最近のミヨ子さん 介護施設入所後、その十八

その十七より続く)
8月18日(日)入院中のミヨ子さん(母)との3回目の面会に、息子のカズアキさん(兄)が行った。前もってお願いしてあったスマホ経由のビデオ通話を通じて、わたしはついにミヨ子さんとお話しできたことを、前項で述べた。

8月19日(月) お嫁さん(義姉)から連絡があった。「退院許可が下りました。退院の日取りについて病院と介護施設の間で調整する、とのことです」。一両日中に「〇日に退院」という連絡が、お嫁さん(義姉)から来ることだろう。

8月20日(火) お昼まで忙しく、昼食後やっと一服してスマホを開いたところ、お嫁さんからメッセージが入っていた。退院予定についての連絡かな? 何日に決まったのだろう?

 メッセージにはこうあった。
・病院から連絡があった。
・退院は今日の午後。介護施設と退院の調整に入ったところ「今日受け入れ可能」という返事だったため。
・念のため介護施設に連絡してみたところ、次のとおり。
・病院からの連絡を受け、担当者が今日なら迎えに行けるということで、行政手続きや書類作成でバタバタしていた(ので家族に連絡できなかった)。
・退院、施設再入所に当たり家族に出てきてもらう必要はない。
・介護については、病院に病状を聞き、本人の状態を見て対応する。

 メッセージは、「明日施設へ面会に行きます。退院できてとりあえずほっとしました」と結ばれていた。

 ミヨ子さんが介護施設に入所してからいろいろなことが立て続けに起きて、ほんとうに驚かされ、また娘としても気を揉む日々が続いてきた。だから、退院自体はとても喜ばしいことだ。

 だが、メッセージを読んでわたしは素直に「よかった」と思えなかった。むしろ、腹が立った。何に対してか。少し考えているうちに、その理由と自分の感情の輪郭がはっきりと浮かんできた。

 緊急搬送から数えると1カ月以上入院した、高齢で(戸籍上は94歳だがほんとうは1歳多い)認知機能も低下している患者(入所者)を退院させ、介護施設に再入所させるのに、病院から相談のあった当日の「移送」とは、あまりに慌ただしくないか?

 また、家族の同行を求めないだけでなく、家族に連絡すらしないとは、どういうことか?

 最低限でも家族が付き添い「元気になってよかったね。これから、お世話してくれる施設に戻るからね」と声掛けしながら連れていくのが、人間らしいやり方ではないのか。

 何より、わたしが心配しているのは、環境の変化にミヨ子さんが戸惑うのではないかということだ。

 ミヨ子さんは介護施設に入ってすぐ新型コロナに感染したあと、尿路感染と腎機能低下を患い、大規模病院に緊急搬送された。体調が悪かったこともあり、施設で過ごした記憶はほとんどないだろう。最初の病院ではほぼ寝たきりだったし、転院もした。病院でも精神的な負荷があっただろう。自分がどういう状態だったか、いまどんな状態か、あまり理解できていないはずだ。

 そんなお年寄りを、施設側の都合で、右から左にモノを動かすみたいに連れまわして!

 悔しくて涙が出そうになった。

 もうひとつ言いたいことが自分の中にあるが、わたし自身がミヨ子さんの近くにいて、施設や病院とやりとりしているわけではないので、「言える立場にない」。それもまたじつにもどかしい。

 この日の夕方。晩ご飯どき。遅くなってから。「いまお母さんはどんな状態だろう」「ご飯はちゃんと食べただろうか、久しぶりの病院食以外のご飯はおいしかっただろうか」「もう休んだだろうか」と折に触れて考えていた。

 またしても思うしかない。施設へ預けた時点で、お母さんをもう半分神様に差し出したのと同じなのだ、と。(その十九へ続く)

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