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情報通信産業(DX,ICT)ってあんまり地方経済の格差解消には貢献しないのかもな、という話。

最近の宮崎県政を見ていると、どうしても政策が農業・観光業への偏重がすぎると個人的には感じています。

今年に入ってから、宮崎県は医療非常事態宣言を発令している中にもかかわらず、河野俊嗣宮崎県知事はわざわざ東京に2回も行って、金柑のPRに行ったり、大相撲初場所の表彰式で宮崎牛を贈呈したりした上に、わざわざ台湾まで行って直行便の再開の要請や宮崎県産の農産品をアピールするなどしていました。まさか、台湾に行ってマンゴーをアピールしたりしてないよなと願いますが。

労働生産性という観点から見た場合、宿泊業・飲食サービスと言った業種は、あえて悪い言葉を使えば「最底辺業種」とも言っていい業種で、以下のように圧倒的に低い水準です。農業は記載がありませんが、宿泊業・飲食サービスより更に低いと言っていいでしょう。地方のJA や観光協会の一部の偉い人達は、労働生産性が高い業種の大企業以上の給料をもらっていたりしますが。

企業規模別、業種別に労働生産性の中央値を比較(2020年版 中小企業白書から)

宮崎県はこれまで、労働生産性の低い農業や観光業などには政治的に利益誘導は行ってきましたが、それ以外の労働生産性の高い業種を誘致するようなことをしておらず、むしろそういった業種の撤退が相次ぎ、人口減少も止まらず、人口ピラミッドも若い人が県外に持っていかれるひどい形になっています。

宮崎県の人口推移 宮崎県のホームページから(一部筆者加筆)
宮崎県の人口ピラミッド  令和2年(政治山より)

自民党が嫌いな訳ではないものの、この十数年の間の、河野俊嗣宮崎県政、アベノミクスによってさらにその傾向が加速したな、というふうに私個人は思います。

一方で、宮崎県では民間大企業労働者よりも、県庁職員のほうが多く、さらに市町村役場まで加えると、まともに労働組合が成立するような職場はほぼ役所だらけになってしまう、という就業構造問題があります。

連合を支持母体とする立憲民主党は、結局公務員労組が中心なので、極左イデオロギーばかりを叫んでいて、地方経済政策はクソオブクソと評価せざるを得ない状況です。

事業仕分けを行って悦に入っていましたが、その後の地方の潰された事業の再構築は行わず、事業を潰しただけで終わりました。クソなら後々肥料にもなりますが、イデオロギーでは飯は食えませんから、放射性廃棄物といったほうが良いかもな、と思うぐらいです。

そのため、最近の私個人の政治的なほぼ唯一の主張は、「宮崎のような地方に労働生産性の高い民間大企業が進出しやすくする政策を取るべきだ」というものです。

そのなかでも、特に業種としては「情報通信産業」が一番いいのかなと漠然と考えていましたが、そうでもないかもしれません。先日、地方の財政依存度について書いた記事引用した論文 の結論部分を読んでそう思うようになりました。

本研究では47 都道府県別の財政依存度を明らかにし、地方圏自治体の地域経済構造分析から財政依存度の差異が現れる要因を検討した。結果として、財政依存度の高低は地域の基盤産業である製造業の生産規模によって相対的に規定されることが明らかとなった。
地域の基盤産業について、近年ではフロリダ(2014)におけるクリエイティブ・クラスの議論を筆頭に、知識産業の成長と基盤産業化が盛んに議論されている。しかし、本研究の分析では地方圏において域際収支が黒字化した第3 次産業はほとんど見られず、知識産業の基盤産業化は達成されていないことが分かる。政策的に製造業の集積が進められてきた地方圏の実情を踏まえれば、地域の産業集積をベースに製造業の基盤産業化を目指すことが現実的であると考えられる。
製造業の中でも重厚長大型重化学工業と軽薄短小型製造業ではその経済的な役割に大きな差が見られた。大都市圏の大資本が中心となってコンビナートを築く重化学工業は、大分県や富山県の事例に見られるように、域内他産業との連関関係構築が困難であり、経済の質的成長につながりにくい。他方で、長野県の精密機械製造業に代表されるように、地域固有の産業を内発的に発展させることができれば、地域内に複雑な産業連関構造を持った基盤産業を形成することができると考えられる。

https://ritsumei.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=5271&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

この結論が、個人的に漠然と思っていたことを鮮明に説明してくれたような感じです。やっぱり製造業なんですよね、宮崎のような地方に増やすべきは。

その周辺にDXやICTと言った情報通信分野は、それほど地方に「数としての雇用」を産まないし、またコミュニケーションが大切なため都会のほうが有利だったりします。つまり、この業種は「地方でなければならない理由」があまりないんですよね。人間とPCだけあれば良い感じなので、事業に必要な設備が軽すぎるというか。

ちょっと昔の話ですが、宮崎に大手の情報システム子会社ができて、地元人材を一時多く採用したものの、宮崎の事業所は大きく縮小することになり、多くの地元で働けることを期待して入社した人は大都市への転勤を余儀なくされた、というようなこともありました。

その意味では、製造業であればその場所に設備投資がされると、そこで生産活動が行われて、働くことが前提になりますから、地域を移動しにくくなります。情報通信分野はその補助を行うような感じが良さそうです。

宮崎は地元に残っているのが極めて労働生産性の低い農業や観光業ばかりであるため、「農業や観光業が、宮崎の基幹産業だ!!」というようなことを地元メディアなどは言うわけですが、そうではなく「宮崎の基礎産業となる製造業分野」を育てていくことが、宮崎を立て直しのスタートになるような気がします。

先日 UMK のニュースでもやっていましたが、宮崎は農産品や観光業をアピールする割に、宮崎のお土産品の製造は県外に頼っているほど、製造業が弱いところです。

宮崎県の「みらいのための予算」には、DXの予算は若干だけついていますが、新たな製造業振興のための予算はほぼついていない感じです。

宮崎再生予算の概要 令和5年度

中国とのデカップリングなどの国際情勢もあり、世界的にも日本のコアコンピテンスとなりうる分野の製造業の国内回帰をすべきとも叫ばれる中、製造業を国内の宮崎のような地方に回帰、分散させるような政策を地方から訴えないと、宮崎を立て直すチャンスはもう来ないかもしれない、と個人的には危惧しています。

ただ、製造業ができちゃうと、民間労組が成立しちゃうので、地方の自民党があんまりやりたがらないんですよね。自民でも、立憲でもない政党が出てきて上記のようなことを主張する政党がほしいですが、宮崎じゃ人口構成的に選挙で勝てないんですよねぇ。

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