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暴落の嵐吹き荒れても、諦めはしない

新型コロナウイルス関連倒産が相次いでいます。私が勝手に名付けたわけではありません。帝国データバンクの倒産・動向速報や、東京商工リサーチのTSR速報で、そのような名称の倒産が報告されています。

「2020年に入ってからは、新型コロナウイルスの感染拡大で、京都を訪れる外国人観光客が急減したことが追い打ちをかけ、今後の事業継続が困難となり、今回の事態となった」(京洛和蒼株式会社、帝国データバンクHPより)
「さらに、新型コロナウイルスの感染拡大で今年2月の来店客が激減。債務超過で金融機関から借入金返済のリスケジュールを受けていたが、支えきれず今回の措置となった」((株)愛織、東京商工リサーチHPより)

企業倒産が増えれば、民間の金融機関は信用コストの増加を警戒して、貸出態度を厳格化するおそれがあります。こうした中、政府は中小企業の資金繰り支援策を打ち出しており、日本政策金融公庫による無利子・無担保の貸付も発表されました。しかし、当該政策によって民間金融機関の貸出態度が好転する保証はありません。いわゆる「既往債務の条件変更」についても同様で、今後も貸出態度の厳格化は続く可能性があります。

資金繰りの源泉は売上高です。もし企業が、売上高が伸びない中でキャッシュフローを確保しようとすれば、雇用や設備投資が削られ、景気はますます悪くなって売上高がさらに落ち込むという悪循環に陥ります。そもそも昨年の時点で売上高は減り続けていたので、現状はかなり厳しいといえます。

売上高を増やすためには、中小企業の資金繰り支援策とは別次元の政策対応が必要です。大企業の売上高の落ち込みを回避して、中小企業への発注減を抑制しなければいけません。

大企業の売上高のうち、海外向けに関しては、為替レートを円安に誘導でもしない限り手の打ちようがありません。一方、国内向けに関しては減税という手がありますが、法人税は純利益に課税されるので、売上高に影響を及ぼしませんし、そもそも赤字企業には課税されません。これに対し、間接税は売上高にほぼ連動する上、赤字企業も納税します。間接税とは、個別間接税であれば揮発油税や酒税、たばこ税、石油石炭税などで、一般間接税は消費税のことです。

消費税に関しては、理屈上は誤っているのかもしれません。税率が変わっても、売上高と仕入高が連動するので、税率変更がキャッシュフローに及ぼす影響は中立です。

しかし景気は理屈ではありません。消費税率が上がっても、家計の支出総額が変わらなければ、国の税収が増える分、企業の売上高は減ります。大企業の売り上げが減れば、中小企業への発注も減ります。逆に、税率を引き下げた場合、家計の支出総額を不変とすれば、大企業および中小企業の売り上げが増える可能性があります。

個別間接税(揮発油税や酒税など)の引き下げについては、過去にいくつか事例があります。例えば、2008年に実施されたガソリン税(揮発油税)の値下げです。当時の野党・民主党の要求に押される形で一時的に実現した政策ですが、今回は景気対策として導入しても良いと思います。ガソリンなど燃料の購入代金が節約できる分、中小企業の資金繰りは楽になりますし、家計にとっても実質的な減税になります。

問題は、「家計の支出総額が変わらない」という前提です。景気が悪ければ、雇用が減って家計支出も減りますし、不安が高まれば家計の支出は貯蓄に回されます。しかし、政府は相変わらず「景気は緩やかに回復している」との判断を変えていません。

政府の景気判断が「回復」のまま変わらなければ、減税は景気判断と矛盾するため実施できず、家計はますます支出を控えるようになるでしょう。逆に言えば、政府が景気判断を思い切って引き下げれば、減税などの積極的な政策対応への期待が高まり、消費者心理が好転するかもしれません。

内閣府が算出する景気動向指数の基調判断は、景気後退の可能性が高い「悪化」を6ヵ月連続で示しています。政治的に様々な軋轢があるのかもしれませんが、景気判断を統括する内閣府と、減税という決断を最終的に下す首相に、ひとかけらの勇気があることを信じます。




お読みいただき有難うございました。 小難しい経済ニュースをより身近に感じて頂けるよう、これからも投稿してまいります。