ひとやすみ(家族形態における薩摩の特殊性――『老人支配国家 日本の危機』より、補足)

 前回「ひとやすみ」書いた読後感に補足する。

 『老人支配国家 日本の危機』におけるエマニュエル・トッド氏との対談で磯部道史氏は、地域における女性の地位について(トッド氏のような)家族史学者が非嫡出子の比率や居住域(沿岸部か内陸か等)で判定するのに対して自分は識字率に注目する、としたうえで、明治15(1882)年頃の鹿児島の識字率は、女性は1割未満、男性でも3割強だったことに触れている。〈89〉

 もちろんこの割合は「明治15年頃」のことであり、鹿児島のいまの識字率(教育水準と言っていいだろうか)は、もちろん当時とはまったく比較にならない〈90〉。ただ、地位についてはどうだろうか。磯部氏が見たという「地元の男性たちが兄弟やいとこどうしで焼酎を酌み交わす」鹿児島の光景の中に、いまもどのくらい女性が入っていけるのだろう。

 残念なことにわたしにはその機会が滅多にないが。
 その前に、芋焼酎はあまり得意ではありません。

〈89〉『日本人のリテラシー――1600-1900年』(リチャード・ルビンジャー著、川村肇訳、柏書房)
〈90〉教育水準のひとつの指標として大学進学率を調べてみた。2019年鹿児島県の大学進学率(定時制含む)は、全体で43.28%、男子37.24%、女子49.35%。女子が高いのは短大進学が多いためではないだろうか。 全都道府県の平均は54.67%、男子51.63%、女子55.47%だから、それぞれ6ポイントから10ポイント以上低い。
この年の大学進学率は上位からは京都、東京、兵庫で、下位からは沖縄、山口、鹿児島らしい。人材の優秀さは進学率だけに反映されるわけでないことはもちろんわかっているが、明治維新で活躍した薩長が下位なのは意外に感じるとともに、いささか残念ではある。
《出典》
Eeducation-career>2019年の大学進学率>男女・学科・都道府県別まとめ


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