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サボテン

〝うーん。ちょっと足りないんだけどなぁ…〟

足りない?足りないってどういうことだろう?
お金、いっぱいあるのにな…

〝よし。じゃあ、これとこれと、これだけ貰おうかな。持ってっていいよ。大事にしてな。〟
おじさんは私の手からいくつか小銭を選んでそう言った。

私が手にしていたのは、白に青色で細やかな絵が描かれた鉢に入った、まん丸のサボテン。

あの時私は何歳だったんだろう?
お金の計算は分からなかった。
どれが10円で、どれが100円かも分からなかった。
どこで調達したかも覚えていない。

手で持てるだけの小銭を持って向かった先は、
庭先に様々な植物を置いていた一軒家。

うちからバス停の通りに出て小学校方向、最初の左に曲がる道を入り右手側1軒目か2軒目辺りだと思う。
たぶんその道じゃなく、うちから町民プール方向に散歩しながら見かけたおうちだったような気がするけど。

小さなポットに入った不思議な形をした植物
トゲトゲした植物
何故かは分からないけど見るたびに心が惹かれた。

それらが売り物かどうかも分からなかった。
見た目は一軒家だし、お店かどうかも分からなかった。
ただ、あの綺麗な鉢に入ったトゲトゲのものが欲しかった。

お金があれば手に入る。
どうやらそう私は考えたのだろう。


持って帰ってきたトゲトゲは、サボテンという名前だった。

家に持って帰った時のことが思い出せない。
特に両親に怒られた記憶もないし。
両親はおじさんの事を知っていたのだろうか?
記憶が曖昧で、もしかしたら夢だったんじゃないかと思ったりもする。

けど、ちゃんとサボテンは我が家にあった。

テレビの横に置いて、お水をあげて毎日見ていた。
サボテンの育て方なんて知らない。
どんな植物かも知らなかった。
それでも何だか可愛くて、毎日毎日大事にしていた。

そしたらある日、お花が咲いた。
濃い鮮やかなピンク色の小さなお花が、ポンポンと。花冠してるみたいに。
とってもとっても可愛くて、物凄く感動したのを覚えている。

だけど、それからしばらくして枯れちゃった。
悲しかった。どうしてあげたら良かったのか分からなかったから。

そのあとうちでサボテンを育てることは無かった。
サボテンのことも、いつの間にか忘れていた。


大学生になった辺りからかな。
妙にサボテンが気になって1つ育てた。
枯らしては買い、枯らしては買いしてきたけど。
なぜかサボテンを近くに置いておきたくなる。

何年か前にキンセイマルというまん丸のサボテンを買った。
あの時のサボテンはトゲが白っぽくて柔らかかったからたぶん違う種類。

そのキンセイマルから子株がでて、切り離して育てている。
あと、雑貨屋さんで見つけたサボテンガチャ。
柱サボテンを種から育てている。
まだまだちっちゃくて、可愛い子サボテン達。


子サボテン達を見ながら、あのおじさんの事を
ふと思い出したんだ。


おじさん
あの時は、とっても素敵なサボテン
ありがとう

おじさんのおかげで
今もサボテン大好きだよ







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