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戦争と花 ―今は本当にひどい時代だが希望はある(ガザ戦争)

 昨晩、ベトナム戦争の際に1967年10月21日に、警官隊に花を差し出し反戦の意思を示す女性の写真をあらためて見た。この写真は「戦争と花」というテーマの写真展でもメインの展示となったことがあった。この日はワシントンDCリンカーン記念堂から国防総省(ペンタゴン)まで行進が行われ、参加者のベトナム反戦の意思が強烈に示された。この集会でもカリフォルニア大学バークレー校でベトナム反戦運動を率いていたジェリー・ルービンが中心的役割を担うなど、現在ガザ反戦運動と同じように、ベトナム反戦運動でも学生たちは中心にいた。

ジェリー・ルービン https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%B3


 この「ペンタゴン大行進」の集会でピーター、ポール&マリー(PPM)が「Wasn't That a Time」という曲を歌っていた。

There is no freedom in a land where fear and hate prevail.
Isn't this a time, isn't this a time?
A time to try the soul of men,
Isn't this a terrible time?
わが国に自由はない
あるのは恐怖と憎悪ばかり
人々の心に問いかける時ではないか
今は本当にひどい時代

 (訳はNHK「映像の世紀/ベトナムの衝撃」の日本語字幕から)。この歌はピート・シーガーによるもので、アメリカ独立戦争の1777年から1778年にかけて戦われたバレーフォージの戦いを歌ったものだった。ピート・シーガー版の一部は

Our fathers bled at Valley Forge
The snow was red with blood
A time to try the soul of man
Wasn’t that a terrible time?
私たちの祖先はバレーフォージで血を流した
雪は血で真っ赤に染まった
人々の心に問いかける時ではなかったか
本当にひどい時代だった


 曲のタイトルの「Wasn't That a Time」は、「映像の世紀」の訳に倣えば、「本当にひどい時代だった」という意味だが、「ペンダゴン大行進」で歌ったPPMのヴァージョンはベトナム戦争当時のことを歌い、現在形になっていて、ベトナム反戦の意思を表していた。「わが国に自由はない/あるのは恐怖と憎悪ばかり/人々の心に問いかける時ではないか/今は本当にひどい時代」という歌詞に接すると、今のイスラエルのラファ攻撃を連想せざるを得ない。

 上に紹介したPPMの歌詞の前には「The wars are long, the peace is frail, the madmen come again(戦争は長く、平和はもろく、狂人たちがまたやって来る)という歌詞がある。ガザ戦争では3万4000人以上の人が亡くなり、和平交渉はもろく成功しない。狂人のようなネタニヤフ首相には停戦に向かう気配がまるで感じられない。PPMの「狂人たちがまたやって来る」というのはネタニヤフ氏や彼の政権を支えるイスラエルの極右勢力に重なるようだ。

 ガザの戦争は本当にひどい戦争だが、イスラエルに武器・弾薬を与え、国連安保理でイスラエルをかばってきたアメリカの若者たちがアメリカとイスラエルの特殊な同盟関係に気づき、批判の声を上げるようになったことに希望が見える。アメリカはイスラエルへの脅威を取り除く目的もあってイラク戦争を開始した。そのイラク戦争に日本はテロ対策特別措置法で協力し、さらに安保法制など日本のアメリカへの戦争協力もいっそう進んでいる。

花でパレスチナに自由を 南カリフォルニア大学で https://www.dawn.com/news/1830285


 昨年5月に開かれたG7広島サミットでも軍縮による平和ではなくて、軍事力の抑止による平和が主要な発想になり、アメリカが訴える力と力の拮抗の上に戦争のない状態をつくるという考えの下に日本は引きずり込まれるようになっている。アメリカの若者たちが、アメリカが中東にやって来ない状態をつくれば、日本がアメリカの戦争に引きずり込まれる可能性も減る。


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