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ウクライナ戦争と欧米の二重基準、オリエンタリズム

 4月1日で米軍が沖縄本島に上陸してから78年が経った。2013年にアメリカ映画のオリバー・ストーン監督はアメリカが建国の精神や憲法で民主主義や公平さをうたっているにもかかわらず、沖縄に基地の過重な負担を強いて米軍を国内法の枠の外に置いているのは「二重基準」ではないかと発言した。(「琉球新報」2013年8月4日)アメリカの二重基準はウクライナ戦争を見ていても容易に気づく。

沖縄本島に上陸する米軍 https://www.jiji.com/jc/d4?p=boi430-21000213p4&d=d4_mili


 昨年3月18日、ジョージ・W・ブッシュ元大統領とビル・クリントン元大統領は、シカゴの聖ヴォロディミール/オルハ・ウクライナ・カトリック教会を訪問し、ウクライナの国花であるひまわりの花の献花を行った。二人の元大統領は、それぞれのツイッターに「アメリカは、自由と抑圧のための戦いでウクライナの人々と団結している」と書き込んだ。

昨年3月18日、シカゴの聖ヴォロディミール/オルハ・ウクライナ・カトリック教会で献花を行うジョージ・W・ブッシュ元大統領とビル・クリントン元大統領


 二人の大統領たちに「自由」とか「抑圧」という言葉が使えるのだろうか。ブッシュ元大統領はイラクが大量破壊兵器を保有していると嘘の主張を行い、戦争に踏み切った人物で、イラク戦争では開戦後の5年間で少なくて15万人、多い見積りでは50万人から60万人のイラク人が犠牲になったと見られている。ウクライナの人々はロシアのプーチン大統領の軍事的抑圧の下に置かれているが、イラクの人々はそれ以上の犠牲を強いられていたという印象だ。2004年11月のファルージャの戦闘では犠牲になった600人のイラク市民のうち半数が女性や子供たちであった(ブリタニカ)また、クリントン政権が主導した1990年代の対イラク制裁では50万人の子供たちが亡くなったとユニセフが1999年に報告している。

 アメリカのテレビ・ネットワークCBSのチャーリー・ダガタ・リポーターは、ウクライナ危機が衝撃的なのは、ウクライナがイラクやアフガニスタンとは異なって比較的文明的で、比較的ヨーロッパ的だからと述べ、また「ウォールストリート・ジャーナル」の記事は「ロシアは文明の道からアジア的過去に向かっている」と書いた。

 パレスチナ系アメリカ人の思想家エドワード・サイード(1935年~2003年)は、『オリエンタリズム』(1978年)の中で、ヨーロッパは歴史的にオリエント(東洋)を自らとはまったく対照的なものとして、後進性、敵対性、非合理性をもつ実体としてとらえていると主張したが、ウクライナ戦争に対する欧米諸国の振る舞いや言動に接していると、イラクやアフガニスタンとのギャップが大きく、オリエンタリズム的発想が背景にあるのではないかとあらためて思えるほどだ。

アマゾンより


 二重基準はアメリカだけではない。イギリスのリチャード・オッペンハイム駐イエメン大使は、戦乱が続くイエメンではなく、サウジアラビアに駐在し、ウクライナ戦争について2月26日にロシアの自由と民主主義に対する攻撃に対してウクライナと連帯するとツイートした。しかし、イギリスは、オッペンハイム大使が駐在するサウジアラビアのイエメン戦争にアメリカとともに最も協力する国である。イエメン戦争では23万人が死亡し、ユニセフによれば、2370万人の人々が人道支援を必要としている。

 昨年3月、林外相はポーランドから30人ほどのウクライナ避難民を政府専用機に連れて戻ると語っていたが、日本が受け入れを拒んできたシリア難民やアフガン難民に比べると、破格の扱いだ。日本政府のウクライナ観は欧米諸国政府と歩調を合わせ、欧米のオリエンタリズムに影響されているように思う。

アイキャッチ画像はドイツ・ベルリンで
https://www.bbc.com/news/world-europe-60549916

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