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ほんとうの豊かさ

リトリート体験記③

コーヒーが好き。
目覚めの一杯。食後の一杯。気分転換の一杯。
深煎りの豆で濃く淹れたコーヒーに、ミルクをたっぷり注ぐ。
スイーツと一緒にいただく時はブラックで。

No Coffee, No Life.

一度だけ、自家焙煎にチャレンジしたことがある。
とても美味しくできたのだけど、とんでもない量のチャフ(コーヒー豆の薄皮)が飛び散る。後始末が大変で、それきりになっていた。

ユリコさんは、ハワイ島コナの自宅でコーヒーの木を育てている。100%のコナ・コーヒーだ。実が赤くなると、ひとつひとつ手摘みして皮をむく。気が遠くなるような手作業に「コーヒー瞑想」と名付けるところが、いかにもユリコさんらしい。
その生豆を焙煎する機会に、ご一緒させてもらった。

Davidの友人、DardのCoffee Farmは急な坂を上った高台にある。
おもちゃ箱をひっくり返したようなガレージで、新しい器具を嬉しそうにプレゼンテーションするDardと、興味津々のDavid。
ふたりは永遠の少年のようだ。

ガレージの外に置いた焙煎器に、コーヒー豆をざざーっと入れる。
程よくローストしたところで焙煎器を止め、熱々の豆が冷めるまでコーヒーをご馳走になった。

焙煎したばかりのコーヒー

階段を上り、ガレージの上階に案内される。玄関前のテラスは、屋根付きのリビングルームのよう。
ソファとテーブル、ワインクーラー、ボードゲームが並ぶ。テラスの角に絵を描くミニテーブルがあり、ハイチェアに腰かけると空と海を見渡せる。
絶景に、思わず息をのむ。

テラスからの眺め

永遠の少年たちが宇宙の話に夢中になっている間、ユリコさんが「ほんとうの豊かさって、こういうことだと思う」と言う。
自然の豊かさ。美しい眺め。お孫さんのために作ったツリーハウス。友人との会話。ゆったり流れる時間。
豪華さや派手さはない、飾らないロコの暮らし。

コーヒーを囲むひととき

お金や所有物・肩書じゃない。他人の物差しや社会的な評価軸ではなく、自分の内側にあるもの。
大切なものを、大切に扱う。
自分が心地よいと感じることを、大事にする。
何でもないマグカップで、Dardが淹れてくれたコナ・コーヒーをいただきながら、「ほんとうの豊かさ」を体感した。

この感覚はずっと残っていて、このあと思いもよらぬ方向に人生の舵を切る場面で、大事なアンカーとなった。

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