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敗退するイスラエル軍 ―武力は万能ではない

 先月、10月はイスラエル軍にとって、昨年10月7日のハマスの奇襲攻撃以来、最も犠牲の多い月となった。1カ月間で62人の兵士が戦闘で死亡し、イスラエル国内ではヒズボラのミサイル攻撃などで15人の市民と2人の警官が犠牲になった。イスラエル軍のリハビリテーション部門では1万2000人以上の負傷者を治療しており、その数は毎月およそ1000人ずつ増加している。これらの数は過少に公表されているのではないかという疑念が野党などから疑問が呈されている。  ヒズボラの最近の発表では10月1

    • パレスチナ問題 ―善良なる日本人の判官びいき

       BBCの世論調査でイスラエルが世界に肯定的な影響を与えているかという問いに対して、日本ではそう思うと回答した人が2012年が3%、2013年も3%、2014%は4%と世界の国々の中では突出して低かった。2014年はイスラエルがガザに大規模な攻撃を行い、2200人余りのパレスチナ人が犠牲になった年だった。アルバムの中の画像のように、イスラム教徒が圧倒的に多いインドネシアやパキスタンよりも低い。2017年には、日本は調査対象とならなくなってしまった。  「判官(ほうがん、ある

      • 「ガザは永遠に我々のものだ」 ―国連が撤廃を要求する植民地主義をイスラエルはひたすら追求する

         イスラエルも加盟する国連は植民地主義を完全かつ早急に撤廃し、国連憲章や植民地独立付与宣言、世界人権宣言の規定を順守するように加盟国に要請しているが、イスラエルでは植民地主義を推進する傾向がますます強まっている。  「ガザは永遠に我々のものだ」というスローガンの下、イスラエルの極右など急進的政治家と右派政治家たちがガザ境界近くの10月20日から21日にかけてイスラエルのベエリ入植地で集会を開いた。  この集会には極右のイタマル・ベングビール国家治安相、また同様に極右のベザレ

        • イスラエル国会、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の活動を禁止する法案を可決

           イスラエル国会は10月28日、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の活動を禁止する法案を可決した。とても国連加盟国の行為とは思えないが、イスラエルの政治・社会の極右傾向をまたも示すことになった。この措置によって、ガザやヨルダン川西岸などのパレスチナ難民の人道状況がいっそう劣悪になることは明らかだ。  今年1月、昨年10月7日のハマスの奇襲攻撃にUNRWA職員が関わったとイスラエルが主張したことを受けて日本を含む12カ国がUNRWAへの拠出金を停止したことがあった。

        敗退するイスラエル軍 ―武力は万能ではない

        • パレスチナ問題 ―善良なる日本人の判官びいき

        • 「ガザは永遠に我々のものだ」 ―国連が撤廃を要求する植民地主義をイスラエルはひたすら追求する

        • イスラエル国会、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の活動を禁止する法案を可決

          セイエド・アッバス・アラグチ外相の『イランと日本』 ―イランの孤立回避のために努力した3年間

           イランのアラグチ外相は、2008年から2011年まで駐日イラン大使を務めたが、イランでは、何かと奇矯な発言が多いアフマディネジャード大統領の在任時代だった。アラグチ大使はイランの孤立を回避するための努力を払っていたことは、我々のペルシア湾の安全保障に関する少人数の研究会にも足を運んでイランの立場を熱心に説明していたことにも表れていた。  アラグチ氏の最新著『イランと日本 駐日イラン大使の回顧録2008-2011』は、日本在任時代に見聞し、知見を得たことに基づく日本論である

          セイエド・アッバス・アラグチ外相の『イランと日本』 ―イランの孤立回避のために努力した3年間

          パレスチナは勝つ ―歴史家ベニー・モリスの予見

           2019年にイスラエルの歴史家ベニー・モリスは、イスラエルの「ハアレツ」紙とのインタビューで、「パレスチナ人は、すべてを広く長期的な視点で見ている。彼らは、現時点でここに500万から700万人のユダヤ人がいて、何億人ものアラブ人に囲まれていることを理解している。ユダヤ人国家は長続きしないので、パレスチナ人には屈服する理由がない。パレスチナ人は必ず勝つ。あと30年から50年で、何があろうと彼らは我々に打ち勝つだろう」と述べた。モリスは、パレスチナ人は決して諦めることなく人種差

          パレスチナは勝つ ―歴史家ベニー・モリスの予見

          総選挙の結果と、民族浄化が着々と進むガザ北部

           総選挙で自公は半数を割ることになった。「裏金問題」なども敗因としてあると思うが、国の形のあり方を形づくる安全保障問題の重要事項を国会での議論を経ずに、また民意問うことなく、閣議決定で決定するなど驕りがあった。岸田政権はNATOにまで接近する姿勢を見せたが、ヨーロッパの安全保障問題にまで首を突っ込み、ロシアとの関係を決定的に悪くする必要があるだろうか。そのNATOはイスラエルのイラン攻撃について、イランの側につくものはNATOの敵と見なすとまで発言している。  選挙で当選し

          総選挙の結果と、民族浄化が着々と進むガザ北部

          世界は等しく、公平な法の支配を求めている ―日本はイスラエルに対しても法の遵守を求めるべき

           レバノンに地上侵攻し、ベイルートなどを空爆するイスラエル軍は国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の施設を攻撃し、UNIFILの隊員に負傷者が出た。第二次世界大戦後の世界秩序に対する重大な挑戦であり、許容しがたい。グテーレス国連事務総長は「明らかな国際人道違反行為だ」とイスラエルを批判し、イタリアのメローニ首相などもイスラエルへの武器禁輸を明らかにするなど、イスラエルに対する反発を強めている。イスラエルはガザでは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が経営する学校をことご

          世界は等しく、公平な法の支配を求めている ―日本はイスラエルに対しても法の遵守を求めるべき

          イランの外交的勝利? ―イスラエルのイラン攻撃

           26日早朝にイスラエルはイランのミサイル製造関連施設を空爆した。しかし、これは、イスラエルの地域における孤立のために、限定的なものにならざるを得なかった。イスラエルの戦闘機がイランに到達するのに、湾岸協力会議(GCC)加盟国(クウェート、バーレーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)、イラク、トルコの領空を通過する許可を得られなかった。イスラエルの攻撃が限定的な成果しか得られなかったとすれば、それはネタニヤフ政権の地域での孤立を背景にしている。  トルコ政府は5

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          日本と、「ジェノサイド」が指摘されるイスラエルとの防衛協力は継続する

           日本はJICAや様々なNGOがガザ地区住民への生活支援などを行い、パレスチナ社会から評価されてきた。しかし、他方で、今回のガザ紛争に対する日本の否定的関与はあまり知られていないと思う。  3月12日、4つの世界的なNGOがデンマーク政府に対して、戦争犯罪を行っていることが見られるイスラエルへの武器輸出停止を求める訴訟を起こしたことが明らかになった。また、2月12日、オランダ・ハーグの高裁は、F35戦闘機の部品輸出を7日以内に停止することをオランダ政府に求める判断を下してい

          日本と、「ジェノサイド」が指摘されるイスラエルとの防衛協力は継続する

          日本の桜とレバノン杉 ―日本の商業があこがれたレバノン・フェニキア商人たち

           9月下旬に始まったイスラエルのレバノン攻撃ではすでに2500人以上が犠牲になった。ガザと同様な人道危機がレバノンでは起きている。一日あたり数十人の人が犠牲になるのもめずらしくなくなった。レバノン人の2割、120万人が避難生活を余儀なくされているが、それでもネタニヤフ首相は攻撃の手を緩める様子はない。(日経新聞)日本ではレバノン危機についてまだ関心が薄いように思われる。 天にそびゆる喬木を レバノン山の森に伐り 舟を造りて乗り出でし フェニキァ人のそれのごと  これ

          日本の桜とレバノン杉 ―日本の商業があこがれたレバノン・フェニキア商人たち

          自らの投獄を免れるために戦争を継続するネタニヤフと、ネタニヤフを止められない米国バイデン政権

           イスラエルはその帝国主義的な戦争をレバノンにまで拡大し、レバノンの首都ベイルートではイスラエル軍の空爆による破壊が進められ、ベイルート国際空港の近くでも「ヒズボラの資金源」を標的に攻撃を行っている。  ネタニヤフ首相がガザ、レバノンで戦争を継続するのは彼の個人的な要因が大きい。ボブ・ウッドワードの近刊などではバイデン大統領はネタニヤフ首相の不誠実ぶりに怒っていることが伝えられ、バイデン大統領はネタニヤフの戦争継続の意図が贈収賄など汚職に対する彼の有罪判決による投獄を避ける

          自らの投獄を免れるために戦争を継続するネタニヤフと、ネタニヤフを止められない米国バイデン政権

          1980年代とは異なってイスラエルの国際法違反に沈黙するヨーロッパ諸国 ―同様な道を歩む日本

           イスラエルのガザ・レバノン攻撃、またイスラエルに武器・弾薬を供給する米国に、G7のヨーロッパ諸国、日本は静かで、批判の声を上げない。それがイスラエルの人道に反する戦争行為を増長させているように見える。石破政権はまだ始まったばかりだが、岸田政権時代に、岸田首相も上川外相も市民を大量に殺りくを行うイスラエルに対して厳しい批判の声を上げることなどなかった。  イギリスのサッチャー首相(在任1979~1990年)は、イギリスのユダヤ人に対する共感やソ連のユダヤ人に対する支持を表明

          1980年代とは異なってイスラエルの国際法違反に沈黙するヨーロッパ諸国 ―同様な道を歩む日本

          くたばれ、ヤンキース! ―中東の混乱をもたらしてきた米国と「次はイラン?」

           今年のメジャーリーグのワールドシリーズはドジャースとヤンキースが対戦することになった。ともに大都市を本拠地とする伝統チームの対戦だけに米国社会は大いに盛り上がエルことだろう。大谷選手は「ヒリヒリしたポストシーズンを送りたい」と語ったが、その夢が実現した。あまり知られていない新興の球団のワールドシリーズ出場となると、友人などはあまり関心がないと言っていたことを思い出す。  ミュージカルは「くたばれ、ヤンキース(原題はDamn Yankees!)」は、空想の中でワシントンDC

          くたばれ、ヤンキース! ―中東の混乱をもたらしてきた米国と「次はイラン?」

          米国が国連安保理で拒否権を行使せず、イスラエルに武器禁輸を行えば世界は平和になる

           イスラエルが国際法を無視し、国連を軽視する契機となったのは、1948年から49年にかけて戦われた第一次中東戦争の結果、占領した地域をすべてイスラエルの領土と認めたことだった。イスラエルによる既成事実を国連は覆すことができないとイスラエルは判断することになった。イスラエルは、エジプトとの平和条約でシナイ半島を返還したことはあるものの、軍事的に手にした地域はすべてイスラエルの領土であると見なすようになった。  また、イスラエルが国連を軽視するようになったのは、米国がイスラエル

          米国が国連安保理で拒否権を行使せず、イスラエルに武器禁輸を行えば世界は平和になる

          クルド人ヘイトを煽る政治家、メディア

           衆議院選挙が公示されたが、16日の産経新聞に「川口クルド人問題、突如衆院選争点に浮上『私におまかせを』埼玉2区、全く触れない候補も」という記事が出た。「私にお任せを」という表現から「川口クルド人問題」に取り組む議員こそが投票にふさわしいとでも言いたげだ。  16日の記事では日本維新の会前職の高橋英明氏の「ルールを守らない外国人はいったん国に帰ってもらって、きちんとした在留資格で来てもらう。支援団体もそういうことを手助けすべきだ」という発言を紹介している。高橋氏の言う「いっ

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