやったり、ライヴの振替だなんだっていうことをやったりしている間に、特に僕らのバンドの特性として、急を要したときに、何かをやるということが向いてないバンドだなと思うところもありましたね。そこから、もうちょっと広い目で見てヴィジュアル系とかバンドというカテゴリーのものが、これから先にどうしていくのかなって思い始めて。

新型コロナウイルスの感染が広がり始めた頃は、どういう風に今までの日常を取り戻すかといってたと思うんですけど、そうじゃなくなりましたよね。この企画の善徳さんの記事に、“afterコロナ”と“withコロナ”という言葉が出て来てましたけど、“withコロナ”で考えないといけないと思うようになって。これから実際にライヴをするにはどうすれば実現できるんだろうというのを、ライヴの制作の人間と話したり、考えたり、予算書を作ってみて、やっぱりダメだってなったり。

“afterコロナ”じゃないのを実感して、自分たちの新しいやり方みたいなのを見つけなきゃいけないんだろうと。Psycho le Cemuで言うと、5人そろって、ゲームの世界だ、ファンタジーの世界だっていうところから、表現としてはもうちょっと違う考え方ができるんじゃないかなって。そこがむしろ、バンドだけどほかのバンドさんとは違う、僕らにしかできない表現の仕方がありそうな気がして、そこはちょっとワクワクしてますね。最近になって、いろいろアイデアも出て来てるんです。実現するにはもうちょっと時間はかかると思うんですけど、チャレンジしていきたいですね。

僕はどちらかというと、半分スタッフ側みたいなところがあるから、収益をあげて、グループとして会社として動かさないといけないという感覚があるんですけど、自分らがバンドマンとして表現することに対してワクワクしてないと、こういうときは動き出せないかなと改めて思いましたね。自分たちがこういうものを表現したいから、そのためにはこれとこれをクリアしないといけないよねっていう風な順番のあり方を再確認できたところはあります。

個人的には、バンドとかに対する気持ちはより強くなっていってるので、気持ち的にブレて疲れたとか、そういうことはないです。これは自分の性分なんですね。僕がバンドを続けてるのは、どうしても日本武道館という場所に立ちたくて、でも立てなくて。立てないからこそ、ここまで続けてこれたのかもしれないです。今はそれが、5月3日に立つはずだった姫路文化センター大ホールなんですね。自分のバンド生活20周年の中の一番大きい山として、そこに向けて3年ぐらい前からずっとその準備をしてきた、それが止まってしまった。そこへの自分の強い気持ちがあって、どうしてもそこはやりたいです。

緊急事態宣言の間、忙しくしてました

ライヴができなくなって、いろいろ発信してる人がいてすごいなって思ってました。僕個人としては、アーティストは発信をしなきゃいけないと思ってるんです。だから、SNSも含めてですけど、何か行動を起こして、ファンの人とつながれたりとか、いろいろやってきたんですね。でも、振り返ったら、音を出したりすることを一切やってないなって(笑)。

曲に関しては、やっと5月5日から作り始めました。5月3日が過ぎてひと段落ついたので、落ち着いてきたし、アーティストらしいことしようと思って曲作りを始めたんですね。僕は普段、曲作りは締め切りがないと作らないんです。いついつの選曲会に向けて作るということでしかほとんど曲を作ってこなかったので、初めての作り方というか。Psycho le CemuでもMIMIZUQでもない、誰かに提供する曲でもない、自分が個人で弾き語りする曲でもない、そういう縛りのないところで、自然と自分から出て来るものをやるという感じですかね。意外といつもより楽しく曲作りができた感じがしました。

ほかには、自分のファンクラブ(魚ノ眼)も、姫路Betaとのコラボグッズの件もあって、忙しくしてたんで、誰とも会ってないし、結局一度もオンライン飲み会もしないできちゃいましたね。姫路Betaとのコラボに関しては、全部ひとりでやろうと決めてたから、注文がどんどんくるたびに、うれしいんですけど、ヤバいなって。これ全部荷造りできるやろうかって、プレッシャーがどんどん強くなったんですけど(笑)。今日中に全部出せると思います。ようやっと終わりが見えて、空の段ボールが増えてきました。

普段うちの通販を使っていただいている人ももちろん買ってくださったし、姫路Betaでもいろいろ宣伝してくれたんで、姫路とか兵庫県の人からの注文もすごい多かったんで、それは嬉しかったですね。僕が注文書を見ていろいろ梱包してるんですけど、僕らみたいなヴィジュアル系シーンが好きじゃない人も買ってくれてるみたいだったんで。姫路Betaという場所が、どれだけいろんな人が必要としてるかをすごく感じました。元店員としてはすごく嬉しかったですね。バンドの後輩の子が黙って普通に買ってくれたりもしてたんですよ。

ライヴハウスを必ず求めてしまう

昨日、緊急事態宣言は解除されましたけど、僕ら界隈の人は、さぁ自粛期間が明けました、ってあんまりなってないんじゃないかなと思います。え、逆にこの状態からどうすんねん、っていう人のほうが多いはずやから。あんまり終わった感は感じてないですね。

これからどうなるかはわからないですけど、それについては善徳さんとかミヤ君がこの企画の記事で厳しいお言葉を言ってらしたので(笑)。もう耳が痛くて。“変化についていけない人は淘汰されるんじゃないですか”って、ミヤ君が話してるのがまざまざと目に浮かびました。

オンライン化もそうですけど、新しい表現の手法が加わるのは間違いないから。それも含めてどうやっていくのかですよね。aieさんが“フローラルの香り”というたとえを言ってましたけど、あれも面白い表現やなって。上手いこと言いはるなって思いましたね。

ライヴハウスは厳しい状況ではあるけど、やっぱりね、僕らは一回、生のライヴを経験してしまってるんで、ライヴの熱量みたいなものを必ずどっかで覚えていて、求めてしまいますからね。皆さんの記事を読んでても思いましたけど、こういう気概を持ってる人がたくさんいてるので、このシーンはまだまだなくならないのかなと思いますね。

編集長の日記
緊急事態宣言が解除され、さまざまな業種への休業要請もまた緩和され始めました。が、東京ではライヴハウスへの休業要請が続き、ステップ3の段階でもまだ除外されています。一方で、神奈川のような地域もあり、事情は複雑です。
また休業要請が緩和されたからといって、すぐさまこれまでのようなライヴが実施されるはずはなく、経営が成り立たないのであれば、きちんと補償をするべきだとも思います。
一日でも早くライヴは見たいですが、ライヴハウスや演者に判断を任せ、責任を負わせることはやめてほしい。バンドマンがどれだけライヴをやりたがっているか、この企画を通してひしひしと感じただけに、ライヴハウスという、かけがえのない場が確実に残っていくように心から求めます。
4月13日から44日間、43人の皆さんのお話を聞いてきました。このような時期にありながら、温かくご協力をいただき、また多くの方に毎日読んでいただき、本当にありがとうございました。この企画は今日で終わり、私にとっての緊急事態宣言もひとつの節目を迎えます。けれども、残念ながら、これまでのようにライヴができない時期はしばらくは続くと思われます。少しでもファンの皆さんにアーティストの声を届けられるよう、新たな企画を考えるつもりです。
これからも、『アプレゲール』をどうぞよろしくお願いいたします。

インタビューという形を通して、アーティストがSNSなどで直接届ける言葉には乗らない“何か”を届けられたらと、コツコツがんばっています。その“何か”を受け取れた、と感じてくださったらぜひサポートをお願いします。大きな大きな励みになります。