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難民キャンプを空爆するイスラエルと、イスラエルへの軍事支援で孤立するアメリカ

 10月31日、イスラエル軍はジャバリア(ジャバリーヤ)難民キャンプに激しい空爆を加え、およそ20棟のビルが倒壊し、400人以上が死傷したと伝えられている。イスラエル軍報道官は10月7日のハマスによる「テロ」の主犯格であるイブラヒム・ビアリ(イブラーヒーム・ビヤーリー)を殺害したと語ったが、ハマスは、彼は健在であると主張している。

空爆されたジャバリア難民キャンプで https://www.middleeastmonitor.com/20231027-live-update-anti-zionist-jews-we-are-crying-with-palestinians/?fbclid=IwAR0iefdET1u3rD-Jq8kfkkSiIS6RrcEwYFPj7WNP7hBgMywNXGFUuXhYtJk


 ガザには第一次中東戦争(1948年)で、現在のイスラエル領南部から避難してきた人々の親族がおよそ70%住んでいるが、ジャバリア難民キャンプは文字通り難民たちが狭い空間の中でインフラも未整備な中、不自由な生活を余儀なくされながら暮らしている。

「パレスチナ人の命は大事だ」 イスラエル・テルアビブで https://foreignpolicy.com/2023/04/07/israel-palestine-protests-judicial-reform-supreme-court-netanyahu-apartheid/


 難民キャンプを攻撃するのは国際法によって禁じられ、戦争犯罪に明らかに該当するもので、イスラエルの責任は厳しく問われなけれならない。
「国際刑事裁判所に関するローマ規程」には次のように定められている。

第八条 戦争犯罪
(e) 確立された国際法の枠組みにおいて国際的性質を有しない武力紛争の際に適用される法規及び慣例に対するその他の著しい違反、すなわち、次のいずれかの行為
(i) 文民たる住民それ自体又は敵対行為に直接参加していない個々の文民を故意に攻撃すること。
(ii) ジュネーヴ諸条約に定める特殊標章を国際法に従って使用している建物、物品、医療組織、医療用輸送手段及び要員を故意に攻撃すること。
(iii) 国際連合憲章の下での人道的援助又は平和維持活動に係る要員、施設、物品、組織又は車両であって、武力紛争に関する国際法の下で文民又は民用物に与えられる保護を受ける権利を有するものを故意に攻撃すること。
(iv) 宗教、教育、芸術、科学又は慈善のために供される建物、歴史的建造物、病院及び傷病者の収容所であって、軍事目標以外のものを故意に攻撃すること。
(v) 手段のいかんを問わず、防衛されておらず、かつ、軍事目標でない都市、町村、住居又は建物を攻撃し、又は砲撃し若しくは爆撃すること。

 国連総会は27日、イスラエルとハマスの武力衝突をめぐって人道回廊の設置や「人道的休戦」を求める決議を採択したが、反対したのはイスラエルとアメリカなど14カ国だけで、アメリカの国際社会における影響力の低下を表すことになった。

 イスラエルの国連大使はこの決議を「ナチスのテロリスト」を支持するものだと一蹴した。しかし、27日の決議までにイスラエル軍は8000人のパレスチナ人を殺害し、そのうちの30%は女性、40%は子どもたちで、大規模なテロを行っているのはイスラエルのように見える。「セーブ・ザ・チルドレン」によれば、イスラエルは10月7日までの3週間で、2019年以来世界の紛争で殺害された子どもたちの数以上の子どもたちをガザで殺した。

10月13日のニュースです https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/775715


 イスラエルはハマスが1400人を殺害したと発表しているが、933人しか確認されていない。イスラエルのハアレツ紙はそのうちの361人が兵士、警官、治安部隊の要員だったとしている。

 国連総会決議は、イスラエルとそれを支持するアメリカが国際社会でいかに孤立しているかを表すことになった。アメリカとイスラエル以外で反対したのは、東欧4カ国(オーストリア、クロアチア、チェコ、ハンガリー)、ラテンアメリカ2カ国(グアテマラ、パラグアイ)、そして太平洋の小さな島嶼国6カ国だった。

 アメリカの世論は、「データ・フォー・プログレス」によれば、66%が停戦とガザの暴力縮小を望んでいると回答したが、アメリカ議会ではコリ・ブッシュ議員が提出した「停戦と暴力縮小」を求める決議案に署名したのはわずかに18人で、マイク・ジョンソン新下院議長は、ガザに激しい攻撃を加えるイスラエルに140億ドルの支出を行う法案を提出すると公約している。10月24日、米議会はガザでのイスラエルの作戦に対する無条件の軍事支援を約束する法案を412票対10票で可決した。

停戦と緊張緩和を求めるコリ・ブッシュ議員 https://peoplesworld.org/article/ranks-of-u-s-lawmakers-demanding-gaza-ceasefire-grow/


 バイデン政権の外交政策はトランプ時代のものをそのまま引き継いでいる印象で、軍事支出の漸増や、イランとキューバに対する制裁を継続し、ロシアと中国との冷戦をエスカレートさせている。トランプ政権時代に行われたアメリカ大使館のエルサレム移転や、イスラエルにゴラン高原の主権を認めたことなど修正する様子がなく、独自の迫力が感じられない。

 国際社会では人道的停戦を求めた国連総会決議のように、アメリカの思惑とは離れ、G20、G77や、またASEANやアフリカ連合(AU)、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)のような地域機構が合理的な議論や主張で力をもち始めている。ラテンアメリカではボリビアがイスラエルと断交し、チリとコロンビアも駐イスラエルの大使を召還した。ガザ問題について日本はアメリカの政策とは賢明に距離感をもったほうがよいことは言うまでもない。

南米ボリビア政府 イスラエルと断交 ガザ攻撃を非難 コロンビアとチリは大使を召還 https://news.yahoo.co.jp/articles/dca36ec35337660e6369dc46f5ba922d6828b620


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