父親として・・・
赤ん坊から大人の男性へ。その成長を父親として見つめながらも、やがてはひとりの男として羽ばたく時がくる。おそらくさまざまな思いが蘇ってくることでしょう。叱ったり、喧嘩した時があったとしても、脳裏に浮かぶのは、幼子だったときの笑顔ではないでしょうか。といっても、現実はそんなに感傷的になることもなく、普通の家族内イベントとして過ぎてゆくのかもしれません。父親は、後になって一人で酒でも飲みながら、幼い頃の息子を思い出すのでしょうね。
以下は、かつてYBS山梨放送のラジオCMに応募した作品。ちょっと素っ気ないドラマですが・・・。(企業名や商品名は加筆修正により削除変更しています。)
タイトル「父親の訪問」篇
SE:甲府~、甲府~(JR甲府駅の雑踏音)
息子:父さん、こっち。
父親:おう、元気そうだな。
東京にいる時より、肌艶いいんじゃないか?
息子:そうかな、勤務先とアパートの往復で何もしてないけど。
SE:車のドアを開けて、エンジンをかける音
息子:じゃ、ちょっとスーパーに寄ってアパートに行くけどいいかな?
父親:いいけど、スーパーって?
息子:普段はネットで買ってるんだけど・・・、今ここのオーガニック
ブランドしか食べてないんだ。
小さい頃から肌や胃腸が弱かったけど、今は大丈夫。
父親:じゃ、当分、彼女は必要ないか・・・。
息子:実は・・・、このブランド、彼女に教えてもらったんだ。
父親:なに~?
タイトル「彼女の訪問」篇
父親:ほう、一人住まいにしては、綺麗にしてるな。
息子:まあね。
でもさ、今朝メールしてきて、その午後に東京から来るって・・・、
どんな出張なの?
父親:すまん、会社の支店監査で、予定してた社員が急に体調壊してね。
代理の出張だよ。
息子:なるほど。
SE:ピンポ~ン。
父親:ん?もしかして、彼女か?
息子:ちがうよ。たぶん、ネットで注文した食材だよ。
は~い。
SE:ドアを開ける音。
息子:えっ。マジ?
彼女:どうしたの?誰かいるの?
タイトル「ふたり暮らしへ」篇
息子:じゃ、父さん。
出張で泊るホテルまで、車で送るよ。
父親:そうだな、明日は朝が早いし、失礼するか。
彼女:じゃ、わたしはそのあいだに、食事の後方付けをしておくね。
息子:ああ、じゃあ、お願いするね。よろしく。
SE:ドアを開け、外に出て歩く足音
父親:彼女に初めて会ったけど、いい子じゃないか。
料理も上手だし。
あの食材って・・・、例の、オーガニックブランドだっけ?
息子:そうだよ。
父親:これで、男の一人暮らしでも、安心だな。
息子:実は・・・、もうすぐ、二人暮らしになるかも。
父親:なに~!
終
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