最近のミヨ子さん(通話の中断)

  昭和中~後期の鹿児島の農村。昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を中心に、庶民の暮らしぶりを綴ってきた。たまに、ミヨ子さんの近況をメモ代わりに書いている。最近義姉が披露したミヨ子さんの状態への「分析」は前項で述べたが、義姉と話したあとでのミヨ子さんとの会話について記しておく。

 ビデオ通話の前には、話題を整理しておくようにしている。整理しながら、予想どおりに展開しないだろうな、とは思う。ことに最近のできごとについてはまず思い出せないから、昔の話を中心に用意する。

 この日はこちらのネット回線が不安定で、しばしば画像はフリーズし通話も途切れた。印象深かったのは
「また(通話が)切れちゃったね。今日はよく途切れる」
と愚痴ったわたしに、ミヨ子さんが
「最近は大きな事故があったりするから、電話をかける人が(一時的に)殺到してつながりにくいのかもね」という趣旨を言ったことだ。

 ふつうに想像すれば、元日に発生した能登の震災に関連するニュースや番組で「災害や大事故の発生時は回線の使用が集中して電話やインターネットがつながりにくい」と言っていたか、ニュース番組を見ながら同居する兄夫婦がそんな話をしているのを聞いたか、が考えられる。

 が、ミヨ子さんのいまの頭の中は時系列があやふやだ。最近見聞きしたことが順当に浮かんでくるとは限らない。多分だが、「電話がつながりにくい」ことに関して知っている情報を、頭に浮かんだままに話したのではないか。それがたまたま、まだ能登の震災の影響が続くいまだった、ということだろう。

 それにしても、そんなドンピシャなことをよく言えたなぁ、と感激すらする。思わず
「お母さん、そんな話どこで覚えたの?」
と訊いたら、
「どこだったかねぇ。でもよくそう言うでしょ」
と平然としていた。

  もしこの会話だけを第三者の誰かが聞いていたら、ミヨ子さんの認知機能低下が進んでいるとは思えないかもしれない。しかし実際は「なかなか大変」なのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?