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a moment a dimention

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夢にあらわれた世界をshort storyにしました。
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#夢日記

ちじょうと てんじょうの はざま舟

今日はとてもよい天気だった。 ガタゴトと車を走らせながら見上げた空は、どこまでも無限に澄んでいた。 空に何かが浮かんでいるのに気が付くまでは、ほんとうに何気ない昼間だった。なんだろうとよく見ると、透明な風船のようなものがいくつも空にいる。高度の高いものはゴマ粒くらいだが、低いものではそれが腎臓のような形状をし、なかに人影があることも見てとれた。 ‘ のりもの! ’   こんなものが出回っていることに関心し、周りを見ると同じように見上げて注目している人たちがいる。動画を撮影

コムニ  7

薄暗く広大な講堂の壁は液状ガラスになっていて、目下には新都市の全貌が確認できる。光景だけではなく都市内のすべてのエリアにおいて、どの№のストリート、裏路地にいたるまでモニターできるスクリーンが備わっていた。男は冷たい暗がりからその空間とは比率的に不自然なほど狭いドアをくぐり、階段をぐるぐると産道を通るように風のあたる踊り場へと出た。 ひかりに細めた目の灰色の虹彩は崩れたように淡く大きく、遠くまで続く乾いたストリートを一望する。 男は名をテジロといった。 彼の目はその情景に、

あの空の青へ

真っ黒な雲が降りてきて  山を隠し   心細げに見やる窓の外 雨風が渦を巻き 街すらも姿を消した 雷は狂暴な龍となって飛び交い 幾筋も地に飛び込んでは轟き 押し寄せる土色の川は殺気をこめ 流しつくさんばかりに迫る 朝の光景 それでもこの目は さっき見せつけられたあの青に囚われていた 港 どこまでも深く宇宙へ降りてゆくような 空の青 それに溶け込む月が見ている あたりの空気にすら生気が満ち 風が立ち どこまでも軽く  透明になっていった 雲が水晶のような

リトルラゥム 1

1 ヤナの父が地球政府機関アジア支部のある北京に派遣されていたとき、合格通知が届いた。 未だ十代に入ったばかりの彼女に大学入学は早いようだったが、ますます多忙になる彼にとって手の焼ける娘がやっかいだったのであろう、幼少からの彼女の際立って高い知能への信頼もあり、彼の斡旋は通ったのだった。ヤナにしてもそろそろここでの生活に飽き飽きしていたところだったため、互いの思惑は一致し、月への旅立ちが決まった。 たとえ大都市といわれるところであれ、地上の小さくまとまろうとする性質がヤ

リトルラゥム 2

3 ある日、サム、操縦デッキ管理担当ペアの生徒であり別のクラスではマーシャルアートの教官でもある彼と、いつものようにシステムチェックをしていると、窓の外、漆黒の宇宙空間に小型船が異様な角度で通り過るのが一瞬見えた。様子がおかしい。ふたりが窓のそばに駆け寄ると、船は灰色の煙の筋を引いていた。学校校舎から離れた高原に落ちようとしている。 「不時着よ!」 ヤナは叫んで小柄な彼女には大きすぎる全身スーツをざっとまとうとすぐさまモーターバイクに飛び乗り、サムも慌てて続いた。校舎を

a moment apart

結晶だ・・・  深いブルーグリーンに光る石をわたしは拾いあげた。完璧な球面を成し、指先にすりガラスの玉のように触れる、この珍しい石はところどころぽつぽつと落ちていた。鍾乳洞化した道全体が真っ白な淡いひかりに満ちているため、それらは生み落とされた種のようにも見えた。  わたしはキョロキョロしながらネーサの後についていく。  わたしたちメンバーは、死にかけようとしているこの星での役目の最終段階に入ろうとしていた。そのため彼女は気を引き締め、さらに背筋をのばしていた。  白